フランス人のパパの教育
うちの主人は、パパとして、娘に対しては、怒るとなると、もの凄く怖く、また、ガタイがよくて、声も大きいので、それは、それは、迫力があるのです。
私も最初は、あまりの迫力に、緊迫した空気が流れ、こちらまで、なんとなくピリピリした気分になり、憂鬱だなあ・・などと思っていると、それから、まもなくして、二人のケラケラ笑う声が聞こえてきたりして、暗い雰囲気を全く引きずらないので、どうにも、ラテン系の人たちには、付き合いきれない、などと思ったりしたものです。
怒ると、とても怖いパパですが、普段は、甘々なパパなのです。
うちの主人には、前の奥さんとの間に、娘よりも、かなり年長の子供が3人いたのですが、いずれも男の子だったので、女の子の扱いに慣れていませんでした。
誰でも、初めての子育ては、男、女に関わらず、初めてなのですから、子供をどうやって育てていくかは、手探りでやっていくしかありません。
ところが、逆に、主人の場合は、ヘタに3人分の男の子の子育ての経験があったため、主人は、まるで、男の子を育てるように娘を育てようとしました。
毎週のように、主人は、娘をグラウンドに連れて行き、トラックを走らせたり、ダンベルのようなものを使った、筋トレのようなことまでさせて、まるで、マッチョを養成するかのごとく、彼女を鍛えました。
幸い? 彼女は、エネルギー溢れる子供でしたので、主人のトレーニングにへこたれることもなく、主人の期待どおりに、小さい頃から、自分で腕をまくって、拳を握りあげ、自分の力こぶが盛り上がるのを自慢するような子になっていました。
私は、内心、小さな女の子が力こぶ自慢をするのも、どうかと思っていましたが、まあ、年頃になれば、変わるだろうと口をつぐんでいました。
やがて、彼女が成長するにつれ、ちょっと洒落た格好をするだけで、「シャネルのデフィレ(ファッションショー)じゃないんだから・・」と、顔を曇らせました。
主人は、娘がチャラチャラした女の子になることを極度に嫌っていました。
しかし、そんな男まさりな筋トレから、多少、方向転換の兆しが見えたのが、私が望んで、始めさせたバレエのレッスンでした。
バレエは、私自身の憧れでもあり、また、近くのバレエスタジオにパリのオペラ座の先生がいらしたりしたこともあり、女の子には、人気のお稽古事でもあり、クラスの半分くらいの女の子が来ていました。
ピンクのチュチュを着た小さな女の子たちは、小さなナルシストの集まりのような雰囲気で、それまでの筋肉自慢のパパの教育とは、別世界でもありました。
バレエのレッスンを重ねることによって、彼女の力こぶ自慢の路線からは、少しは、軌道修正できたかに思われましたが、基本的には、小さい頃に主人が鍛えた路線が未だに彼女の根底に根付いています。
しかし、あたりを見回してみると、フランス人の女の子には、日本人の若い女の子のような、いわゆる女の子らしい、か細く、ふわっとした感じの子というのは、あまり見当たらず、どちらかというと、キリッとしていて、強いイメージです。
ファッションも、どちらかというと、カジュアルで、シンプルです。
主人の教育は、少し極端な例だったのかもしれませんが、周りの女の子の仕上がりを見てみると、必ずしも、まるで例外というわけでもないような気もするのです。
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