ブリヂストンがフランス・べチューン工場閉鎖を発表して、1週間が経ちました。
ブリヂストンの発表同日にフランスのボルヌ労働相とパニエリュナシェ経済閣外相は連名で、「ブリヂストンは、欧州内の別の工場のためにべチューン工場への投資を長年怠ってきた、工場閉鎖は全く同意できない」と発表し、その姿勢を継続し、マスコミを巻き込んで、なんとか、工場閉鎖を回避する圧力ともいえる態度で従業員を守ろうとする姿勢を示しています。
彼らが偽善ではなく、このようなことを主張し続けるのであれば、正気を疑いたくなるような内容です。
ブリヂストンのこの工場は、自動車用の小口径タイヤを生産しています。10年間で40%生産性が低下したこの工場は、ヨーロッパの中でも最も効率の悪い工場なのです。付加価値の高い大口径タイヤを製造するための投資をこの工場ではなく、同社がポーランドの工場に行ったことをフランス政府は避難しています。
そして、これから、フランス政府の援助を受けて、工場に再投資し、人を再教育し、工場存続することを要求しています。
普通、会社が投資を考える場合、最もその効率の良い場所を選ぶのは、当然のこと、フランスのべチューン工場が投資対象に選ばれなかったのには、それなりの理由があってのことです。
ヨーロッパのタイヤの品質は、格安なアジアの製品には決して劣ることはないなどと言っていますが、実際に売れないのだから、仕方がありません。極端に上質な製品は別として、この工場の製品が格段、アジアで作られる製品に比べて圧倒的に秀逸なものであるわけでもなく、コストや生産性を考えれば、工場は、より安くより良い製品を作れる場所にシフトしていくのは、当然のことです。
ヨーロッパのタイヤ産業は、長いこと窮状に瀕しています。フランスでは、過去10年間に、Clairoixにあるコンチネンタルの工場、アミアンにあるGoodyearの工場、昨年には、La Roche-sur-Yonにあるミシュランの工場が閉鎖しており、会社全体としての生き残りは必死な問題です。
ブリヂストンは、フランスで規定されているとおりのペナルティとも言える莫大な金額を従業員に支払い、従業員に対しても誠実に対応すると言っているのです。
フランスの政府が一時凌ぎのために、この将来性のない工場に、国としてまで投資すると、正気で言っているのであれば、まことにヤバい国であるとしか言いようがありません。
ここで引き合いに出すことではないかもしれませんが、カルロス・ゴーンが日産を再建した時にした人員削減は、数万人単位の削減でした。数でのみ比べられることではありませんが、863人の工場の閉鎖に政府までも乗り出して抵抗するフランスの資本主義とは、何なのでしょうか? これは、資本主義ではなく、全く自分勝手なご都合主義でしかありません。
しかし、これが、あくまでも政府、政党の偽善であり、人気取りに利用していると見ている人もいます。これが、偽善で、あくまでポーズであるとしても、それはそれで、なんとも汚いやり方です。
多くのマスコミを引き連れて、大臣が二人も現地に及んで、労働者を守る声明を発表して、ブリヂストンに圧力をかけていますが、これは、「ひとたび、フランスで会社や工場を作って、労働者を雇った場合は、ヤバいことになる」と全世界に向けて発信しているようなものです。
こんなことを続けていたら、今後、外国企業は、フランス進出には、二の足を踏むようになるでしょう。
<関連>
「ブリヂストン・フランス・べチューン工場閉鎖 ①」
https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/09/blog-post_17.html
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