2023年3月31日金曜日

ネスレ ブイトーニ 食中毒事件 冷凍ピザ工場閉鎖も年内は従業員を解雇しない事情

 


 2人の死亡者と数十人の被害者を出したブイトーニの冷凍ピザの食中毒事件から、この工場の経営にあたるネスレ(Nestle)のコードリー工場は、長期間にわたり、閉鎖されていましたが、事件から9ヶ月後の昨年12月に衛生管理の改善や調理済みの生地を使用したピザのラインのみという条件付きで、一部の生産再開の許可が下りて、生産を再開したものの、ネスレは業績不振のために、今年3月上旬には、再び工場を閉鎖してしまいました。

 食中毒による死亡事故まで引き起こした食品会社の工場は、実際の被害状況はもちろんのこと、その後の会社側の不誠実な対応なども乗じて、再起させることはできませんでした。

 ただし、3月上旬の時点では、とりあえず工場は閉鎖するものの、正式な工場閉鎖の決定までは賃金は会社側が補償するということでしたが、今回、ネスレは正式にこの冷凍ピザ工場を閉鎖することを決定しています。

 この工場の従業員は約140名、このネスレ(Nestle)・ブイトーニ工場の汚名は彼らの再就職にもついてまわります。CV(履歴書)に書かれたこのブイトーニー・コードリー工場勤務の経歴はどう考えてもプラスのイメージではありません。

 元従業員が暴露した、あまりに不衛生な工場内のスキャンダラスな映像は、ちょっと食品工場としては信じられない状況で、従業員の責任は問えないとはいえ、この状態で食品を製造しつづけていた従業員と思えば、同種の職種での再就職はかなり困難と考えざるを得ません。


 この従業員の再就職については、ネスレ(Nestle)は、誠意を持って対応すると述べていたものの、同社のシリアルなどの別の食料品工場にしても業績は思わしくなく、コードリー工場の従業員を社内での他部署へ異動することも難しいと言われています。

 そもそも、止まらないインフレのために消費は低迷、しかも工場操業のための電気・ガス代などのコストもうなぎ上りしている中、スキャンダルとは無縁の普通の工場でさえ、存続は大変、厳しい状況です。

 しかし、ネスレ(Nestle)は、とりあえず、2023年12月31日までは、従業員を解雇しないとしており、同グループは、工場閉鎖と同時に、工場の、確実で永続的な回復ソリューションを見つけるプロセスを開始することに並行して取り組み、140 人の従業員に社内での再配置の機会を提供するとしています。

 つまり、ネスレ(Nestle)は、この工場の買い手を見つけることに尽力しているということで、この雇用確保に関する工場の保持に国から300万ユーロの援助が出ているのも、なんだかきな臭い感じがしないでもありません。

 年金改革問題で揉めに揉めているフランスで、定年の2年延長どころか、失業者が増加してしまう状況を回避したい政府の気持ちもわからないではありませんが、生産性を考えたら、このスキャンダラスな工場を再建するよりも、新しい工場を立ち上げた方が生産性が良い気もしてしまいます。

 フランスでは、以前、日本のブリヂストン工場の閉鎖の際にも、話題に上がりましたが、いったん、立ち上げた工場などを閉鎖するのは、組合の突き上げや国からの圧力などもあって、工場閉鎖、従業員解雇などには大変な労力とお金がかかります。

 あの時も閉鎖されるブリヂストンの工場には労働組合に加えて、労働大臣などの政府のメンバーまでもがおしかけて圧力をかけていた様子にビックリして、ブリヂストンが気の毒になったくらいです。

 余談ではありますが、あの時、ブリヂストンに訪れていた労働大臣は、現在のボルヌ首相で、あの無理を強要するごり押しな感じは以前からの彼女のやり方だったのだろうか?と現在の49.3条問題に通ずるものがあるような気がして、なるほど・・などと、勝手に邪推してしまいます。

 工場閉鎖、従業員解雇の事情などを考慮の上、ネスレ(Nestle)は、この問題の山積みの工場を従業員もろとも売ろうとしているのですが、このスキャンダルまみれの工場を買う人がいるのかどうか?なかなか疑問が残るところではあります。


ブイトーニ冷凍ピザ食中毒 工場閉鎖


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2023年3月30日木曜日

フェイスブック(Facebook)でマクロン大統領を「ゴミ」と呼んだ女性が逮捕・拘留

 


 フェイスブックでエマニュエル・マクロンを「ゴミ」と呼んだとして、オー・ド・フランス在住の女性が自宅で 3 人の警察官に逮捕され、警察に拘留されたというニュースに多くのジャーナリストやSNSのユーザーの反感を買っています。


 年金改革問題および49.3条問題で世論が大荒れしている状況の中、マクロン大統領が前回CGT(全国労働組合連合)がデモ・ストライキを予定していた直前にテレビの生番組でインタビューに答えるという前日に、彼女が「ゴミが明日午後1時にテレビで喋る・・」とフェイスブックに投稿していたとのことで、大統領を標的にした侮辱的なメッセージを投稿した罪を問われています。

 SNSによる誹謗中傷は、問題視されることではありますが、今のフランスのこのご時世、Facebookだけでなく、Twitter、Instagram等では、同様のメッセージが多数、公開されているのに、なぜ彼女だけが? しかも逮捕? とちょっと驚愕してしまいます。

 みんながやってるからいいというものではありませんが、なぜ彼女だけが?しかも警察に逮捕・拘留とは、いくらなんでもやり過ぎではないか?と思ってしまいます。

 彼女のFacebookはどの程度の人の目に触れる規模のものなのかはわかりませんが、彼女が逮捕されたことによって、より多くの人の目に触れることになったことに違いありません。

 彼女に対しての訴状を提出したのは、サントメール地区の副知事で、「この種の不快なメッセージの作成者を起訴するために提出した」と述べているそうです。警察当局は、「大統領に対しての侮辱ということでこの手の手続きは滅多に見られないことだ・・」と述べているようですが、これは、現在のマクロン大統領への逆風が吹く中、マクロン大統領側が警察に手を回していることと誤解を受けかねない出来事でもあります。

 悪い言い方をすれば、彼女の逮捕は見せしめ的なものである感じが否めません。

 彼女は定期的にSNSで警察の暴力の動画を公開している人物だそうですが、彼女自身は、「常に法律を遵守している」「この逮捕は活動家に対する脅迫を助長している」と語っているそうです。

 彼女の裁判は6月20日に予定されており、彼女は「侮辱」の罪で最大 1 年の懲役と 15,000 ユーロの罰金を課せられる可能性があります。

 しかし、この逮捕と法廷への出廷は、彼女のモチベーションにまったく影響を与えていないどころか、彼女の逮捕に憤慨する人々が集結して、より怒りを募らせています。

 SNSはもちろんのこと、マクロン大統領に対する怒りを表す国民の言動は「ゴミ」くらいは、ぜんぜんソフトな方で、街に出れば、もっと強烈な言葉の落書きがあちこちに見られ、デモでは、等身大のマクロン大統領の人形が公然と燃やされているのです。

 今は、国民の怒りを抑えつけようとしてやることすべてが裏目に出ている感じ、もうこれ以上、騒ぎを大きくしないで!と思ってしまうのです。


Facebook フェイスブック 大統領侮辱 逮捕


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2023年3月29日水曜日

世界中に轟き始めたフランスの政情不安とマクロン大統領の孤立

  


 年金改革問題で荒れに荒れているフランスは公式に宣言されているデモの10回目を迎えた現在も国民の怒りが鎮まる兆しは全く見えていません。

 年明けから続いているデモの間隔は最初は2週間おきくらいで、ある程度、政府が回答する猶予期間を設けたような日程であったものの、ここのところは、毎週になり、(今回は中4日)、また、49.3条が発令された3月16日以来、俄然、暴力的なものに変化し、無許可のデモも含めて、ほぼ毎日のようにデモという名の暴動が起こり続けています。

 なので、10回目といわれても、全然、10回目という感じはせず、100回目くらいの気分です。

 これだけの国民の抗議を受けながらも、政府の態度には、まるで柔軟性というものがなく、昨日、組合から政府に向けて提出された、正式な「年金改革を数ヶ月中断する提案」をあっさり却下しています。

 これは、マクロン大統領にとって、改革を中断することは、黄色いベスト運動の際の燃料税に関しての失敗体験もあり、中断することは断念することを意味しているためとも言われていますが、「改革か破綻か?」と主張してきた政府にとって、これを断念したらしたで、無責任と責められる後にも先にも進めない状況であるともいえます。

 しかし、49.3条という政治的なチカラで国民を抑えつけようとしている政府は、このようなデモに対して、これ以上、政治的なチカラで国民の抗議の声を抑えつけることは不可能で、このままでは、この暴動が半永久的に続けられることになります。

 これだけの騒ぎになれば、マクロン大統領へのフランス国民の反発は世界中の注目を集めはじめ、世界の中でのマクロン大統領のポジションも変わってきそうな気がします。

 世界中のマスコミ(アメリカ、イギリス、スペイン、インド、ロシアなどなど・・)が、もはやこれが「年金改革問題」にとどまらず、むしろ、憲法49.3条の強行行使への国民の反発であることを伝え、パリの通りで燃えているゴミの山、炎に包まれたボルドーの市庁舎の門の映像を流しながら、大統領制の危機とまで報じています。

 また、これに加えて、後を絶たない過激な暴力行為に対しての警察・憲兵隊が国民に加える残虐行為などまでも取り沙汰されています。

 国王との約束をドタキャンされたイギリスの日刊紙には、「英国王の訪仏をキャンセルすることでマクロン大統領は屈辱を受け、その時にやっとフランスが火山の上で踊っている状態であることを初めて認識した・・」などと書かれているそうです。

 世界中のマスコミの中でも、最も痛烈な報道をしているのは、ロシアの国営放送だそうで、国営テレビ放送の中で、ジャーナリストがマクロンをナチスと呼び、彼に辞任を求め、ロシアは自由と人権の尊重が支配する唯一の国であると視聴者に伝えたとBBCのジャーナリストが伝えています。

 自由と人権について、ロシアから辱められる現在のフランスにマクロン大統領は何を思うのでしょうか?

 年金改革は遅れれば遅れるほど、取り返しがつかないと言っていたマクロン大統領ですが、その前に、この国民の怒りへの対応も遅れれば遅れるほど、取り返しがつかなくなりそうです。

 しかし、マクロン大統領は、「我々は、パンデミックの健康危機に際して、最もお金を払った政府なのに、フランス国民は恩知らずだ!」と言っているそうで、「それ、今、言っちゃいけないんじゃない?」と思うことしか伝わってこないマクロン大統領の言動に、なぜ?こんなにも国民感情を逆なですることしか言えないのか?と、今までの彼らしくない、ちょっと我を失っているような気さえしてしまうのです。


フランス年金改革問題デモ マクロン大統領 49.3条 暴動


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2023年3月28日火曜日

年金改革抗議でルーブル美術館 終日閉鎖

  


 パリに観光に来たら、多くの人が行きたいと思う場所の一つにルーブル美術館が挙げられると思います。ルーブル美術館は、かなり広いので、時間も覚悟も必要ですが、やはり絵や美術品はもちろんのこと、その入れ物、美術館自体が美しいもので、美術品だけが出張してどこかの美術館に行ったりしたものを見るのでは味わえない、それがそこにあることで感激できる感動を味わうことができるのです。

 まぁ、私のような素人は、しばらく見ているうちに、どうにもあまりに見るものが多すぎて、いささか食傷気味になって、飽きてしまううえに、そうとうな距離を歩くことになるので、途中で疲れてしまうのですが、しかし、やはり、せっかくパリに来たら、一度はおススメしたい場所でもあります。

 パリは美術館の多い街ですが、ルーブル美術館とオルセー美術館は月・火とずらしてお休みで、ルーブル美術館は通常は火曜日が休館日です。

 28日(火)は、再び、CGT(全国組合連合)が大規模ストライキとデモを呼び掛けている日で、ルーブル美術館はこれがちょうど休館日にあたるために、前日に前倒しで年金改革問題の抗議運動として、約300人のスタッフによって、朝から美術館の入口4か所を封鎖、CGTの垂れ幕を張って、物々しい騒ぎになり、大勢の観光客は入場することができませんでした。



 現在のフランスの状況を知って来ている外国人観光客も「えっ??ストライキは明日じゃなかったの?」と困惑・・。現在、ルーブル美術館はほとんどが予約制になっているため、あらかじめ、スケジュールを組んでやってきている観光客にとっては、突然の美術館封鎖には、さぞかし腹立たしいことでしょう。

 しかし、ストライカーたちは、全く迷いがない様子で、「私たちは年金改革に反対しており、それを示すという文化がフランスには存在します!」ととうとうと宣言します。

 「これでも今日はずっと静かな抗議。外国人観光客には、腹立たしいことに違いないが、ストライキは憲法上の権利であり、時には、義務でもある!」と叫んでいます。

 ストライキをする権利はともかく、「ストライキは時には義務でもある!」と言い出すとは、もう恐れ入っちゃう感じです。

 27日(月)のルーブル美術館のチケットは払い戻し、他の日時に変更できるそうです。

 3月7日のデモの際には、入場させておいて、モナリザなど数か所の部屋を占拠するという状態でしたが、今回は中に入ることもできない完全ブロック方式で観光客には踏んだりけったりでした。

 せっかくパンデミックがおさまってきて、観光客がパリに戻ってきたというのに、この様子では、当分、パリへの旅行はおススメできません。


ルーブル美術館封鎖


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2023年3月27日月曜日

ゴミ収集業社ストライキから20日後、民間のゴミ収集業社も無期限ストライキ突入

  


 パリのゴミ収集業社のストライキから3週間が経過し、一時はパリに山積みにされているゴミの山は1万トンを超えたと言われてきましたが、一部、ゴミ収集が復活したり、燃やされたりで否応なしに片付けざるを得なかった分のプラスマイナスがあり、現在は7,828トン近くにまで減少?しているようですが、今度は民間のゴミ収集業社が無期限ストライキに突入することを発表し、再び波紋を呼んでいます。

 これまで、ゴミ収集業社のストライキといっても、パリ市内でも区によって差があり、パリ1区~20区のうちの2,5,6,8,9,12,14,16,17,20区(約半分の区)における、パリ市のゴミ収集業社によるものであり、民間のゴミ収集業社に委託している区のゴミは通常どおりゴミ収集が行われてきました。

 これまでのストライキが依然として継続し、一部が復活しただけで、これに覆いかぶさる感じで、民間のゴミ収集業社までストライキに入ることで、今度は、1 区、2 区、4 区、10 区、18 区のゴミ収集が滞ると言われています。

 今回は先行のストライカーのように、年金改革に抗議するのに加えて「最大15%の賃金値上げ」を要求しています。先発隊のパリ市のゴミ収集業者のストライキが想像以上のインパクトがあったために、現時点でのストライキが効果的であることが世間に知れ渡ったためでもあると言えます。

 特に、現在のパリは、デモが当分、鎮まる気配はなく、ゴミを放置しておけば、それが、通常以上に危険な着火剤のような役割を果たしているため、ゴミ収集はいつも以上に必要とされている状況です。

 ストライキで仕事をしなければ、その分の給料は支払われないので、決して高給が支払われているとは言えない彼らにとって、身を削ってのストライキは最も効果的でいかに最もインパクトを与える時期でならなければならないことを考えたら、「今しかない!」となったのかもしれません。

 しかし、美しいはずのパリの街が焼けただれたゴミが異臭を放ったまま放置されるのは、哀しいことです。

 滅多にパリに来ることのない観光客には、まことに気の毒だろうと思いきや、山積みのゴミや、そのゴミに火がつけられている前で記念写真を撮っている観光客も増えたという話もでてきているので、それはそれでレア体験?として、楽しんでしまうのもたくましいです。

 「世界一美しい街パリ」を公言してやまないフランス人にとっては、プライドが傷つくものであるのかと思いきや、これはこれで、自分たちの主張は曲げない1ページだと言わんばかりに「これがパリだよ!」とウィンクして通り過ぎていくパリジャン。それはそれで堂々と胸を張るフランス人は本当に強いなぁと妙に感心させられたりもするのです。


民間ゴミ収集業社 無期限ストライキ突入


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2023年3月26日日曜日

エシレのミルクは超絶、美味しかった・・

 


 日本でも、けっこう有名な「エシレバター」でおなじみの「エシレ」の乳製品シリーズ。

 「エシレバター」はもともと、フランスでも高級品なので、どこのスーパーマーケットにもあるという商品ではありませんが、まあ、日本人も知っている?カーフールとか、モノプリ(Monoprix)(そんなに有名でもないか・・)などには、たいていおいてありますが、バターだけでもかなりの種類が置かれている、その中の一つにすぎません。

 しかし、数あるバターの中でも値段的には、群を抜いて高いので、そんなに売れている感じはしないし、意外とフランス人は「エシレバター」を知らないのにも逆にびっくりさせられるくらいです。

 フランス人は何といってもバターを大量に消費する(パンにバターを塗るというより、のせているという印象だし、お料理にもバターをよく使います)ので、家族が多かったりする場合は特に、大量に消費されるバターにそんな高級バターを買っているわけにもいかないのでしょう。

 私は日常的には、そんなにバターを大量に使うわけではないので、たまに食べるバターはエシレバターにしていますが、お料理などには、もう少しお手軽価格のものを使っています。

 日本に行った時にスーパーマーケットに並んでいるエシレバターやフランスのチーズの値段を見て、目を丸くしますが、まぁそれは、フランスでお醤油が高いのと似たようなものなので、最近はお互い様かもしれないな・・とも思います。

 今は日本で生活している娘が最初に日本で生活し始めた時に、「お醤油ってこんなに安いものだったんだ!」と驚いていたことを思い出します。

 パリには、エシレのお店はありませんが、日本には、何店舗かエシレのお店があるようですし、エシレバターで焼いたクロワッサンとか、エシレのアイスクリーム?ソフトクリームに数時間待ちの行列ができている・・などと言う話を聞いたこともあるので、もしかしたら、エシレは日本での方が有名なのかもしれません。

 日本に一時帰国する際には、みんなに頼まれるので大量のエシレバターを買って帰るので、一度、モノプリのレジのお兄さんに「バター好きなんだね・・」とあきれられたこともあります。

 話は逸れましたが、最近、インフレで全ての値段が上昇し、食料品なども、ちょっと明らかにウッとくるくらいの値上がりぶりで、なんだか金銭感覚が麻痺してきました。

 というのも、どの商品も値上がりしていることに変わりはないのですが、どういうわけか、高級品の方が値上がり率が低いようで、安かったはずの商品が「えっ?これがこんな値段??」となっているので、逆に今まで高いと思って、買わなかったものに、どうせ、高いんなら、良いものの方が良いかな?と妙な理屈が働くこともあるのです。

 「エシレ」はバターだけでなく、生クリームやミルクを出しているのは知っていましたが、私がこれまで買っていたのはバターだけで、一度、お土産用に生クリームを買ってみたことがありましたが、ミルクにまで手をのばしたことはありませんでした。

 それこそ、ミルクはバターなどと違って、コーヒーに入れたり、ポタージュを作ったりと消費量が多少多いために、高級ミルクには手をのばさずにいたのです。

 それがたまたま覗いたチーズ屋さんで、エシレのミルクを売っていて、値段が「1.5€」とついているのを見て、「エシレのミルクってこんなに安かった??」と思ってしまったのは、私の金銭感覚が狂っているのかどうかはわかりません。




 しかし、普段買っている普通のミルクもうろ覚えではありますが、恐らく1.2€程度で、そんなに大きく違うわけでもありません。(隣に並んでいたミルクはもっと高かったし・・)それならば、一度、飲んでみたいな・・とちょっと思っていたエシレのミルクを買ってみることにしました。

 まあ、失敗しても、大して後悔するほどの値段でもありません。

 あまり期待もせずに家に帰って飲んでみると、これが想像以上に「やっぱり、美味し~い!!」と期待を裏切らない(期待せずにといいながら、けっこう楽しみにしていました)すっきりとした飲みくちなのに、しっかり味がある後味のよいミルクで、これはコーヒーや紅茶に入れたりせずに、このままで飲んでも、一つの飲み物として十分に成り立つ飲み物で、大満足しました。

 美味しいものは後味がよいというのが私の中の鉄則で、特にミルク好き・・というわけではない私も、ちゃんと美味しいと感じられるミルクでした。

 これまでミルクには、あまりこだわりはありませんでしたが、これを知ってしまったら、この先、エシレミルクを素通りできないような気がしてきました。

 まあ、大した贅沢ではありませんが、今後、私の小さな喜びが追加された気分で大変、満足しています。


エシレバター エシレミルク エシレ生クリーム


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2023年3月25日土曜日

年金改革デモ・ストライキのため、英チャールズ国王のフランス公式訪問延期へ

 


 いつまでも、年金改革問題抗議デモ・ストライキが一向におさまらないフランスでは、数日まえから、今週末からの英チャールズ国王のフランス公式訪問はどうなるのだろうか?と少しずつ話題になり始めていました。

 23日(木)は、以前からCGT(全国組合連合)が再び(非公式デモが何日も続いているために公式デモが何度目だったかわからない)予告されていた日でもあり、ここ1週間以上、日々、暴動のようになっているデモを大きく上回る大変な動員数になりました。

 また、それに紛れて、ブラックブロックと呼ばれる破壊行動を起こすグループやデモがエスカレートして、暴れ出す人がもうどこにでも登場するようになり、山積みにされたゴミの山への放火もダイナミックになり、また、それだけでは飽き足らずに、キオスクに火がつけられたり、ショーウィンドーが割られたり、スプレーで落書きをされたりと、カオス状態になりました。

 山積みにされたゴミにネズミがたかる・・など、衛生状態が問題視されてもいましたが、これではネズミもびっくりです。

 翌日は、焼けただれたゴミなどは、ざっと片付けられてはいるものの、まだゴミは散らかり、焼かれたアパートの扉やキオスクには立ち入り禁止のテープが貼られていましたが、こんな汚いパリは見たことない・・感じでした。

 パリの中にも、日常から、「えっ?ここ、パリなの?」と思うような地域もあるにはあるのですが、この汚い状態がパリの中心地のまさにパリらしい華麗なイメージの場所でのことなので、歩いていても胸が痛む気がしました。

 いくらなんでも、これはやりすぎで、一般市民の住居であるアパートや商店やキオスクなどが攻撃対象になるのは、酷すぎる話です。

 とにかく、パリ(フランス)は、今、こんな状態で、怒り狂っている暴徒や、同じように政府に対しては怒りつつも、暴力行為に動揺、困惑している国民にとっては、チャールズ国王どころの話ではないのが正直なところだと思います。

 23日の夜にボルドー市庁舎の大扉が勢いよく燃やされている時に、チャールズ国王のフランス公式訪問については、あまり詳細な日程は公開されていない中、ベルサイユ宮殿での晩餐会とともに、訪問先になっていたボルドーは、市長が半泣き状態で、来週初めのチャールズ国王ボルドー訪問について、「我々は時間をかけて万全の警備体制を準備してきているので、国王をお迎えすることに問題はないです」と語っていたのは、とても印象的でした。

 また、内務相も、23日の夜の段階では、チャールズ国王のフランス公式訪問は問題はないと発表していました。

 しかし、翌日になって、エリゼ宮から発表されたのは、「英チャールズ国王のフランス公式訪問は社会情勢を考慮して延期されました」というもので、その日の午前中にマクロン大統領とチャールズ国王が直接電話で話し合い、マクロン大統領の申し出により、延期されたとのことでした。

 もっとも決定的であったのは、チャールズ国王がフランス滞在を予定していた3月26日~29日にぶつけるように、次回のCGTが動員するデモ・ストライキがその期間中の28日に設定されたことにあります。

 ここ1週間ほどのパリ(フランス)の荒れ様を見ていると、デモや暴動は予定された以外の日に起こらない保証はどこにもなく、何よりもブレグジット後にイギリスとフランスの友好的な外交の象徴として計画されていた今回の英チャールズ国王の訪問は、祝福ムードの中で迎えられるべきであるもので、現在のフランスには、祝福モードのかけらもありません。

 また、現在のフランスはデモやストライキ・暴動から日常生活を守るための警備だけでも大変な数の警察官や憲兵隊が動員されており(毎晩最低でも2000人といわれている)、とても、ヴェルサイユで予定されていた夕食会だけでも、ヘリコプター、地雷除去員、800 人の警官が現場に配置される予定であったために、デモと国王の両方の警備はかなり厳しい状態であったに違いありません。

 これは、ともかくも全てフランス側の問題でのキャンセル・・しかも、イギリス国王の予定をキャンセル(延期)するのですから、イギリスのフランスに対するイメージに深刻な打撃を与えるものであり、なんとバッシングを受けても仕方ないことで、何よりもマクロン大統領にとっては大変に屈辱的なことに違いありません。

 反マクロン派の政治家たちは、ここぞとばかりに「フランスの恥!」と声をあげています。

 しかし、英王室の話題が大好きなフランス人は、エリザベス女王のご逝去の際などには、昼夜をあけずに、まるで自分の国の女王様が亡くなったかのごとく大騒ぎしていたものの、チャールズ国王が就任して以来、どうにも熱が冷めてしまった感じもします。

 正直、エリザベス女王ほどには人気がないチャールズ国王のフランス訪問は、この時期ではさらに微妙な感じになってしまう可能性も大でした。

 ついに、国内だけでなく、外交問題にまでも影響が及び始めたフランスの年金改革問題ですが、この英チャールズ国王のフランス公式訪問キャンセルをCGT側はデモの勝利の一つとして掲げようとしており、また、このフランスの恥をさらす事態は反マクロンの声をさらに大きくしつつあります。


英チャールズ国王フランス公式訪問延期


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2023年3月24日金曜日

フランス全土で350万人動員の記録的なデモ 一晩に140ヶ所で炎が立ち上るパリ

 


 

 前日のマクロン大統領のインタビューを聞いて、「なんか火に油を注いだ感じだな・・」と思ったのが、まさに文字どおり、火に油を注いでパリの街はあちこちが燃え盛り、特に今回はオペラ界隈近くのサン・マルク通りなどは、山積みにされたゴミにつけられた火が建物に燃え移る、かなり危険な火災にまで発展したり、ブルバード・イタリアンのキオスクが燃やされたり、もはやゴミが燃やされるだけでなく、建造物が燃やされる火災にまで発展しています。

 49.3条(首相の責任のもと、採択せずに法案を通してしまう法律)発令から8日連続のデモ+暴動騒ぎは収まるどころか、手が付けられない状態になっています。

 依然として続いているゴミ収集業者のストライキのために、あちこちに山積みにされているゴミには火がつけられ、消火された後は、まことに見るに堪えない惨状ぶりを強調しています。

 この日は、以前からCGT(全国組合連合)が大規模なデモ・ストライキを予告していた日で、CGTの発表によるとフランス全土で350万人がデモに参加した(当局の発表によると109万人)とのことで、記録的な動員であったと言われています。

 なにしろ、パリだけでも119,000人動員したというのですから、えらいことです。

 こうなってくると、山積みにされたゴミは、不衛生なだけでなく、近隣の住民や店舗などにとっても、いつ火がつけられるかわからない恐怖の対象でもあります。


 この日はなんと、大小含めて、少なくとも140ヶ所で火がつけられたとのことで、放火や破壊に乗じての略奪行為なども起こり始める危険も孕んでいるため、内務相をはじめとする政府の面々もこれらの暴力行為はとうてい、容認できないとしています。

 これは、パリだけではなく、ボルドー市庁舎の大扉も燃やされています。

 また、警察・憲兵隊もかなり乱暴な場面もみかけないではありませんが、彼らも命がけで、任務についているわけで、この日だけで負傷した警察官・憲兵隊は149人にも上ったということです。

 私の勝手な想像ですが、この警察官や憲兵隊の中にも、同じフランス国民として、抗議デモに参加したいくらいの気持ちの人はいるだろうに、まことに気の毒な気がしてきます。

 もともとの年金改革デモは、長いこと続いていましたが、比較的、暴力的な面が少ないデモだという印象でしたが、一気に暴力的な暴動の様相にシフトしたのは、49.3条発令が発端で、暴力的な行為は許せないことながら、この怒りに火をつけてしまった49.3条というものが、この激しやすい国民を持つフランスで、あってよい法令なのかどうか、考えてしまいます。

 私は年金改革は恐らく必要なことなのだとは理解しますが、やはり、フランス人の国民性を考慮したら、49.3条は使うべきではなかったと思います。やり方を間違えたと思います。

 国会での規定どおりの採決を通すにはリスクがあったためのこの49.3条発令で早道をとったつもりが、このパリの、いやフランス全土の荒れようを見れば、もはや、とんだ回り道になってしまったことは、もはや言うまでもありません。

 49.3条には、「首相の責任のもとに・・」という文言がついていますが、こんな破滅的な状況になって、首相が一人で責任をとれるものでもないでしょう。


年金改革問題 パリ 大規模デモ 暴動 放火


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2023年3月23日木曜日

火に油を注いだマクロン大統領35分間のインタビュー

 


 もはや、今のフランスの大混乱状態でマクロン大統領が何かを話して解決できるとは、あまり期待してはいませんでしたが、ともかくも、49.3条(首相の責任のもと、採択せずに法案を通してしまう法律)発令以来、初めてテレビで公に向けてマクロン大統領が口を開くということで、このインタビューはかなりの注目を集めていました。

 これまでも、ワクチンパスポートを導入した際なども、(ワクチンパスポートを持たない人は飲食店に入れないとか、長距離の交通機関を利用できないとか)かなり強引なやり方を押し通してきたマクロン大統領でしたが、あの時は、当初は相当な反発を生み、大規模なデモなども組織されたりもしましたが、かなりの割合で賛同する人々も多く、また自分達の健康が人質で、タイミング的にも夏のバカンスの直前のタイミングということで、騒ぎは少しずつおさまっていきました。

 結果的には、あの時のワクチンパスポートの導入は、かなり強引な手段であったとはいえ、結果オーライで、後々、評価されており、マクロン大統領にとっては、ある意味、強行突破の成功体験だったかもしれません。

 しかし、今回の年金改革問題、49.3条問題は、どうやら雲行きが違います。正直、私の印象では、2期目になってからのマクロン大統領、マクロン政権はどうにも人が変わったような、暖かみが消え失せたように感じるのです。

 今期の閣僚のメンバー構成のためでもあるとも思うのですが、それを選んだのは、マクロン大統領本人なのです。

 今回のインタビューに関しては、やはり、どうにも、その設定自体からしても、不自然な感じが拭えず(放送時間帯(13時からの生放送)、このインタビューがマスコミが申し込んだものだとしても、エリゼ宮にジャーナリストを招くというカタチをとっており、あくまでこのインタビューの主導権は自分にあるという印象のうえ、質問に答えるという形式をとりつつ、時にはインタビュアーの質問を遮り、自分の言いたいことだけを言っている感じで、途中で聞いているのが苦痛な感じになってきました。

 質問をすりかえ、言いたいことだけを言って、国民を説得しようとするのであれば、いっそのこと、インタビュー形式などとらずに、何かとことあるごとに大統領の演説として夜20時から流すいつものやり方をすれば、まだマシだったかもしれないと思ったくらいです。

 このインタビューの中で彼は「正当性」という言葉を多く使っていますが、そもそもこのような国民の怒りに対しては、ここまで悪化してしまった状況で、国民のデモの在り方の「正当性」を疑問視したり、自分の法案の「正当性」を語ったりしても、もはや、何の解決にもなりません。

 かと思うと、根拠も理由も異なり、ましてや同じ政治的方針をもたない、アメリカ大統領選挙でのドナルド・トランプの敗北を拒否したアメリカの極右による国会議事堂への侵略デモなどを例に挙げたりして、やはり、通常のマクロン大統領なら考えられないおかしな話の展開があったりもしました。

 彼は一貫して、この年金改革の必要性を貫いているし、それこそ、それは正当性があることであるとは思うのですが、どうにも彼の言動は、反発を生むもので、この49.3条発令に際して、辞任か?などと騒がれてもいたボルヌ首相は完全に自分の信頼をおいている人物であるとか、国民の怒りに耳を傾けるとしながらも、現実とは全く正反対の方向へ進んでいるように見えます。

 この場で国民が聞きたかったことは、彼の言う正当性のある「年金改革」を怒り狂っている国民をどう説得するかであり、ただ、これは正しいこと、必要なことというだけでは、もはや、何の解決にもならないことを彼は理解していない印象で、「マクロン大統領からは 19 世紀のブルジョア的で不平等な人間関係の中で築かれた想像力がにじみ出ている・・」などと言われています。

 このインタビューを聞いて、決意を新たに反抗の意思を固めた国民は多そうな感じで、直後の世論調査によると、フランス人の70%は、インタビューで大統領が説得力があるとは思わなかった、また、44%はまったく説得力がないと答え、回答者の 67% は、改革に反対する抗議運動を支持すると答えています。

 概ね、彼のこのインタビューは火に油を注いでしまったという印象で、大統領候補の対抗馬であったマリーヌ・ル・ペンなどは、「現実と、外の世界との接触をすべて失ったように見える孤独な男」と酷評しています。


年金改革問題 49.3条 マクロン大統領インタビュー


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2023年3月22日水曜日

パリだけでも毎晩警察官2000人が動員されている! デモは日に日に過激になっています・・

  


 49.3条(首相の責任のもと、採択せずに法案を通してしまう法律)が発令されて以来、毎晩、続いているデモ?はもうこれで6日連続になりました。

 こんなことが毎日、続いていて良いはずはありません。しかも、このデモは日に日に過激になっている感があり、昨日、年金改正法案がついに通ってしまったのを区切りに、より暴動に近い暴力的な要素が色濃くなってきた感じがあります。

 前夜も夜遅くまで群衆が集結していたパリ・リパブリック広場が昨夜の舞台の中心となりました。

 そもそも、ここ数日のデモは、届け出の出されていない(フランスはデモの権利がとても尊重されていますが、事前の許可を届け出る必要があります)無認可の自然発生的に近いデモで、この日は学生の集団抗議デモが日中から、パリ近郊から12区にかけて行進していました。(この段階ではまだ、暴力的ではなかったようなのですが・・)

 しかし、どこからとなく声があがり始めた「18時リパブリック広場に集結!」の号令に合わせたように、18時を待たずして、夕刻からリパブリック広場には、すごい人が集まり始めました。

 そして、すぐに、山積みにされたゴミとともに近くに停めてあったバイクが勢いよく燃えはじめ、その火の勢いとともに、盛大な黒煙がたちのぼり、一気に物騒な感じになりました。

 また、この集まりは、すでに単にゴミを燃やすだけにはとどまらず、警護にあたる警察、憲兵隊に向けて、ロケット花火が発火されたりして、一時はこの警備隊も後ずさりせざるを得ない、まことに危険な状況に陥りました。

 もうロケット花火などの武器を持参してデモに参加している時点で、これはもうかなり暴力的なものになっているわけで、暴力行為がエスカレートしてきていることは明白で、応戦する警察もたまったものではありません。

 そもそも49.3条が発令された木曜日以来、パリだけでも連日連夜(もう6日間)、毎晩遅くまで2000人の警察官が動員されているそうで、警察も疲れ果てていることと思います。

 もう法案は決定してしまったというのに、この暴動がおさまらないということは、終わりが見えないということです。

 これまで、公にはこの件で沈黙を守ってきたマクロン大統領は、22日、ジャーナリストからのインタビューに答えるという形で生放送でようやく重たい口を開くようですが、また、この放送時間帯が13時ということで、この映像は、繰り返し流されることになるとはいえ、この放送時間帯の視聴者は、すでに引退している人向けの時間帯で、どこか消極的な姿勢が見え隠れする空気もあり、あまり大したことを話すとは見られていません。

 現在のフランスの状況で、マクロン大統領がいつもの調子で正当性を全面にかざして話をしたところで火に油を注ぐだけだと思われます。

 しかし、だからといって、このままで良いわけはなく、どうするつもりなのか、本当にマクロン大統領に聞いてみたいです。

 そもそも3月7日から始まっているパリのゴミ収集業者のストライキはまだ一向に終わる気配もなく、少なくとも来週の月曜日までは続くと言われています。

 このゴミ問題だけでも大変な被害で、ゴミ収集場所の近隣の飲食店などは、さすがのパリジャンも、もう客足の減少が著しく、臭いも強烈で、ましてや毎晩のように山積みのゴミが街中で燃やされているのですから、その燃え上がる炎の映像だけでも衝撃的ですが、映像では伝わらない、街中で数日放置されたゴミが燃える臭いは、強烈です。

 パリの住民もさすがに、もうこれには、辟易してきて、ゴミ収集分の税金を支払わないなどと言いだしている人まで出没しています。

 世の中の動きや政治の動きなどは、長い歴史の中で時間がたってからでないと、その良し悪しが判断できないものが多いですが、今回のこのフランスの年金改革騒動、かなりの痛みを伴っていますが、あとになって、痛みを伴ってでさえも、あの時の判断は正しかった・・となるのかどうか・・ともかくも、痛みは最小限にとどめてもらいたいです。


49.3条 年金改革反対デモ ゴミ問題


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2023年3月21日火曜日

年金改革法案採択され、さらに増すばかりの国民の怒り

燃えるゴミの山に遮断されるパリ・オペラ通り

 

 フランス中を大混乱に陥れている年金改革法案は、国民議会により、政府に対する 2 つの非難動議が却下された後、月曜日に自動的に採択されました。

 先週木曜日にボルヌ首相により発表された 49条3項の適応に対して、今週の月曜日に国会で 2 つの非難動議が議論されました。 しかし、政府とその法案を撤回するのに必要な数の票を獲得できずに、年金改革法案は自動的に採用されることになりました。

 こんなに国民が抗議して、毎晩のようにパリの街はゴミ焼却炉と化しているというのに、あまりにあっさりと決まってしまって「へっ??ほんと??」と拍子抜けしてしまいそうになるのですが、国民の怒りの炎は消えることはなく、ここ数日は無許可のデモがあちこちで起こり続け、とどまるところを知りません。

 毎日のように、パリのゴミ焼却炉の場所は変わるのですが、昨夜は、かなりあちこちで炎が立ち上っている様子には、なんだか切なくなってきます。

 昨夜は最初、パリ6区のオデオン地区からグランブルバード、ブルバードサンジェルマン界隈が燃えていると思ったら、今度はオペラ座を背景にオペラ通りの中央を遮るようにゴミの山が散らばって同じ通りでいくつもの炎があがっており、次には、パリ市庁舎近くからサマリテーヌ(デパート)のあたりと、それぞれがそんなに離れた場所ではないにせよ、かなりパリ市としては、象徴的な場所で炎が上がるのには、ため息が出てしまいます。


 特に在仏日本人にとっては馴染みの深いオペラ通り(オペラ界隈は日本食のお店が固まってある場所で日本人街とも言われる場所でもある)は、長い間、職場があった場所でもあり、それほど長くもない(シャンゼリゼなどと比べると)通りのあちこちに山積みのゴミに火がつけられ、その周りにゴミが散らばり、荒れ果てている様子に、なんだか妙に悲しみが湧いてきてしまいました。

 しかし、パリ市の消防隊ももう慣れたもので、わりと、すぐに鎮火してしまうところもスゴイもんだと妙な感心もしてしまいます。

 テレビのニュースでは、このデモの様子を中継しながら、ジャーナリストが解説したり、法案採択についての意見を述べたりしているのですが、「今回のデモは、黄色いベスト運動のように過激に暴徒化はしていない!彼らはゴミを燃やしているだけで、何も破壊していない!」と解説?する人までいて、「なるほど、考えてみれば黄色いベスト運動の時には、銀行を燃やしたり、商店のウィンドーを壊して物を強奪したりしていたな・・」などとも思ったのです。

 しかし、これだけパリの街を荒らして、ゴミを燃やしているだけ・・というのも、物は言いようだ・・と彼らの屁理屈?に今さらのように感心させられるのです。

 この年金改革法案が自動的に採択されたことを受け、これに異議を唱える左派は共有イニシアチブ(RIP)をとり、国民投票の要求が、憲法評議会に提出されています。

 マクロン大統領は相変わらず、国民向けへの発信(ツイッターなど)は、この問題には一切ふれずにいますが、火曜日には昼夜にわたって、多数派の指導者、多数派の議員と上院議員を迎える予定であるとエリゼ宮が発表しています。

 これは、何が何でも国民投票には持ち込まないための説得作業だと思われますが、たとえ、これで指導者たちや議員たちを説得できたとしても、ちょっと順番が違ったというか、本来の話し合いは49.3条を発令する前に行われるべきものであって、その前に彼らを説得できていれば、49.3条は発令する必要もなく、これほど国民を怒らせることもなかったと思うのです。

 いずれにしても、これで法案が通ったとしても国民の怒りが鎮まるものではなく、毎晩のようにパリのあちこちでゴミを燃やし続けるだけでは済まなくなり、今度は本当に破壊行動が始まるかもしれません。


年金改革法案採択


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2023年3月20日月曜日

家の固定電話を外したら、私の行方不明騒ぎが起こっていた・・ 

 


 ある朝、パリにいる日本人の友人から携帯に電話(messengerで)があって、電話に出るなり、彼女には開口一番「あ~やっと捕まった~~!」 と言われて、「???」となりました。

 彼女曰く、「ジャンピエールから連絡があって、あなたにずっと電話してるんだけど、全然、連絡がつかないけど、彼女は無事なんだろうか?」とすごく心配していたとかで、彼と彼女はあたふたと私を探し回ってくれていたそうなのです。

 彼女とジャンピエールはそれぞれに存在は知っているけど、知り合いではないくらいの間柄で、そんな彼がわざわざ彼女の連絡先を探し出してまで彼女に連絡を取ること自体、大変なことだったと思うのです。

 ジャンピエールは私の元同僚であった男性で、家が比較的近いために、私が日本に一時帰国する時には、すでに引退している彼にポニョ(猫)の世話を頼んで、家の鍵を渡して毎日、ポニョのごはんやトイレの世話を頼んでいる人で、あとは、たまにお誕生日やノエルとか年明けの時に電話をくれるくらいで、あんまり普段は連絡をとってはいませんでした。

 ジャンピエールに頼まれて私の捜索をしてくれていた女性は、以前は、比較的、近所に住んでいたために、たまに家に行ったり、犬の散歩を頼まれたりと時々、連絡をとってはいたのですが、彼女も断捨離をして、少しコンパクトなアパートに買い替えて引っ越してしまって以来、あまり連絡をとらなくなっていたのです。

 彼の方には、以前、日本に行く際に、「何かあったら電話して!」と、以前、私が日本の実家の電話番号を渡していたことがあったらしく、それを大事に持っていたのか?彼女は彼に頼まれて、日本の実家にまで電話してくれたそうで、それも繋がらなかったと大変、心配してくれていたようなのです。

 実のところ、私は、昨年から家の固定電話はもう必要なしと思って、繋いでおらず、もう必要な連絡はすべて携帯の方に連絡が入るし、家の固定電話の方には、ほぼ 99.9%がなにかの勧誘とか広告の電話ばかりで、もう鬱陶しいことこのうえないので、外してしまっていたのでした。

 頻繁に連絡を取る人は、携帯電話か、what's upか、messengerかLINEでの電話かメッセージで連絡をとっているので、私が家の電話を外していることさえも、とりたてて知らせることもしていなかったのです。

 ところが、そういえば、ジャンピエールは今から思えば、いつも電話をくれていたのは、家の固定電話の方だった気がするのですが、彼に電話を外してしまったことを伝えていなかったのです。(彼には携帯の番号も教えてあった気がしていたのですが・・)

 どちらにしても、第三者まで挟んで、私が行方不明になったと日本にまで電話をするほどの大騒ぎになっているとは、思いもしないことでした。

 実は日本の実家の方も現在は娘が一人で暮らしているのですが、インターネットの契約の際に家の固定電話とネットの関連がややこしく、娘も家の固定電話は必要ないと言って、切ってしまったのでした。

 そもそも固定電話とか携帯とかにかかわらず、電話というものがあまり好きではない私、滅多に電話というものをすることはないのです。

 私は携帯電話ですら、かなり持ちたくなくて、けっこう長いこと持たずに抵抗し続けてもいたのですが、もはや携帯電話は電話というよりも他の機能があるために持っているようなもので、一体、今、どのくらいの人が家の固定電話を持ち続けているのかなぁ?と思います。

 とはいえ、家の電話を外してしまったことが、こんなに大騒ぎになってしまうとは、申し訳なかったと少々、反省もしておりますが、されど、もともと友達も多くはなく、これで、今度こそ家の電話は必要なくなった・・とも思うのでした。


行方不明騒ぎ 家の固定電話


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2023年3月19日日曜日

3夜連続デモ デモと暴動の境界線

  


 あくまで個人的見解ですが、政府の提案している「年金改革」は残念ながら必要なことで、間違ったことを言っているのではないと思っています。

 フランスは日本ほどの少子高齢化ではないにせよ、フランス人は意外にも、長寿国であり、平均寿命も82歳を超えており、寿命は依然よりも長くなっているわけで、単純に考えても年金受給年月が長くなっているわけで、単純に考えても、それだけでも年金制度を圧迫していることは明白で、長生きするようになった分だけ、余計に働かなければならなくなるのは、当然のことなのです。

 しかし、正しいことでも、やり方を間違えると、それが通らなくなってしまうのだと、まざまざと見せつけられているような気がします。

 そもそも今期のマクロン政権は与党の議席数が議決権に達しておらず、そこが災いの始まりでした。そうでなければ、49条3項(採決せずに法案を通す)を使う必要もなく、議会で正当な採決を行い決定されていたことなので、ここまで国民を怒らせる結果にはならなかったはずです。

 しかし、元をただせば、与党の議席数が達していない時点で、マクロン政権には暗雲がかかり始めていたのです。

 現在は、もはや年金改革問題以上に「49条3項」の強制執行に対する抗議の声が高くなり、昨日行われた世論調査によると80%以上の国民が「49.3」の執行に反対しているとのことで、さすがにこれは法律にのっとったこととはいえ、この国民の声を無視するのには、無理があります。

 パリでは3日連続のデモが大荒れに荒れており、パリ警察は2日間デモの集合場所に使用されていたコンコルド広場でのデモを禁止したため、今度はパリ13区の「PLACE D'ITALIE(プラス イタリー)」を中心に4,000人以上が集結し、ゴミ収集業者のストライキのために山積みになっているゴミ箱をはじめとして、自転車、車、廃材などに火がつけられ、トラムの走っている道路を封鎖するために道路を遮断するようにゴミ箱を並べて燃やすという悪質なものに発展しています。


 また、デモ隊はシャトレ・レアールの駅の駅ビル内までに突入し、駅ビル内で噴煙があがる騒ぎにもなってしまったようです。

 あちこちに炎が立ち上り、火花が飛び散り、催涙ガスが立ち込め、放水車が出動し、相当数の警察官と憲兵隊が出動する中、大声をあげて行進しつづけるデモ隊とを見て、私は「暴動」という言葉を忘れていたけど、もしかして、これって「暴動」なの?とちょっと、自分でも動揺を感じました。

 公共交通機関のストライキも続いてはいるものの、このデモの異常な数の動員のため、普段は、自動運転のためにまず、ストライキで運転が止まることのないメトロ1号線なども、警察の命令により、8か所の駅が閉鎖されるという異常事態が起こっています。

 ここまでくると、これが一体、何日続くのかはわかりませんが、全国の組合が組織する大々的なデモ・ストライキは23日(木)に予定されており、この日のストライキやデモの規模が相当なものになるのは不可避であるような雲行きです。

 フランスでは、「デモの権利」は非常に重く尊重されているものの、あくまでも、デモを行うためには、その地域の許可を申請してのうえでのことなのですが、もうその許可なしのデモを止めきれないギリギリの状態で、デモと暴動の境界線はどこにあるのだろう?と考えてしまうくらいです。

 しかし、一方では、与党がガッチリ議決権を握っている日本では、やけにすんなり重要なことがどんどん決定されていく様子にも、フランスのこの暴動とは別の意味で底知れない不気味さや不安を感じているのです。


年金改革デモ 暴動


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2023年3月18日土曜日

49条3項発令が年金改革法案反対を盛り上げ反政府運動に発展するかも?

  


 年金改革問題に関して、デモやストライキを通して、根強く強力な反対の意を示し続けてきたフランス国民ですが、ストライキはともかく、今回のデモは、これまでは黄色いベスト運動の時のような破壊的な行為には至っておらず、比較的、おとなしく?しかし、力強くデモを行っていた印象がありました。

 しかし、一昨日の49条3項発令による採決なしに法案を突破させる発表がなされて以来、国民の怒りは爆発し、その日のうちに数千人の人々がコンコルド広場に集結する大騒動になりました。

 数時間後にはコンコルド広場付近からは、これらの人々は強制的に撤退させられたものの、退去させられた人々が現在、ゴミ収集業者のストライキのためにゴミが山積みになっているパリの街に散り、山積みになっているゴミや車に火をつけ、パリのあちこちで炎があがるカオス状態になりました。

 翌日の昼頃に、コンコルド広場からチュイルリー公園、リヴォリ通り、カンボン通り、ヴァンドーム広場から、オペラ、シャトレあたりまで歩いてみましたが、昨夜の塵芥はあっという間に片付けられていました。

 ただし、コンコルド広場に通じるリヴォリ通りには、たくさんの警察車両が警護のために控えているのには、物々しさを感じずにはいられませんでした。

 これまでは、比較的シンプル?に年金改革問題に反対という話だったのが、49条3項発令による採択なしの強制法案突破というやり方に反発=政府のやり方に反発、というまた別次元の抗議が実際の年金改革問題に輪をかけて反発を激化させてしまいました。

 採択なしに強制的に法案を突破させるなど、まことにフランスらしくないし、こんな法律あったの?と驚くくらいですが、この法律は「首相は、閣僚理事会の審議の後、財務または社会保障資金調達法案の投票に関する国会の前に政府の責任を負うことができる」というもので、今回は、これを該当させることができると政府が判断したものです。

 2008年の憲法改正で一部、修正が加えられているものの、この法律は思いのほか?(私の思っていたよりは・・と言う話ですが・・)フランスには古くから存在するもので、1958年以来、この49条3項は88回、1988年から1993年までに限ると39回使用されています。

 しかし、見ようによっては、これは30年間使われてこなかった禁じ手でもあり、現段階では結果はまだわからないものの、国民の怒り様を見ていると決してよい手段であったとは思えないのです。

 私の印象では、今回の年金改革問題については政府の発信力が弱く、「改革か破綻だ!」とマクロン大統領の側近ががなっていた記憶がありますが、どちらかというと、度重なるデモやストライキのわりには、政府首脳は「騒ぎたい奴は騒いでおけ!」とばかりに比較的、余裕に構えていたのを少々、不思議に感じていたのですが、今から考えると、この49.3を使うつもりでいたのかもしれない・・と思ってしまうのです。

 今回の国民の怒りを爆発させる情勢に、政府のスポークスマンは、「最後の最後まで、49.3を適用することは回避したかった・・」と述べており、いささか、政府首脳の間でも意見の相違があったようにも受け取れないこともありませんが、「しかし、この重大な問題に関して投票を行うリスクが大きすぎると判断した」と述べています。

 国民の怒りは一夜で収まるはずもなく、翌日も再び、パリ・コンコルド広場には4,000人以上が集結し、炎が上がり、警察とのせめぎあいが起こり、二夜連続で警察による群衆の強制退去が行われました。


 重大な案件につき、強行突破したかったという政府の気持ちもわからないではありませんが、年金改革問題以前にこの政府の反民主的なやり方、政府そのものに対する反発に及びそうな勢いになっている気がします。

 パリの中心地を歩きながら、「そういえば、このあたりでカステックス前首相(退任後)がSPもつけずに一人で歩いているのに出くわしたことがあったなぁ・・今だったら、絶対、無理だろうな・・」などと思っていたら、内務大臣が全国の与党の議員を攻撃から守るために事務所や自宅の警備を強化すると発表していました。

 今や政府の面々の身の危険が脅かされそうなほどの騒動に発展してしまいましたが、首相は49.3の文言にあるとおりに責任をとれるのだろうかと思っていたら、彼女より先に、彼女の首席補佐官が辞任するという知らせが入ってきました。

 通常は、何かあるごとに、すかさずツイートで意思表示をしているマクロン大統領も今回のこの怒り心頭の国民に対してはスルーしており、慎重になっている様子がうかがえます。

 この国民の怒りをどう乗り越えていくのか?すでに極左、極右の党からは不信任動議が提出されており、万が一、不信任案が可決されると内閣総辞職なんてこともあり得ないでもないので、この先の行方がますます見逃せなくなりました。


年金改革問題 反政府


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2023年3月17日金曜日

年金改革法案に49条3項発令で法案改変を強行する発表にコンコルド広場が大変なことになった!

  


 大多数の国民が猛反対している「年金改革問題」(62歳から64歳へ定年2年延長など)には、政府首脳が国民を説得できないままに、各方面、ずっとストライキやデモが続けられてきました。

 まるで、両者(政府と国民)の歩み寄りが見えないまま、ストライキはどんどん広範囲の業種にわたり、現在はゴミ収集業者のストライキのため、パリの街は、今日、現在の発表では8000トン以上のゴミが至るところに山積みにされ、ゴミが異臭を放ち始め、まさに、美しい街並みを台無しにしています。

 衛生問題にも発展し、政府はパリ市に対してゴミ収集業者のストライキをやめさせ、職務に戻るように働きかけるように要請しましたが、パリ市長は「市長にはストライキを止める権利はない」とこれを拒否。

 ついには、国が強制的にゴミ収集業者に職務に戻らない場合は罰則を設けることを提案し始めたりで、「フランスでそれやって大丈夫?」と思うような手段を取り始めていたところでした。

 しかし、そんな政府の高圧的な態度をさらに決定的にしたかのごとく、かねてから政府がちらつかせていた通称「49.3」49条3項(議会で採決をとらずに法案を採択する)を発令したのですから、それは大変な騒ぎです。

 49.3条が発令されるやいなや、みるみる人が集結しはじめ、夕方にはパリ・コンコルド広場は大変な騒ぎになり、近辺のメトロの駅も閉鎖され、炎と煙が立ち上るなか、群衆と警察の対決が始まりました。

 これまで数々の問題が起こるたびにフランスでは政治家がテレビなどに数多く登場し、国民との討論番組などに積極的に参加して国民を説得しようとしている姿勢は見事なものだと思ってきましたが、どうにも今回の年金改革問題に関しては、討論番組などが行われても、政府側はどうにも劣勢な感が拭えない感じで、引き続くデモやストライキに両者の根気比べになるのかな? 一体、どのタイミングでどうやって収集をつけるのかと思っていました。

 今回、政府が49条3項を発令するのは、採決をとれば負ける可能性があるために他ならないわけで、だからといって、そのような高圧的な強行は、国民の怒りに火をつけないはずはなく、今後の国民の騒ぎは生半可なものでは済まない予感がしています。


 よく、デモが暴徒化したりすると、ゴミ箱などに火がつけられるのは珍しいことではありませんが、なんと、現在のパリには火がつけられるゴミがいたるところに山積みになっているのは、一層、恐ろしいことです。

 この騒ぎが始まってから、フランスのツイッターのトレンドは1位、ハッシュタグRevolution(革命)、2位、マクロン、3位、年金改革と、この問題が上位を独占しました。

 年金改革についてのこれまでのデモに比べて、一瞬で、一段と過激な感じになったのは、この集結したデモ隊の行動にあらわれています。

 

 フランス政府はフランス国民のキャラクターを理解しているはずなのに、このやり方は彼らの怒りを爆発させるとは考えなかったのでしょうか? 等身大のマクロンの人形が燃やされています。

 政府は49.3条発令で完全に地雷を踏んでしまった感があります。

 その日、コンコルド広場に集まった人々は解散させられ、パリの街に散らばり、結果、あちこちのゴミの山に火がつけられ、あちこちで炎が立ち上るパリはカオス状態に陥りました。

 それにしても、この時期、パリに観光に来ている人々には、まことにお気の毒な感じです。


49.3法案改変強行 パリ破滅的抗議デモ


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2023年3月16日木曜日

いつの間にか、コロナウィルスのPCR検査が有料になっていた・・

  


 パンデミックが始まって、コロナウィルスのPCR検査が登場し始めて以来、フランスでは、検査はずっと無料でした。ワクチン接種が始まってからは、これには、ただし書きがついて、ワクチン接種の証明書を提示すれば無料とされてきました。

 これには、私もとても助けられてきて、昨年の年始頃などは、爆発的に感染者が多くて、ちょっと出歩いただけで、感染者追跡アプリには、「あなたは感染者と接触しています。すぐに検査を受けてください!」というメッセージが入っていたので、そのたびにウンザリしながらも、隣の薬局に検査を受けに行っていましたし、熱っぽかったり、風邪っぽかったりした時でも、「もしかしたらコロナ??」とまずコロナウィルス感染を疑い、すぐに検査を受けに行っていました。

 昨年、日本に一時帰国した時にも日本入国には陰性証明書が必要だったので検査を受けに行きましたが、それも無料だったし、証明書の発行も無料でやってくれました。

 結局、これまでに数十回は検査を受けてきたので、それが全て無料であったことは、大変たすかりました。幸いにもこれまで一度も陽性になったことはありません。

 そもそも、無料でなければ、隔離義務を強いる検査などフランス人が受けるわけもなく、結果、被害はもっと甚大になっていたと思います。

 現在は、マスクの義務化が撤廃されてから、かなり時間も経ち、にもかかわらず、感染者数はさほど増加しなくなり、1日の新規感染者数も多い日でもせいぜい5,000人程度にまで減少し、病院のひっ迫状態も改善され、ほぼコロナ前の生活に戻りました。

 そんな世界の中にいると、私自身は、今は花粉症もありマスクを持ち歩いて、場所に応じてまだマスクをすることもあるのですが、実際にちょっと熱っぽかったり、風邪っぽかったりしても、いつのまにか、「もしかして、コロナ感染??」とは思わなくなっていました。

 なので、検査に行こうとも考えなくなっていたのですが、3月1日から、検査費用の全面国民健康負担はなくなっており、医師または薬剤師が検査を行う場合は検査費用の 30%、看護師または理学療法士が検査を行う場合は 40% が自己負担になっていました。

 しかし、これもフランス人の多くが入っているミューチュエル保険(国民健康保険をカバーする保険)に入っていれば、カバーされるので、自己負担分はカバーされます。

 また、これには例外として、引き続き検査が無料とされる人々について、長期疾患(ALD)にかかっている人、65 歳以上の人、未成年者、医療専門家、医療施設または医療社会的サービス(高齢者施設や障がい者施設等)で働く人、免疫不全の人などが認められています。

 そもそも、私自身もちょっと具合が悪くても、コロナ感染を疑う気持ちが失せているほど、普通の日常に戻っている状態であるうえに、陽性者の場合でも、もう国は隔離義務を課してはいないので、国の保険体制も変更していくのは当然の話です。

 しかし、まだ、完全にコロナウィルスが消滅したわけではないので、心配でないことはありませんが、パンデミック以前のことを考えれば、すでにそれに対処する術は心得ているし、また、事態が深刻な状態になった場合は、元に戻せばいいだけの話で、余計な支出は省いて他の問題にも対応していかなければならないのでしょう。

 とりあえず、いつまた、大変な事態になるかもしれませんが、検査が有料になっても誰も文句を言わずにいるほどになったのですから、今度こそ、本当にパンデミックの終わりが見えてきたのかもしれません。


コロナウィルスPCR検査一部自己負担


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2023年3月15日水曜日

スーパーマーケットのレシート 自動印刷廃止

  



 私には、なぜ、レシートをそこまで目の敵にするのかわからない気もするのですが、フランスでは、スーパーマーケットなどで買い物した際のレシートが自動的に出てこなくなりました。

 最近、スーパーマーケットで買い物する際は、ほぼセルフレジしか使わないので、ボーッとしていると、レシートを受け取ることはできません。会計をするときに、レシートが必要のところにチェックしておかないとレシートは出てこないのです。人のいるレジだと、会計後に必ず、レシートいりますか?と尋ねられます。

 もちろん、今までレシートなど、その場で捨ててしまっていた人も多いので、必要ないケースも少なからずあったと思うので、必要な人にだけレシートを渡すという方法は無駄を省くという意味ではよいことかもしれません。

 これは有害物質を含むレシートが年間3億枚も印刷されているとかで、本来ならば今年の1月1日からレシートの自動印刷は廃止されることになっていましたが、予定どおりに事が運ばないのか、その後4月1日からということになったようで、現在は移行期間のようです。

 ただし、このレシート廃止は、家電製品、コンピュータ機器、電話機など、いわゆる「耐久消費」の領収書には適用されません。

 私は、どこで買い物をするにしても、トラブルの際の証明になるので、変わらずレシートはもらうようにしています。

 ここは、いつも戦闘態勢でいるフランス生活の悲しいところで、万引きのチェックに遭遇したり、また、レジで金額を間違えられたり、また返品、返金をしてもらうために、レシートは不可欠だからです。

 しかし、今後4月1日以降も頼めばレシートをもらえる状態が続くのかどうかはわかりませんが、これに代わるものとしてe-チケットが登場するようです。

 これは、SNSによりQRコードでレシートを受け取れたり、銀行のクレジットカードで決済すると、webページからレシート(e-チケット)がアプリに自動的に送信されるようになるそうです。

 一方では、このレシートの自動送信に関しては、個人情報にも関わるために、一般データ保護規則(GDPR)に従い、購入者からのデータ収集は、購入者の明示的な同意に基づかなければならないとされているので、必ずしも、すんなりいく話でもないかもしれません。

 しかし、店舗側もこんなことにめげているわけにもいかず、大手スーパーマーケットチェーンなどは、これまで消費者が利用していた各スーパーマーケットのポイントカードを利用し、そのカードの持つアカウントでレシートを受け取ることができるようにすると発表しています。

 なんだか便利になるんだか不便になるんだかわからない気もしますし、日本だったら、「年寄りにe-チケットなどというわけのわからないものをどうやって使えというんだ!」などという声が上がりそうな気もするのですが、フランスでは不思議とIT化に対する反発の声はあまり上がらないような気がします。

 保守的なところも大いにあるフランス人ですが、意外と新しいものもすんなり受け入れてしまうところもある不思議な国民です。


レシート自動印刷廃止


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2023年3月14日火曜日

10年間で2倍に増加した子供への向精神薬の投与 

 


 家族、子供、年齢に関する高等評議会 (HCFEA) は、子供や青年向け(6歳~17歳)の向精神薬の処方が劇的に増加しており、何万人もの子供が危険に晒されていることを報告しています。

 報告書は、子どもたちの向精神薬の消費が10年間で2倍になったことを強調しており、HCFEAが収集したデータによると、子供と青年の向精神薬の消費は、2014年から2021年の間に抗精神病薬で49%、抗うつ薬で63%、催眠薬と鎮静薬で155%増加していることが明らかにされており、政府はこの問題への対応策をとるべきであることを警告しています。

 2021 年だけでも、抗不安薬で +16%、催眠薬で +224%、抗うつ薬で +23% の増加です。この過剰投薬の現象は、特別なケースではなく、何万人もの子供に関係しているのです。また、これらのレベルの増加率は、一般人口レベルに見られる増加率とは明らかに不釣り合いで、成人人口に比べても明らかに高い数値であるようです。

 HCFEAによると、パンデミック、戦争、生活環境への不安が続く状態の中、小児科、児童精神科の需要が増加しているにもかかわらず、児童精神科および医療社会的サービスが不足、衰退しており、受診しようにも半年から1年待ちになることが多く、この状況は、「子どもの健康状態の悪化」、「子どもや若者の緊急入院、自殺行為、自殺の増加」につながりかねないために、一般開業医にかかり、とりあえず、最悪の事態を回避するために向精神薬を投与することが一般的になりつつあるということなのです。

 私がフランスに来て驚いたことの一つに医者が比較的簡単に向精神薬を処方してくれることで、日本にいた頃は若かったこともあり、あまり医者にもかからなかったし、ましてや医者に抗うつ剤や睡眠薬を処方してもらうということを考えもしませんでした。

 フランスに来てからは、ずっと近所のかかりつけのお医者さんに親子共々かかっていましたが、私が最初に抗うつ剤や睡眠薬を処方してもらったのは、夫が亡くなった直後で、今から思うに、あの時期は、かなり強い抗うつ剤を日中に服用し、夜には睡眠薬を飲んでいました。

 まあ事情が事情だったので、そんなに不自然な処方でもなかったかもしれないのですが、精神状態と向精神薬(抗うつ剤や精神安定剤など)いうものは、恐ろしいもので、今なら、一瞬で気を失いそうな薬を飲んでいたにもかかわらず、正気?を保って仕事をしていたのですから、すごいことです。

 しかし、時間が経って、少しずつ落ち着き始めた頃から、この薬を飲み続けてはいけないだろう・・という不安があり、日中の抗うつ剤は減らしていったものの、夜の睡眠薬は眠れなくて翌日働けないのが怖くてなかなかやめられずに、お医者さんに相談したことがありましたが、「絶対に無理はしないで・・慌てなくて大丈夫だから・・無理してやめなくていい・・」と睡眠薬を処方し続けることにためらいはありませんでした。

 そんなお医者さんの対応には、むしろ私の方が驚いたくらいでしたが、結局、私はとりあえずは、今でも、いつも処方してもらう薬の中に向精神薬や睡眠薬が含まれています。一応、他の薬に関しては3ヶ月分まとめて出してもらうことができますが、オーバードーズを防ぐために、1ヶ月分ずつしか出してはもらえないことになっています。

 私のような大人に対してでも、えっ??と思っていたことが、子供に対しても起こっているということは、やはりちょっと心配です。私が子育てをしていた頃と今とでは、考えてみれば、ほんの数年で世界の情勢はかなり変わってきてしまっているので、一概には言えませんが、子供を健全に育てるのは、スポーツなど身体を動かすことをさせることが一番なのではないか?と思っています。

 一時、ロックダウンやマスクの義務化などで、それもなかなか難しい期間がありましたが、身体を動かすことが、精神的にも健全で、夜もしっかり眠れるようになる最良の薬なような気がしています。


子供への向精神薬の投与激増


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2023年3月13日月曜日

フランスの出生率低下にフランス人が提言する言葉 人生は美しい「la vie est belle」

  


 「フランスでは、日本やアルゼンチンと同様、出生率の低下が懸念されています」

 フランスの大手新聞社のそんなタイトルの記事を見つけて、やはり出生率の低下といえば、真っ先に例えにあげられるのは、日本なんだな・・と思いながら、興味深く記事を読み進めました。

 ここで挙げられていたのは、日本とアルゼンチンとフランスの出生率を比較しながら、出生率の低下について、いかにフランス政府の対応が充分ではないかを語っています。

 2022 年、アルゼンチンは 4,640万人の住民に対して 818,000 人の出生を記録しており、これは、1,000 人の住民あたり 17.64 人の出生、つまり100 万人のアルゼンチン人につき 17,640 人の赤ちゃんが生まれたことを意味していて、世代の更新が保証されている状態であると述べています。

 一方、「1 億 2,500 万人の人口に対して 80 万人の出生率を誇る?日本には、同じことは言えません。1,000 人あたり 6.40 人の出生率は、このままだと日本人数の減少と劇的な高齢化につながります」

 「日本は、その小さなサイズにもかかわらず、経済的および文化的に非常に重要な役割を果たしてきました。 私たちは、日本人が団結することに期待したいと思います!」と事実だけを客観的に述べて、大変危機的な状況を説明しながらも、日本を腐すことなく、頑張れと比較的ソフトにしめています。

 そして、1000 人あたりの出生数が 10.43人 のフランスは、日本とアルゼンチンの間にあります。

 フランスでは、2022年、687,000人の赤ちゃんが誕生しましたが、年間70万人の出生数のしきい値を下回っており、これは出生率1.76に相当します。

 第一次世界大戦はフランスで記録的な出生率の低下を引き起こし、1915 年には 1.52 にまで低下しましたが、この歴史的な低さは、戦闘と一般動員の激しさによる非常に特殊な状況に起因しています。 

 現在のフランスの出生率の低下は、私たちの指導者によって解読されるべき警告信号であるにもかかわらず、彼らは、十分な数の子供がいなければ、国の将来を確保することは困難であることを忘れている・・と述べています。

 私は日本と比較してしまうので、フランスの少子化対策はなかなか大したものだと思うのですが、この記事では、まだまだそれが充分なものでないことを指摘しているのです。

 .現在、大家族を持つことは、生活水準が仕事から同じ収入を持つ人々が達成する平均よりも低くなることを見て、かなり質素に生活することを意味しており、 家族手当は、ある程度の規模で存在するものの、生活水準の低下を補うにはほど遠く、養うべき人数が増加し、両親のフルタイムの仕事が困難または不可能になる場合もあり、国の手当は、子供の数が増えても相対的な貧困に陥らないようにするために必要なレベルにはほど遠いものであると指摘しています。

 日本の現状などからすれば、まさに異次元の問題提起です。

 そして、現在の状況の主な原因は、子供たちを世に送り出し、可能な限り育てることが、特に公的機関によって、不可欠な責務として感じられていないという事実によるものであると述べています。

 年金の権利を分配する際に、子供の誕生と教育のために投資せずに、彼らに効果的な年金基金に支払われる拠出金に比例して退職者を維持するための投資として扱っており、立法レベルにまで引き上げられたこのような知的混乱に直面している私たちは、愚かで不当な法律を取り除くことができる制度改革の到来を願うしかないと言っているのです。

 しかし、この政府に対する指摘とともに、これからの世代を担っていく若者たちによびかけている言葉があまりにフランスらしくて、私は感動したのです。

 「あらゆる困難にもかかわらず、人生は美しいものです。楽観的に生きましょう!」「la vie est belle(ラ・ヴィ・エ・ベル)」で、結局、そこ???とフランス人らしいな・・とクスッと笑ってしまいました。

 しかし、結局のところ、色々な困難があっても人生は美しい・・楽しい・・と思って、自分の家族を作って生きようと思うことが、シンプルな少子化対策なのかもしれない・・とも思うのです。

 私の場合、海外で生活することになったり、途中、若くして夫に先立たれたり、トラブル満載でしたが、どうにか生き延びてこられました。これという仕事を成し遂げたわけでもなく、大したこともしてこなかった人生でしたが、一応、子供を一人育てたということは、何より私にとっての喜びで、楽しかったです。子育てをしたことで、何もしてこなかった私でも、ちょっとは生まれてきた意味があったかな・・と思うのです。


フランス出生率低下 少子化対策 la vie est belle


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2023年3月12日日曜日

年金改革問題 ストライキ続行で街中にゴミが溢れるパリ

  


 先週、2日続けて別の場所に出かける際に2日連続でストライキに見舞われて、メトロに乗れなかったり、バスに乗れなかったりして、えらい目に遭って、その翌日には、どうにかバスもメトロもトラムもほぼ通常運転になっていて、ちょっとホッとしているところでした。

 しかし、これさえも、いつまたストライキが復活するやもしれないような危うい気配もあり、ホッとしきれない感じではあります。

 そうこうしているうちに、今度は、ゴミ収集業者のストライキが先週の火曜日からずっと続いているらしく、ストライキのために溜まりに溜まったパリ市内の路上のゴミは4500トンにも及んでいるようで、今度は衛生問題に発展しかねない事態に陥っています。

 そもそも、あまり衛生的に管理されているともいえないパリのゴミは、常にネズミとセットで、昔、会社で大きなゴミ箱の近くをネズミが走り去ったのを見て、悲鳴をあげた私に、ゴミ収集業者のおじさんに「君、どこにいると思っているの?ここはパリなんだよ!」と笑われたことが忘れられません。

 これは、通常の状態でのゴミ出しの時の話なので、今回のように大量のゴミが街にあふれている状態ならば、ネズミも住処が拡大されて、さぞかしネズミたちは忙しく活躍しているのかと思うといつ街中でネズミに遭遇するかと思うと恐ろしいばかりです。

 だいたい、生ごみも含む一般のゴミは、数日外に放置されていれば、腐敗もし、臭いを放ち始め、特に生鮮食料品を扱うお店(魚屋、肉屋、八百屋、レストランなど)は、近隣住民からの苦情を受けて困っているようですが、これらのお店もゴミを収納する冷蔵庫の余裕はなく、対処のしようのない大問題です。

 ようやくコロナウィルスが下火になってきたと思ったのに、この山積みのゴミで妙な病気でも蔓延しようもんなら、たまったものではありません。

 しかし、この山積みのゴミ、どうやら、同じパリ市内でも地域差があるようで、ストライキなしに通常運転が続いている場所もあるそうで、ゴミ収集が行われているのは、パリ2,5,6,8,9,12,14,16,17,20区で、それ以外の区ではゴミ収集は通常運転とのこと。

 なぜ、このような不均衡がおこるのかといえば、それは、それぞれの区の自治体(市役所職員)がゴミ収集を行っている区と民間企業に委託している区の違いなのだそうです。つまり、民間企業のゴミ収集業社はストライキをしていないということです。

 民間企業だからといって、ストライキを絶対しないというわけではないのでしょうが、よりシビアなのでしょう・・というより、パリ市職員ということは公務員、ストライキの公務員率はやはり高いのだと思われます。

 こんなことなら、どこの区も民間に委託してくれればいいのに・・と思ってしまいます。

 パリを訪れている観光客も「パリはたしかに美しい・・けど、このゴミの山には、とってもガッカリした・・しかも、臭い・・」などと、嘆いていますし、場所によっては、ゴミ箱が連なる通りのカフェなどは、そのゴミの山と臭いのためにあんなにテラス席好きのフランス人もさすがにテラスを避けて、人が埋まらなかったりと、大変な営業妨害にもなっています。

 また、今回のパリのゴミ問題、どうやらゴミ収集業者だけではなく、ゴミ焼却炉もブロックしているらしく、収集業者が来ている区のゴミの行き先も他に変更したりしている模様です。

 パリ市は、ストライキを止められない現状においては、限られたゴミ収集業者を食品市場などを優先しているため、一般のゴミは今後もさらに山積み状態が継続するリスクを抱えています。

 こうして、ストライキで、いつもはあたりまえの社会の機能が停止することで、逆にいつもの日常が維持されていくことは大変なことなのだと思ったりもします。

 しかし、今回は、あとどんなストライキが起こるのかは未知ですが、全ての国民に共通する年金改革問題だけに、どんなところにおいてもストライキがおこる可能性があり、また、いつまで続くのかもわかりません。

 今回のゴミ収集のストライキに関しては、「健康上のリスク」にも及びかねないため、多方面から非難の声があがっているものの、「合法的で正当なストライキの権利」を侵害することはできない・・というのが、フランスの大原則なのです。


ゴミ収集業者ストライキ 



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2023年3月11日土曜日

フランス人とフライドチキンとプーレ・ロティ

 


 昨晩、ユーチューブの動画を見ていて、いわゆる「飯テロ」に遭ってしまいました。旅行系の動画だったのですが、アメリカを旅行中に美味しいフライドチキンに出会った!という動画で、久しくフライドチキンというものを食べていなかった私は、夜中に「フライドチキン食べたい!どうしても食べたい!」と、もう私の頭の中はフライドチキンでいっぱいになってしまったのです。

 フランスにもKFC(ケンタッキーフライドチキン)はありますが、フランスのケンタッキーは、いつの頃からか、なぜだか、いわゆる日本のケンタッキーにある独特なフレーバーをまとった骨付きのフライドチキンというものが姿を消して、なぜだか、衣ばかりが多い、テンダーという骨なしチキンかウィングとよばれる手羽先部分だけになり、メインはバーガーになってしまいました。

 返す返すも本当に残念なことです。

 日本には、から揚げや焼き鳥など、比較的、ポピュラーに出回っている鶏肉料理がありますが、フライドチキンはから揚げとはまた別枠なのでしょうか? コンビニなどにホットスナックとして売っている「ななチキ」とか、「ファミチキ」などは、フライドチキン枠に入るのでしょうか? 

 わかりませんが、いずれにしても、どう考えても日本はバラエティに富んだ食生活が送れて、いいな・・と外から見ると思います。

 フランスでは、鶏肉料理の王道を行くものは、多分、「プーレ・ロティ」と呼ばれるローストチキンで、おそらく最もフランス人の食卓にあがる鶏肉料理だと思われます。

 いわゆる鶏の丸焼きなのですが、これは、どこのスーパーマーケットにでも売っているし、お肉屋さんには、たいていいくつもの丸鶏が串刺しになってグルグル回っているのを見かけるほど、やっぱりポピュラーなものです。

 家庭でも、簡単に塩コショウして、ハーブやオイルなどでマリネしてオーブンに入れておけばよいこの料理は、かなりポピュラーなお料理だと思います。

 以前、娘があるスタージュで一緒だった男の子が、けっこう育ちがよく、お金持ちをひけらかすいけ好かない奴がいて、その子がお母さんは料理が得意でママのプーレ・ロティが絶品だと自慢していたと呆れていたことがあって、(「そんなこと自慢すること?そんなもん、料理のうちに入るかよ・・」と娘なりの見解でした・・)なるほど、プーレ・ロティはフランス人のソウルフードのようなものでもあるんだな・・と思った覚えがあります。

 フランスにもフライドチキンもないわけではありませんが、圧倒的に存在感は薄く、せいぜいファストフードなどにあるチキンナゲットが冷凍食品などにも進出してきて、学校のキャンティーンなどには登場するようになったくらいです。それとて、ナゲットはナゲット・・フライドチキンではありません。

 揚げ物でないだけ、鶏の丸焼きの方が健康的ではありますが、フライドチキンがなぜ、フランスにあんまり浸透しないかは不思議でもあります。しかし、私が思うにこのプーレ・ロティのおかげで、フランスには今一つ、フライドチキンが浸透しないような気もしています。

 たとえ、フライドチキンが外国から入ってきたものであっても、同じように外国から入ってきた日本の「SUSHI」は、今やどこのスーパーマーケットにもSUSHIコーナーがあるほど浸透したのに、フライドチキンは、あまり目にすることはありません。

 話は逸れましたが、これは、どうにかしてフライドチキンを食べたい!と居てもたってもいられなくなり、ネットで探して、KFCではないフライドチキンのお店を見つけて、あんまり期待はせずにフライドチキンを買いにでかけました。

 これが結構、たっぷりしていて、外はサクサク、中はしっとりの大ぶりのフライドチキンで、「探せばあるじゃん!」と大変、満足した次第です。

 機会があれば、しばらくしたら、また、美味しいフライドチキンのお店を探してみたいなぁ・・と新しい課題を見つけた気がしています。

 とりあえず、今回、発見したフライドチキンのお店、「へっ??」と思うような小さなお店でしたが、結構、美味しかったので、興味のある方はお試しください。


☆Golden Fried Chiken  

   2 Rue de Patay 75013 Paris 


パリ フライドチキン

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2023年3月10日金曜日

フォーシーズンズホテルが始めた顧客向け高級ブランド品レンタルサービス

  フフォーシーズンズホテルが始めた顧客向け高級ブランド品レンタルサービス


 フォーシーズンズグループといえば、約36ヵ国に86以上のホテルを持つ高級ホテル業界の堂々たる一員ですが、独自の顧客獲得サービスの一環として、Vivrelle(高級ブランド品レンタルの会員制サービス)と提携して、プライベート レジデンスの顧客に対して、滞在中に高級ブランドのバッグ、アクセサリー、洋服などを共有ワードローブから無料でレンタルできるサービスを導入しています。

 フォーシーズンズホテルは、この新しいサービスについて、「ビジネスミーティング、ロマンチックなディナーなどの場に新しい表現のモデルの一部を提供するとし、あなたを輝かせるために必要なものを揃えてお待ちしております」とうたっています。

 ここで借りることができるのは、プラダ、エルメス、シャネル、ディオールのいずれかから、お客様は滞在中に着用したいハンドバックやジュエリーのモデルを共有ワードローブから無料で選択できるようです。

 プラダを除いて、すべて、フランスのブランドが勢ぞろいなところが、また・・と少々、閉口する感じでもありますが、ランダムに選ばれたブランドというわけでもないであろうし、いわゆる一般的に求められている高級ブランドがこれらのブランドだということなのでしょう。

 考えようによれば、旅先に自分の荷物をそんなに持っていく必要もないだけでなく、自分の持っていない豪華なアイテムを試したり、楽しんだりすることができる機会でもあり、このホテルに泊まれば、色々なファッションを楽しむオプション的な楽しみがついてくるのですから、最新のファッションを楽しみたい人には、なかなか魅力的な試みかもしれません。

 現在のところは、このサービスを行っているのは、ロサンジェルス(ビバリーヒルズ)とヒューストンの2ヶ所だけだそうですが、今後、このようなサービスが今後、他にも広がって行くかもしれません。


 また、今回、フォーシーズンズホテルと提携しているVivrelleは、2018年に設立された、月額料金で高級ブランド デザイナー ハンドバッグとジュエリーの共有クローゼットへのアクセスを提供するユニークなメンバーシップ クラブです。この高級ブランド品レンタルプログラムでは、アイテムとその価値に応じて 4 つの価格設定があり、プログラムによっては、返却期限なしの貸出も可能です。

 メンバーは割引アイテム (メンバー向けに特別に用意されたもの) を購入することもできます。

 そもそもフォーシーズンズホテルの顧客なら、レンタルせずとも高級ブランド品でもなんでも買ってしまいそうな気もしないではありませんが、旅先のフィッティングルームのような楽しみ方もあるのかもしれません。

 今のところ、パリのフォーシーズンズホテルでは、このサービスを行っていませんが、そんな煌びやかに着飾って出かけられるほど、パリは安全な場所でもありません。

 しかし、ホテルがレンタルサービスを提供するという新しいビジネスモデルとしては、全く同じものが対象でなくてもいいわけで、色々とヒントになることがあるかもしれません。

 

フォーシーズンズホテル 高級ブランド品無料レンタルサービス


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2023年3月9日木曜日

年金改革問題デモはルーブル美術館の中までも・・

 


 フランス人が年金問題に関して過敏に反応することはわかっていましたが、今回の年金改革反対の動きは、生半可なものではすまない感じになっていることをヒシヒシと感じています。

 思えば、今回のデモやストライキは、開始当初から、かなり腰を落ち着けて構えている感じがあり、最初のデモ・ストライキから次のデモ・ストライキまでは、10日間、あるいは1週間と多少の時間をあけて、続けられてきました。

 デモに対する政府側の警戒態勢もあるのでしょうが、かなりの人数が動員されているものの、そこまで破壊的な行動はおこらずに(そこそこの破壊行動は起こっている・・しかも、普通の感覚からしたら、そこそこどころではないかもしれない・・)、もう数ヶ月が経過しています。

 かねてから、3月7日のデモ・ストライキは国の機能をストップすると息巻いていましたが、具体的にどのような事態に陥るのかは想像がつきませんでした。デモはもとより、一般市民が全般的に実際に迷惑を被るのはストライキの方ですが、前日に引き続き、私は間引き運転されているバスを待つも、来るバス来るバス満員で乗れずにバスを2台見送り、3台目にようやくぎゅうぎゅう詰めのバスに乗るという事態に遭遇しました。

 フランス人は乗り物に上手に?詰めて乗るということができず、もう少し詰めて乗ってくれればと思いつつ、バスを2台見送るハメになりました。

 バスに乗れずにバス停に残されている人々からは、「次のバスに乗れって!私は10時間も待てない!(なぜ10時間というのかはわからないけど・・)」などという怒りの声も上がりだして、カオス状態に・・。

 公共交通機関以外にも、ゴミ収集車が来なくて、街にはゴミが山積みになっていたり、荷物を輸送するトラックが行き来するような道路がブロックされたり、製油所の出口がブロックされたり、週末にかけての空の便も20~30%キャンセルになるそうです。

 今回の年金改革反対の抗議運動は、表面的には過激すぎない分だけ、地の底からふつふつと湧き上がってくるような不気味な感じがあります。


 これまでは、ルーブル美術館などは、このような全国的なストライキなどの場合は比較的安易に閉鎖してしまうイメージがありましたが、今回は閉館はせずに美術館内でモナリザやサモトラケのニケなどの前に横断幕をかかげた職員150人ほどが立ちはだかり、いくつかの部屋をブロックするという、これまであまり例を見ない事態が起こっています。

 入場料をとっておいて、中に入れば、展示品が満足に見られないということは、ますますたちの悪いことです。

 国中を混乱に陥れているこの年金改革問題について、国会では審議が続いていますが、右派と中道派の間で議会の議事進行をめぐる争いが起こり、議論は膠着状態で、反対派によってしかけられた妨害戦略のために条文の検討になかなか至らないようです。

 この反対派の組合は、マクロン大統領との直接対決を希望しているそうですが、あまりの社会的抗議の強さのために、現在のところは、ボルヌ首相をはじめとした内閣陣営が盾になっている感じでもあります。

 しかし、ここまでくると、これだけ反抗しているフランス国民がこのまま黙って従うということも考え難く、「年金改革か破綻だ!」とまで言い放っていた政府は一体、どこに落としどころを見つけるのか?、解決方法は想像もつかず、お手並み拝見と少し楽しみな気もしているのです。


年金改革反対デモ ストライキ ルーブル美術館


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2023年3月8日水曜日

ストライキの被害を被りぐったりした1日

  

無残にも閉められていたメトロの駅の入口


 今回のストライキは大規模になると事前に予告されていました。にもかかわらず、そんな日にRDV(アポイント)が入ってしまって、もうなんで?この日??とウンザリしていましたが、当日にならなければ、どの程度、交通機関が止まるのかもわからず、わからないのに、わざわざ予定をずらしてもらうのも、予定をどんどん後送りにしていくのも嫌で、まぁ、少々大変かもしれないけど、行けないこともないだろうと、予定はそのままにしていました。

 前日にRATP(パリ交通公団)のサイトを見ると、私の利用する予定のメトロは、大変混乱する見込み・・とあり、まぁそれでも、なんとか辿りつけないことではないだろうとタカをくくっていました。

 当日になって、いくつかのルートをチェックして、メトロに乗れない場合はバスを乗り継いでいくつもりで、かなり早めに家を出ました。

 たいていは、間引き運転で、えらく待たされるうえに間引きされているのですから、その分の人がたまって大混雑という地獄絵図で、それでも最近は早々にテレワークに切り替えている人も多いので、それほどの混乱でもないというような話も聞いていました。

 しかし、駅に行くと、混乱どころか、駅がクローズ、私が乗るはずだったメトロは全く運行していませんでした。

 仕方なく、バスを2本乗り継いで、通常なら30分で着く道のりを1時間半かかって、ようやく到着。しかし、予定が入っていた場所が公的機関だったため、まさか、約束している人がストライキで来ていないこともあり得るかも??と、怒り心頭になる前に、そんなこともあり得ると心づもりをしていきました。

 フランスに来て以来、とりあえず、最悪の事態をとりあえず予想はしておくことで、まさかの事態に、「やっぱり・・」とか、「あ・・大丈夫だった・・」と思えるようなセイフティーネットを自分で張るようになりました。

 かなり時間に余裕を見て出かけたつもりが、途中、まさかの遅刻?(私は遅刻が大嫌い)と焦りつつ、どうにか時間ギリギリに約束の時間に到着しました。

 彼女に会う早々、「もう、ほんと、来るの大変だった~~でも、あなたがストライキしてなくて、ほんとによかった~~」と言ったら、「ストライキするんだったら、さすがに私は連絡入れるわよ・・歩いてきたの?」と言われて、ホッとするやら、疲れがどっと出るやら・・。

 この日のデモは内務省の発表によると、フランス全土で128万人、CGT(労働組合)の発表によると350万人を動員したとされていて、いつもこの両者の発表する数字は大きく異なるのですが、デモはどうぞ、ご勝手にと言う感じでも、こうして実害を被るストライキは勘弁してもらいたいと思うのです。

 私は、現在は、めったにこのような目に遭うこともないのですが、それにしても、こうした実害に遭うのは、リモートワークもできない弱い立場の人ばかり。学校なども閉鎖になって、小さい子供を抱える人々も大変な思いをしていると思います。

 現在のところ、どちらもあとに引く気配が全くなく、一体、これがいつまで続くのか? 実害に遭ったとたんに「この生産性のない抗議、もういい加減にしたら?」と思うのでした。

 しかし、とりあえずは、今回のストライキは3日間連続とかで、国を行き詰らせることが目的なのだそうで、どういう理屈なのか少々理解に苦しむ気もしますが、今回ばかりは全国民に共通する「年金改革問題」です。

 これにどうやっておさまりをつけるのか? 日本ならば、無理やり政府が押し通しそうなところ、フランスでは、そうはいかないのです。


ストライキ 年金改革


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