警察はおろか、軍隊が出動する光景は、パリでは見慣れた光景になりました。テロ・デモの暴動化・コロナウィルス・・その度に警察、消防、救急、軍隊とが出動し、街中に物々しいテープが貼られ、厳戒態勢が敷かれるのがさほど珍しくなくなっていることにパリ(フランス)が異常な状況であることを実感させられます。
25日(金)の昼ごろ、パリ11区にあるシャルリー・エブド(風刺週刊紙)の元本社前で、休憩中であった数名がナイフで襲われ、うち2名が重傷を負うテロと思われる事件が起こり、フランスは、大騒動になっています。
パリでは、社員が建物の前で数人がたむろして、休憩時間にタバコを吸っている様子は、どこでもよく見かける光景です。そんな平和な時間に、突如、訪れたこの事件にフランス中が震撼としています。
3週間ほど前から、2015年に起こった同時多発テロ・シャルリー・エブド本社襲撃事件の共犯者とされる被告らの公判が始まっており、毎日のようにその様子が報道されていました。
そんな報道を、私は、「もう5年も経ったんだ・・今ごろやっているのか・・フランスの裁判もずいぶんと時間がかかるんだな・・」などと、のんきに見ていましたが、この裁判の報道から、被害者、加害者側ともに様々な感情を揺さぶられている人が多くいたことは確かなようです。
今回の事件の実行犯の一人は、犯行から1時間以内にバスチーユ広場付近で、もう一人は、1時間半後にパリ市内のメトロの駅付近で逮捕され、この事件に関わったと見られている5人が、別の場所で身柄を確保されています。
この騒ぎに事件の起こったパリ11区では、近隣の125校・32000人の生徒が昼過ぎからロックダウン状態に・・近隣の店舗も閉鎖され、緊迫状態に陥りました。
主犯は、18歳のパキスタン出身の男性と33歳アルジェリア人の男性で、被害者の身体だけでなく、頭から顔にかけてナイフで叩き切ろうとしており、その犯行の異常さをあらわしています。単に命を狙うならば、顔を切りつける必要はなく、そこには、風刺画でイスラム教徒を怒らせたシャルリー・エブドへの何らかのメッセージ性があったのではないかと私は勝手に思っています。
しかし、シャルリー・エブド社はすでに2015年のテロ直後に移転しており、被害に遭った人もシャルリー・エブド社の社員ではなく、その場所が犯人にとってシャルリー・エブド社のシンボル的な意味を持っていたというだけで狙われたのかは現在のところは不明です。
また、犯人の男性は、赤いスポーツシューズに黄色いTシャツという、これでもかというほどの人目に付きやすく、印象に残りやすい服装で、逃げ切るつもりがなかったのか?計画的な犯行としては、まことに杜撰な感じなことも不可解です。
昨日は、コロナウィルスの感染が急激に増加しているフランスで、コロナウィルス関連のニュースがほとんど消えた異常な1日でした。
今後、しばらくの間は、恐らくパリはテロ警戒体制に入り、少しのことでもいちいち大騒ぎになるのではないかと思っています。今回は、5年前のテロのような銃や爆弾を使った大規模なものではありませんでしたが、背景等がわからないため、当分は、緊迫した状況になることは間違いなく、昨夜も警察のサイレンの音が途切れることはありませんでした。
5年前のテロの直後は、金曜日に事件が起こって、土日は怖くて多くの人が引きこもり、つまりはロックダウンのような状態、月曜日に仕事に行く際には、なんとなく怖くてドキドキしたのを覚えています。
事件後、しばらくしてから、仕事中に会社の入っている建物に、数人の警察官が踏み込んできたと思ったら、会社の前のバス停に停車しているバスの中に不審物があるので、今から出来るだけ遠くに走って避難してください!と言われて、同僚と共に必死でパリの街を走った恐怖をまざまざと思い出しました。
コロナウィルスの蔓延に加えてテロの恐怖、全く性質の違う恐怖が同時に存在するフランスは、どうなってしまうのだろうか?と底知れない問題を抱えたフランスの現状を思います。
華麗なパリのイメージとはかけ離れた現実です。
コロナウィルスによる再ロックダウンだけでなく、テロによるロックダウン状況が起こることは、想定外でした。
<関連>
「フランスのテロの報道と対応」
https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/08/blog-post_29.html
0 コメント:
コメントを投稿