2023年3月4日土曜日

冷凍ピザ食中毒死亡事故から1年 ブイトーニのコードリー工場閉鎖へ

  


 ちょっと見るだけでもおぞましいピザ工場から生産された大手食品メーカーのピザから、溶血性尿毒症症候群(HUS)と毒素産生性大腸菌(STEC)が検出され、75件の食中毒症状を発症したと報告され、そのうち2人の子供が死亡した事件から、約1年が経過しています。


 この事件により、このピザを製造していた工場は生産を一時停止し、「過失致死罪、14人に対する過失傷害罪、人や動物の健康を害する製品に関する偽装、食品に使用される食品が偽造または破損して健康を害する展示または販売、健康を害する製品を市場に出して他人を危険にさらす容疑」として捜査が進められてきました。

 それから、かなりの時間が経って後、昨年12月には、ようやく衛生管理の改善や調理済みの生地を使用したピザのラインのみという条件付きで、一部の生産再開の許可が下りて、生産を再開していたようですが、ここへきて、当該工場が閉鎖されることが発表されています。

 このピザはイタリアンの食材を扱っているBuitoni(ブイトーニ)のブランドの大手食品業界ネスレ・フランスの冷凍ピザ工場での話で、このたび、ネスレ・フランスがフランス北部コードリーにあるブイトーニピザ工場の操業を停止することを決定したものです。

 これは、この食中毒事件のスキャンダルのために冷凍ピザ市場は1年で20%減少したことによる売り上げ減少によるものとしています。

 この工場は当事者なわけで、この冷凍ピザの消費が減少したのは、そもそもこの会社のスキャンダルなのですから、仕方ない話でもあり、これに影響された同業他社は全く大変なとばっちりを食ったことになります。

 ネスレの広報によると、「2022 年 12 月に最高の状態で工場を再開できるようにあらゆる努力を払ったにもかかわらず、受注見通しの悪化により、ネスレ フランスは対応を余儀なくされました」とのことですが、これは、事件後の被害者への対応等、危機管理にも大きな問題があったためでもあると私は思っています。

 この事件の後、実際に被害に遭った子供の家族などからは、ブイトーニ、ネスレの塩対応の様子が伝えられており、再三の問い合わせにも、なかなか連絡がとれなかったり、ようやく連絡が取れても、会社からの十分な説明が得られなかったり、被害者へのお詫びは、ブイトーニのピザを買える金券が送られてきただけだった・・とか、信じられない誠意のなさがいくつも伝えられていました。

 この事件は結果として、民事事件と刑事事件の両方で裁判が行われていますが、調査が終わらないということで、裁判は再三におよび延期されているのも被害者の怒りをさらに膨らませているようです。

 この被害者の一人である少女は、この冷凍ピザを食べた後、嘔吐と下痢に苦しみ、緊急治療室で 3 週間昏睡状態に陥り、2 回の心停止に見舞われ、2 か月間入院。その後も彼女は後遺症に苦しみ続け、心臓の薬を飲み続け、週に3回理学療法を受けています。 

 医師によると、彼女はいつか腎臓を失うと宣告されていますが、すでに、感覚や運動能力が失われています。

 民事レベルの裁判においては、すでにネスレに対して身体的傷害の補償として、20,000ユーロの支払いが命ぜられていますが、将来のある子供がこれだけの障害を負って20,000ユーロとは、大企業ネスレにとって何の痛みもない20,000ユーロという金額も信じられない話です。

 また、フランスでは業績悪化という理由があるにせよ、工場を閉鎖したりするのは、そう簡単な話ではなく、今回の工場も180人の従業員が雇用を失うわけで、労働組合も国も黙って、ハイソウデスカ・・と従うわけではありません。

 とりあえず、ネスレ側は、この工場閉鎖が正式に決定するまでは、従業員の給与は補償すると発表していますが、この工場のあるコードリー市の市長は、「ネスレは、世界中で数十億ユーロの利益を上げているグループであり、責任を負い、代替生産を見つけてもらいたい」と、この従業員が引き続き就業できることを望んでいます。

 ネスレ フランスは、2,000 以上のサンプルを採取し、生産ラインとその環境 (壁、グリッドなど) で細菌を検出しなかったことを示していましたが、実際には、2021 年 10 月から 2 月までの間に生産された冷凍ピザで細菌が検出されていました。

 過去に何度か警告があり、従業員からの非難の証言の後、清掃や衛生状態なども問題視されてきました。

 今日、「非自発的殺人」の捜査の一環として、北部のコードリーにあるブイトーニ工場と、オー ド セーヌ県のイシ レ ムリノーにあるネスレの本社の捜索は続いていますが、まだまだこの事件が解決するのには、時間がかかりそうです。

 ネスレ フランス社長は 昨年7 月、被害を受けた子どもたちの家族に「お詫び」を述べ、「被害者支援基金」の創設を発表していますが、食品会社としては致命的な食中毒事故に対しての対応を、この会社はちょっと甘くみていたような気がするのです。


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