私は、今日まで、ブリヂストンの工場がフランスにあることを知らず、娘は、ブリヂストンが日本の会社であることを知りませんでした。「だって、日本語っぽくない名前じゃない?」という娘に、創業者の石橋さんという人の名前をとって、STONE BRIDGEの語呂をよくするために、前後をひっくり返してできた名前らしいよ・・と言うと、なるほど・・と彼女も納得していました。
つまり、ブリヂストンは、どこの国の会社かどうかは別として、その名前は、フランスでも多くの人に知られている会社なわけです。
ブリヂストンが欧州内の乗用車用タイヤ市場の収益構造悪化のため、フランス・べチューン工場を閉鎖することを発表したことが、トップニュースで扱われているのを見て、工場の閉鎖そのものよりも、私は、ブリヂストンがトップニュースで扱われていることに驚いたのです。
乗用車用タイヤを生産するこの工場の従業員は863人、フランスのボルヌ労働相とパニエリュナシェ経済閣外相は連名で、「ブリヂストンは、欧州内の別の工場のためにべチューン工場への投資を長年怠ってきた、工場閉鎖は全く同意できない」と発表しています。
これを聞いて、改めて、私は、フランスで労働者を雇うということは、大変なリスクだと思いました。ブリヂストンは、べチューン工場の操業継続のためにあらゆる可能性を検討した結果、競争力を維持しながら、同工場の操業を維持することは困難であると発表しています。
フランスの労働組合の強さは、ちょっと経営者が気の毒になるレベルで、コロナウィルス騒動後、多くの会社が人員削減や工場閉鎖に陥っていますが、その度に組合の抵抗は、相当なもので、そもそも、平常時ですら、気に入らないことがあるとすぐにデモやストライキといった権利が認められ、その権利を横行して反発するのですから、経営者側から見れば、フランスの労働者ほど使いにくいものは、ないんじゃないか??と思ってしまいます。
それでも、ブリヂストンは、タイヤ部門において、2005年には、シェアトップのフランスのミシュラン社を抜き、以来、世界シェアトップを貫いているので、今回閉鎖されるフランスのべチューンとて、良い時期もあり、メリットもあったのでしょうが、同工場の生産性は、そもそもコロナ以前からの過去10年間で40%も減少しており、ヨーロッパに10ヶ所ある同社の工場の中でも最低なのだそうです。
ブリヂストンは、この工場閉鎖に関わる人員について、誠実な対応をすることを約束していますが、そもそも、フランスでは、会社の都合により(業績悪化等)、社員を解雇するためには、契約形態や勤続年数にもよりますが、大変なお金がかかるのです。
それでもなお、工場閉鎖を決めたのには、おそらくコロナウィルスが引き金を引いたことには違いありませんが、そうでなくとも、フランスでフランス人を雇って継続するメリットがないわけで、もともと、人件費もアジアなどの諸外国に比べて安いわけでもなく、かといって、生産性よく働くわけではもなく、バカンスだけはたっぷり取り、何かと言えば、デモだストライキだと騒ぐフランス人を雇って工場を続けて良いことは、何もなく、その上、国民はドケチで、買うのは、中古車がメイン。少しでもダメージを少なく食い止めるために、工場閉鎖は、もっともな選択だと思われます。
そもそも業績悪化のために会社が工場を閉鎖すると下した決断に労働相や経済閣外相が工場閉鎖は認められないなどというのもおかしな話です。会社自体も生き残りをかけて必死なのですから、会社は労働者への慈善事業ではないのです。
いい加減、あまりに労働者ファーストに偏ったフランスのやり方は、経営者サイドから見れば、生産性が悪く、デメリットばかりが目立ち、このままでは、国際競争の中では、置いてきぼりを食い、多くの国のフランスにある工場等が撤退することになりかねないのではないかと思っています。
ちなみに全然、無駄な情報ですが、フランス人はブリヂストンをブリジェストンという人が多いです。
<関連>
「ブリヂストン・フランス・べチューン工場閉鎖 ②」
https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/09/blog-post_22.html
「権利を主張するわりには、義務をちゃんと果たさないフランス人」
https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/07/blog-post_61.html
「フランスの雇用問題」
https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/09/blog-post_6.html
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