2023年3月19日日曜日

3夜連続デモ デモと暴動の境界線

  


 あくまで個人的見解ですが、政府の提案している「年金改革」は残念ながら必要なことで、間違ったことを言っているのではないと思っています。

 フランスは日本ほどの少子高齢化ではないにせよ、フランス人は意外にも、長寿国であり、平均寿命も82歳を超えており、寿命は依然よりも長くなっているわけで、単純に考えても年金受給年月が長くなっているわけで、単純に考えても、それだけでも年金制度を圧迫していることは明白で、長生きするようになった分だけ、余計に働かなければならなくなるのは、当然のことなのです。

 しかし、正しいことでも、やり方を間違えると、それが通らなくなってしまうのだと、まざまざと見せつけられているような気がします。

 そもそも今期のマクロン政権は与党の議席数が議決権に達しておらず、そこが災いの始まりでした。そうでなければ、49条3項(採決せずに法案を通す)を使う必要もなく、議会で正当な採決を行い決定されていたことなので、ここまで国民を怒らせる結果にはならなかったはずです。

 しかし、元をただせば、与党の議席数が達していない時点で、マクロン政権には暗雲がかかり始めていたのです。

 現在は、もはや年金改革問題以上に「49条3項」の強制執行に対する抗議の声が高くなり、昨日行われた世論調査によると80%以上の国民が「49.3」の執行に反対しているとのことで、さすがにこれは法律にのっとったこととはいえ、この国民の声を無視するのには、無理があります。

 パリでは3日連続のデモが大荒れに荒れており、パリ警察は2日間デモの集合場所に使用されていたコンコルド広場でのデモを禁止したため、今度はパリ13区の「PLACE D'ITALIE(プラス イタリー)」を中心に4,000人以上が集結し、ゴミ収集業者のストライキのために山積みになっているゴミ箱をはじめとして、自転車、車、廃材などに火がつけられ、トラムの走っている道路を封鎖するために道路を遮断するようにゴミ箱を並べて燃やすという悪質なものに発展しています。


 また、デモ隊はシャトレ・レアールの駅の駅ビル内までに突入し、駅ビル内で噴煙があがる騒ぎにもなってしまったようです。

 あちこちに炎が立ち上り、火花が飛び散り、催涙ガスが立ち込め、放水車が出動し、相当数の警察官と憲兵隊が出動する中、大声をあげて行進しつづけるデモ隊とを見て、私は「暴動」という言葉を忘れていたけど、もしかして、これって「暴動」なの?とちょっと、自分でも動揺を感じました。

 公共交通機関のストライキも続いてはいるものの、このデモの異常な数の動員のため、普段は、自動運転のためにまず、ストライキで運転が止まることのないメトロ1号線なども、警察の命令により、8か所の駅が閉鎖されるという異常事態が起こっています。

 ここまでくると、これが一体、何日続くのかはわかりませんが、全国の組合が組織する大々的なデモ・ストライキは23日(木)に予定されており、この日のストライキやデモの規模が相当なものになるのは不可避であるような雲行きです。

 フランスでは、「デモの権利」は非常に重く尊重されているものの、あくまでも、デモを行うためには、その地域の許可を申請してのうえでのことなのですが、もうその許可なしのデモを止めきれないギリギリの状態で、デモと暴動の境界線はどこにあるのだろう?と考えてしまうくらいです。

 しかし、一方では、与党がガッチリ議決権を握っている日本では、やけにすんなり重要なことがどんどん決定されていく様子にも、フランスのこの暴動とは別の意味で底知れない不気味さや不安を感じているのです。


年金改革デモ 暴動


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