2022年9月30日金曜日

定年退職年齢延長反対と賃上げ労働条件改善のデモ・ストライキ

  


 マクロン大統領が、「誰もがもっと長く働かなければならない」として、法定退職年齢の引き上げや、年金の拠出期間を43年に延長することを提案したことから、フランスでは、大規模なデモが巻き起ころうとしています。

 29日には、パリだけでも少なくとも4万人が集結し、この定年退職年齢引き上げと賃上げ・労働条件改善を訴えるためのデモを行いました。フランス全土では、少なくとも200ヶ所で25万人を動員したなかなか大規模な動きです。

 現行ではフランスでは、法定退職年齢は62歳と定められていますが、これを2023年には62歳4ヶ月、2024年には62歳8ヶ月、2025年には63歳、そして最終的に2031年には65歳にまで延長する計画です。

 これには、おまけがついていて、定年退職年齢より1年早く退職すれば、年金支給額からマイナス5%、1年長く継続すればプラス5%とペナルティーとボーナスの両方が提示されています。

 しかし、考えてみれば、どちらにしてもそのプラス・マイナスの基準となる年齢が引き上げられる以上、これまでの見積り?どおりに退職しようものなら、マイナスにされてしまうわけで、年金支給額をプラスにしようと思うならば、これまでよりももっともっと働かなければなりません。

 年金の計算はフランス人の趣味なのか?と思うほど、年金についてはシビアなフランス人。

 以前の職場にも退職を数年後に控えた同僚などは、暇さえあれば年金の計算をああでもないこうでもない・・と話している様子を私は冷ややかな目で眺めていました。(今さら、計算したところで変わらないでしょ・・っと思って・・)

 しかし、これくらいフランス人は年金を受け取れる日を心待ちにしており、今は亡きフランス人の夫も初めて年金の書類が届いた時には(まだまだ定年退職はず〜っと先のことだったにもかかわらず)ものすごく喜んでいたのを、これまた、ちょっとしらけた気分で見ていました。結局は彼は年金をもらう年齢になる前に亡くなってしまったので、彼が亡くなった時には、「あんなに年金、楽しみにしていたのに・・」と、思ってしまいました。

 もともと夏のバカンス明けには行われる予定だったデモ・ストライキは、前例のないインフレ(8月は5.9%増)に直面して賃上げを求める当初のスローガンに、この定年延長・年金問題が加わり、さらにヒートアップしています。

 インフレだ、節電だと不安定な情勢の中、ただでさえストレスフルでイラつくことの多い現在、だからこそということもあるのでしょうが、このうえ定年退職年齢延長、「もっともっと働け!」と言われて、黙って引き下がるフランス人ではありません。

 今回の定年延長問題には、すべての全国労働組合組織(CFDT、CGT、FO、CFTC、CFE-CGC、FSU、Solidaires、Unsa)が動員をかけており、SNCF(フランス国鉄)やRATP(パリ交通公団)などの公共交通機関をはじめ、教職員組合なども部分的に抗議活動に参加し、ストライキも起こっています。

 「賃上げ要求!」「定年延長反対!」などとともに、「人生を無駄にして稼ぐのはやめよう!」というプラカードには、「長く仕事をし続けるのは人生の無駄・・そんな年齢まで働いていては、人生を楽しめない!」というフランス人の本質も見えて、なるほど・・と思いました。

 自分自身については、もともとフランスで仕事を始めた年齢が遅く、年金の拠出期間を43年間などと言われては、超高齢になるまで働かなければならないため、もともと問題外の話です。

 日本にしても、フランスにしても年金についての制度はどんどん変わり、どちらにしてもいいようには絶対に変わりようがないので、思い悩むのもバカらしく、別の手段を考えるようにしています。

 しかし、この問題、政府スポークスマンのオリヴィエ・ヴェランは、年金について「この改革は、大統領プログラム全体を発展させるために不可欠だ!」と強気に語っていますが、さっそく野党からの反発も強く、「年金支出は2027年までGDPの14%未満にとどまる。2021年には、わが国の年金制度は9億ユーロの黒字になることさえある!」などと言われて、過半数割れしている政権が押し通すことができるかどうか、節電で暖房も控えなければならない冬が熱いことになるかもしれません。

 パンデミック前まで長きに渡り続いていた「黄色いベスト運動」のように、フランスのデモは経済活動の妨げになるケースにまで発展する危険があり、今後、どのように国民と政府が戦っていくのかが注目されます。

 しかし、「人生を無駄にして稼ぐのはやめよう!」とは、さすがフランス人、痺れるな〜〜。


フランス定年退職年齢延長65歳へ


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2022年9月29日木曜日

パリでお気に入りの生ハム屋さん ヴィアンダス デ サラマンカ VIANDAS de SALAMANCA

 


 私は子供の頃から、断然、和食党だったので、特にフランスに来て、食事に期待はしていませんでした。むしろ、パリは日本食材を扱うお店が他の海外都市よりも多いので、そういう面ではありがたいな・・くらいに思っていました。

 しかし、それとて、どこででも簡単に手に入るわけでもなく、最近こそ、普通のスーパーマーケットでも日本食材は少しずつ置かれるようになり、お寿司などはどこのスーパーでも置いてあるようになったものの、そのクォリティーと値段のバランスはどうにも悪すぎて、とても食指がうごくものではありません。

 となると、日ごろ簡単に手に入るものの中で美味しいものを探し出すわけで、フランスで美味しいと再確認したのは、パンとバター・チーズ、チョコレート、ケーキ・・、そしてもう一つが生ハムです。

 生ハムは、日本でも食べたことはありましたが、私にとっては、あまり身近な食品でもなく、それほど価値を見出してもいませんでした。

 しかし、フランスに来て以来、目醒めてしまったのが生ハムで、シャルキュトリー(Charcuterie)と呼ばれるソーセージ、ハム、サラミ、パテ、テリーヌなどが食文化の大きな位置を占めるフランスで、このシャルキュトリーの中で私が最も魅せられたのは生ハムだったのです。

 普通のスーパーマーケットにも生ハムはたくさん置いてありますが、一旦、深みに入り出すとより美味しい生ハムを求め始めるのです。

 そして、その結果、現在のところ、私のお気に入りの生ハム屋さんは、サンジェルマンデプレにあるヴィアンダス デ サラマンカ VIANDAS de SALAMANCAというお店で、正確に言えば、これはフランスのお店ではなく、スペインの生ハム屋さんなのですが、ここは生ハム好きにとっては至福のスペース。



 お店の外からも見えるショーケースには、生ハムをふんだんに使ったサンドイッチに興奮させられ、店内に入ると、生ハムの原木が壁一面に広がる絶景が・・。

 


 もちろん、その場で切ってもらって買ってくることもできますが、あらかじめ切ってあって、真空パックになったものもたくさん並んでいます。

 嬉しいのはお店のお兄さんがとても親切で、いろいろ質問すれば、なんでも教えてくれることで、これは、普通生ハム用の豚ちゃんは、2歳の豚ちゃんで、それからの熟成期間が2年から2年半、3年ものがあるそうで、また豚の種類もイベリコ豚とイベリコ豚と他品種とのハーフ?もの・・なんていうのもあるそうで、また餌もベジョータ(どんぐり)を食べて育った豚ちゃんとそうでないもの、機械でスライスしたもの、手でスライスしたもの・・それぞれに全て値段も違います。

 


 午前中の比較的早い時間に行くと、準備中で食べ比べをさせてくれることもあります。色々あるグレードの中で、一体、どの程度違うものなのか? 一つ一つの生ハムについて、聞きながら、美味しいとはいえ、なかなかなお値段の生ハムに少しでも安くても美味しいものがいい!と思って、一番安いパックに「これは?」と聞いたら、「あぁ〜それは、サンドイッチ用だから・・」と軽くいなされ、「その言い方は、まるでサンドイッチ用は正規要員?として認められていないみたいじゃない!サンドイッチも十分に美味しいのに・・」と思ったのですが、試食させてもらってみると、幸か不幸か、明らかに味わいは格段に違い、これだけ違えば、やっぱり美味しいのが欲しい・・と納得させられてしまうのでした。

 高級食材にもかかわらず、このお店で他にお客さんがいなかったことはなく、何やら興奮気味にやってきたマダムが「もう、ここに来ると、全部欲しくなっちゃうわね〜」と言いながら、私のようにウダウダ悩むこともなく、「これとこれと、あれね・・」と言いながら、ポンポン買い物をしていくのも、場所柄かな?と思ったりもします。

 


 私もそんなに頻繁にここで買い物をしているわけではありませんが、しかし、近くに行けば、やっぱり覗きたくなってしまうお店なのです。

 ここの生ハムを買って来たときには、十分に味わうために、あらかじめ冷蔵庫から出して常温にしてお皿にならべ、集中して味わいます。風味、味わい、なめらかな舌触りともに最高で、あぶら身の部分でさえも決して捨てられない(むしろ、脂がおいしくて感動する)感動に包まれます。思わず目を瞑って、うっとりと味わってしまいます。

 ちなみにこの間、このお店に行った時もいろいろ生ハム話を聞いたあと、ちなみにここで一番高級な生ハムの原木は?と聞いてみたら、36ヶ月もののイベリコ豚(ベジョータ)で、1本1,000ユーロだそうです。

 1,000ユーロ・・と聞くと、まずは日本行きのチケット料金を思い浮かべる私ですが、「なるほど、今だったら、日本に1回行くよりずっと安いな・・」と思ってしまったのでした。

 

店頭にいる目印の豚ちゃん

⭐️VIANDAS de SALAMANCA   150 Blvd. Saint Germain 75006 Paris            


ヴィアンダス デ サラマンカ VIANDAS de SALAMANCA


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2022年9月28日水曜日

体調不良で一気にダウン・・インフルエンザかコロナか? まずはコロナの検査から・・

 

薬局内の一角にある小部屋の検査用スペース


 先週は、日本にいる娘がコロナウィルスに感染して、高熱が出たり、咳が止まらなかったすると聞いて、心配な1週間を過ごし、いざという時には、日本にかけつけようか?などと、私にしては珍しく、毎日、娘に電話をして、安否?の確認をしたりしていました。

 しかし、まあ、幸いにも彼女は順調に回復し、その間、東京都からの食糧支援物資などを送ってもらったり、何より、隣に住んでいる私の従姉妹が食事をピンポンダッシュのように届けてくれたりしてくれたようで、まだ全快とはいかないまでも、無事に隔離期間を終了し、ヤレヤレ・・どうやら、私が日本に出向くまでもないな・・と安心したところでした。

 それが、今朝、起きたらどうにも具合が悪い私、明らかに熱があり、頭も痛くて、全身がだるく、身体のふしぶしが痛くて、一気に病人になっていました。 我が家には、娘が料理用体温計・・などというわけのわからない温度計すらなく、ただひたすら横になっていたのです。

 具合が悪い時は、たとえ、横になっていたとしても、どうにも身の置き場のない感じがするもので、朦朧としながら、うとうとしていたのです。

 え〜〜??と思いましたが、仕方がない・・とりあえず、ドリプラン(フランスで最も一般的な解熱・鎮痛剤)を飲み、ビタミンCのタブレットを口に放り込んで、ひとまず。もう一寝入りすることに・・。

 数時間後に再び目覚めて、それでも、全く良くなった感じはなく、しかし、ふと、もしかしたら、これはコロナかもしれないと思い至りました。まさか日本にいる娘から感染するはずもありませんが、このところ、フランスも感染者数は上昇傾向・・まさか・・と思いましたが、体調が悪いのに出かけるのも辛いのですが、もし感染していたら、私がここ数日会った人に連絡しなければいけない・・と思い、重い身体を引きずって、隣の薬局へ。

 せめて、薬局が家のすぐ近くにあり、検査をすぐにしてくれることは救いです。

 フランスでは、現在もワクチン接種の証明書と国民健康保険のカードがあれば、予約なしに無料で検査をしてくれます。パンデミック以来、コロナの検査を受けるのは、4〜5回目くらいでしょうか?これまで陽性になったことは一度もありません。

 私は7月の段階で2回目のブースター接種をしているとはいえ、感染する可能性もありえるので、検査をしてもらいました。

 検査は数分で済み、15分後には、うやうやしく検査結果の証明書が携帯に送られて来ます。かなり正式な書面で、こんなのいちいち必要?と思いましたが、まあ良いです。

 検査をしてくれた薬剤師の人に「症状はあるの?いつから具合悪いの?」などと聞かれて、「今朝から・・」と答えると、もしかしたら、検査するのは、タイミング的にちょっと早いかもしれないから、数日経ってもまだ具合が悪いようだったら、もう一回検査をした方がいいかもしれないですよ!」と言われて、とりあえず、家に戻って結果を待つことに・・。

 以前に検査を受けた時には、感染者追跡アプリに「あなたは感染者と接触しています。すぐに検査してください」というメッセージがきて、検査をしたので、別に自分が具合が悪かったわけではありません。

 結果が送られて来て、その結果を見るのもけっこうセキュリティが頑丈で、別途送られてくるパスワードを入力しなければ、見れずに慌てている私にはもどかしい気持ちでした。

 結果は陰性で、ひとまず、ホッとしたものの、これが続けばまた検査か・・とちょっとウンザリしました。

 コロナではなく、インフルエンザなのかもしれませんが、もう少し時間が経たないとわかりません。

 先月に、インフルエンザのワクチン接種の招待状が来ていて、去年、ワクチンを打って、結構そのあとにしんどい思いをしたので、ちょっと躊躇っていた矢先のことです。

 年々、体力には自信がなくなっていますが、ここで、ガンと釘をさされた気分です。

 それにしても、今後も体調を崩すたびに、「えっ?もしかしたら、コロナかも?」と疑わなければならない時がまだまだ続くのかと思うとちょっとウンザリします。


コロナウィルス感染 インフルエンザ


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2022年9月27日火曜日

ドクターストップの制度にメスが入る リモート診療でズル休みが増えた

   


 フランスの病欠には、医師のドクターストップの書類があれば、3日間の待機期間を経て(何のための待機期間なのかは不明)4日目からは、病欠の間の日当が国民健康保険から補償されます。

 そのため、有給休暇を無闇にやたらに消化してしまいたくない人は、ズル休みのために、このドクターストップの制度を利用する人もけっこういるようです。

 もちろん、本当に深刻な病気で長期間病欠しなければならない時、また子供が病気の場合などにも子供の看病のためにこのドクターストップの書類を書いてもらうこともできます。特に病欠が長期間に及ぶ時などは、経済的にも生活が脅かされることになるし、無理して子供を置き去りにして仕事に行かなくても済むために、とても優しい人道的な制度でもあります。また、このあたりは、きっちりしていて、この病気のために休んだ日数は年金換算の際の日数からマイナスされないことに規定されています。

 しかし、やたらとこのドクターストップを安売りしている医者もいたりして、このズル休みの常習犯は、この書類を書いてもらうための医者をマークしていたりもします。基本的に雇用者は病名を問いただしてはいけないことになっているので、これはますます増長されてしまいます。

 そして、これが、さらにパンデミック以来、医者にわざわざ出向かなくても済むリモート診療(遠隔診療)が浸透し、また政府も感染対策の一環として、このリモート診療に関しても健康保険で全面的にカバーすることを決定し、このリモート診療が拡大するとともに、このズル休みのためのドクターストップをカバーするための保険申請が爆発的に増加し、昨年には、この金額はほぼ1億ユーロにまで達しています。

 わざわざ出向かなくてもよくなったために、ズル休みのための病欠のための書類を与えてくれる医者を見つけるまで、何度もオンラインで相談する人が増え、主治医(かかりつけの医者)以外が与える病欠申請が爆発的に増加しているのです。

 この現状を受け、政府は、「主治医(かかりつけの医者)以外のリモート診療による病欠申請には、健康保険は適用外になり、補償金は支払われない」ことになり、また、医者のサイドに対しても、「リモート診療が全体の診療の20%を超えてはならない」と規定されることになりました。

 このような弱い立場の人を援助するための社会補償金のような制度には、逆にそれを利用して利益を得ようとする人が登場するのは、ついて回ることではありますが、せっかくのこの社会補償制度、このような詐欺まがいのことをする人のために、制度自体がなくなってしまうことになっては、本末転倒です。

 医者が発行するこの病欠のためのドクターストップの書類だけでなく、医者の書く処方箋の場合は、広範囲で薬が保険適用でカバーされるため、先日は偽の医者の処方箋を作って大量に薬を手に入れて国外に輸出して儲けていたというグループが摘発されています。

 私の場合、もう現在の住まいに引っ越して来て以来、家族ともども歩いて1分のところにいる女医さんのところにかかっていて、リモートよりも気軽に診てもらっていて、もう色々と説明しなくとも、ほぼ自分の体質や既往症や家族構成、仕事などについてもよく知っていてくれるので、絶体の信頼を寄せているので、安心しています。

 専門医にかかるにしても、一度、彼女に診てもらって相談してから行くようにしているくらいです。

 ずいぶん前に、職場で転んで怪我をして足に血栓ができた時など、「そんなに仕事を休めない・・」と焦っていた私に彼女に、「あなた、死にたいの?」と怒られて、1ヶ月間の病欠の書類を書いてもらったことがありました。

 それにしても、もともと1ヶ月は優にバカンスをとるフランス人、それでも足りずにズル休み・・みんながみんなやっていることではありませんが、それにしても、そのための補償の金額が1億ユーロを突破するとは、やっぱり、そんなに少なくはないのかもしれません。


ズル休み ドクターストップ リモート診療 アレットマラディ


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2022年9月26日月曜日

パリのクラック(ドラッグ)常用者の溜まり場からの立ち退き要求デモ

  


 週末はいつも、なんらかのデモが行われていることが多いパリで、今回のデモは、クラック(コカインを含んだ違法薬物)の常用者の野営地の立ち退きを要求するデモが行われていました。約500人のデモ隊が、パンタンとオーベルヴィリエ(セーヌ・サン・ドニ県・パリ近郊)の通りを行進し、警察当局にクラック使用者の避難と保護を求めて、1年以上も放置されたまま泥沼化している事態を非難しました。

 クラックは特にここ数年で、爆発的にフランス国内で拡大しているコカインの一種(中毒性が高く、喫煙可能なコカインの派生物)で、比較的安価に出回っていることから、貧乏人のドラッグなどとも呼ばれています。

 パリ北部(19区近辺)のスターリングラードの広場は、いつの間にか、このクラックの聖地?のような状態に陥り、このクラックの売買や常習者の溜まり場のようになり、スターリンクラックなど皮肉な呼び名をつけられたりしていました。

 このスターリンクラックを解体させるかに見えた、この19区の溜まり場から、このクラック常用者が強制的に移動させられた先は、さほど遠くない、歩いて移動できるほどの距離のところ。

 結局のところ、問題になる場所を移動させただけで、根本的な解決には、全くなっておらず、移動先のこの近郊地域では、300人から400人の薬物中毒者が暴力を振るい、売春を行い、治安を乱し、地域の商店が衰退し、公道は荒廃し、治安は悪化し、住民が不安な状態に陥っている状態を招いています。

 このクラック常用者の野営地の強制移動に関しては、一時、我が家の近所が彼らの移転先に選ばれそうになったことがあり、突然のパリ警視庁からの一方的な決定の発表に地域の住民が猛烈に怒って、反発しはじめ、市議会も大騒ぎで署名運動などが始まり、私も「え〜〜どうなっちゃうの??」と不安になりましたが、どういうわけだか、案外、あっさりと市議会とパリ警視庁の話し合いで解決し、我が家の近所への移転の話はあっという間に立ち消えになりました。

 そんなわけで、私にとっても、なんだか今ひとつ、人ごとのような気がしなくなった、このクラック問題ですが、結局、あちこちの候補地をたらい回しになった結果、結局、すでに多くの社会的困難を抱える労働者階級の貧しい人々の居住区におしつけられることになっていたのです。

 今回のデモは前回、移転先をおしつけられた地域の人々がおこしているデモで、まことに最もな訴えで、パリ警察庁も「これまで取られてきた措置は十分ではなかった」ことを認め、このクラック常用者の溜まり場を決定的に解体することを目的に、クラック・コカインの売買と消費に対抗するための行動計画をすすめることを確約しました。

 「人権の国フランスが、どうしてヨーロッパ最大の麻薬現場を放置しているのか?」とデモ参加者が訴えているとおり、このフランスのドラッグ問題は長く続いている深刻な問題です。

 単にドラッグ中毒患者を退去させるだけでなく、彼らには治療が必要ですが、彼らを食い物にしている売人のグループは彼らを逃すことを許さないのです。売人と警察のいたちごっこです。またこの密売人はドラッグだけでなく、銃などの密売にも手を広げているということで、思わぬ発砲事件にまで発展したりもします。

 パリ警察は8月に入ってから24人の密売人を逮捕し、5つのクラック「キッチン」(製造所)が解体され、警視庁の計画はすでに成果を上げ始めていると発表していますが、この警視庁と麻薬の密売人のいたちごっこは、とりあえず、溜まり場の中毒患者を専門施設等に保護して、隔離するなどしなければ、永遠に場所を変えて続くことになります。

 よく、フランスのクズは限りなくクズだ・・などと言われますが、まさに、このドラッグにハマって野営地で生活する人々などは、まさに最底辺の人々。フランスは弱い人に優しい国だと思いますが、このドラッグ中毒の人に対しては、現状では、救いの手を差し伸べてはくれていないようです。

 違法薬物に関しては、販売人に対しては厳しいものの、常用者に対しては、緩いというか冷たいフランスの対応・・しかし、たまごが先かにわとりが先か?のような問答にもなりそうですが、売る人だけでなく、買って使う人も絶たなければ、解決はしないのです。


パリ クラック デモ


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2022年9月25日日曜日

日本の外国人観光客入国制限解除について

   


 日本の岸田文雄首相はニューヨーク証券取引所で、「10月11日から日本は国境管理を緩和し、再びビザなし渡航と個人旅行を可能にする」と発表しました。たしか、今年の5月の日本への入国制限緩和を発表したのも海外でのことで、G7のためにヨーロッパを訪問中、ロンドンのシティでの講演でのことでした。

 わざわざ、海外訪問中にこれを発表するというのは、世界に向けての発信力を意識してのことなのでしょうか? しかし、前回の発表はほんとうに肩透かしをくった感じの内容でした。

 というのも、5月の段階では、「G7(主要7カ国)並みに円滑な入国がとなるようにさらに緩和していく」「日本は今後とも世界に対してオープンだ」「みなさん日本にお越しください。最大限のおもてなしをします。」と宣言したにもかかわらず、実際には、全くG7並みの円滑な入国どころではなく、外国人に対しては、グループ(団体)での旅行のみという外国人からしたら、意味のわからない制限付き、個人旅行の場合は、ビザの申請が必要という状態で、日本へ行くという人の話は、ほとんど耳にすることはなくなっていました。

 フランス人からしたら、バカンスに行きながら、旅行会社の見張り付きなどということは、考えられないことで、この規制緩和を楽しみにしていた人も、「グループ旅行なんて、ありえない・・だったら、日本へは行かない・・」というフランス人の話も聞こえてきていました。

 パンデミック前の2019年には、日本は約3,190万人という過去最高の外国人観光客の受け入れと、それに匹敵する経済効果(同年は4兆8000億円)を記録し、フランス人にとってもアジアで最も人気のある旅行先の一つになりました。

 世界第3位の基軸通貨である日本円は、悪い方向に進み、1年間でドルに対して30%以上価値が下がり、日本は、停滞している景気回復のためにも、この円安がメリットになる外国人観光客の入国制限解除によって、財政的な恩恵に預かることができるかもしれません。

 しかし、フランスの業界専門家は、日本の観光業界が復活するには、まだまだ時間がかかるという見方をしています。日本でのパンデミック前の国際観光客による経済的スピンオフのほとんどは、大量の中国人観光客が、日本の電気製品や化粧品を持ち帰るために多額のお金を落としたためで、中国国内ではコロナウィルス対策の大幅な規制が続いているため、当面は日本への大量渡航は見込めません。

 フランス(欧州)からの観光客に関しても、30%円安になろうとも、それ以上に航空運賃が大幅に値上がりしているうえに、バカンスシーズンはすでに終わっているという間の抜けたタイミングです。

 それに加えて、一応、フランスからの入国は、ブースター接種をしていれば(3回のワクチン接種の証明書があれば)検査は免除ということになっていますが、フランスで最も多くの人がブースター接種を受けたのは、昨年の12月から1月にかけてのことで、ほとんどの人がワクチン接種の有効期間が下がっている状態に加えて、フランスでは、気温の低下とともに第8波が始まろうとしている感染者が再び拡大しているタイミングです。

 それでも、気にせずバカンスにはでかけるフランス人ではありますが、これまで、ひたすら厳しいことを言って、外国人の入国制限をしてきた日本にとって、なんとも微妙なタイミングでの観光客の入国制限解除です。

 とはいえ、フランスをはじめとして、ヨーロッパのほとんどの国では、とっくに入国制限など、ほとんどないも同然の状態なので、日本もこれで5月の段階で岸田首相が宣言していたG7並みの円滑な入国を受け入れてくれることになりますが、どうにもやっていることに一貫性が感じられずに、今まで、何をしたかったのか?と、首を傾げたくなります。

 しかも燃料サーチャージがさらに値上げされた10月というタイミング。感染が持ち込まれることを過剰に心配しなくても、ヨーロッパからの観光客が簡単に復活することはないでしょう。


外国人観光客入国制限解除 


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2022年9月24日土曜日

娘がコロナウィルスに感染しました

  


 朝、起きると、とりあえず、携帯をチェックするのが朝一番の日課です。まあ、そんなに急用はないのですが、なんとなく一応、チェックしてからおもむろに、少しずつ目が覚めていくのを待っている感じです。

 娘が日本で就職してから、日本にいる娘とは、時々、連絡はとっていますが、そんなに毎日のようにではないので、朝、携帯のメッセージに娘から連絡が入っているのを見て、「へっ?なんだろう?朝から・・」(朝からと言っても、日本時間では朝ではないけど・・)と思ってメッセージをあけると、なんだか携帯のスクショ画面が送られて来ていて、すぐには読めずに、「ん??」となりました。

 メガネを手探りで探して、ふむふむ・・と見ると、その画面は、「検査結果通知書」と書いてあって、すぐ下には、娘の名前が書いてあって、実は、漢字で書かかれた娘の名前をこうして客観的に見るのは、初めてのことで、最初はなんだかピンとこない気がしたのも妙なものだ・・などと呑気に思いながら、マジマジとその書面を見ると、「検査結果・陽性」とありました。

 朝、寝起きということはあるものの、日本のこういう書類を久しぶりに見たこともあって、なんだかすぐには、ピンとこなかったものの、ようやく、「えっ??コロナに感染したの??」と気づくまでに、少し時間がかかったのもお恥ずかしいことです。

 しかし、おそらく、彼女が検査を受けたからには、なんらかの症状があったからに違いなく、感染してるけど、無症状・・というわけではないはず・・と思いいたり、すぐに電話しました。

 これまで、2年半以上、私も娘も一度も感染したことはなく、先日、彼女がパリに来いていたときには、友人の結婚式に参加したりして、かなり大勢の人にも会っていたし、日本に比べたら、マスクをしている人などほとんどいないフランスで、一応、気をつけてはいたにせよ、日本に帰国の際に検査を受けて、「これでも感染しないんだ・・」などと、本人もちょっとびっくりしていたくらいでした。

 それが、まさか、フランスよりもたくさんの人がマスクをしていて、みんなが気をつけている日本で感染するとは、彼女も思ってもみないことのようでした。

 「感染するなら、絶対にフランスで感染すると思っていた・・」と。

 数日前に、急に熱が出て、だるくなり、咳が出始めて、これはちょっとヤバいかも??と思って、検査を受けにいったところ、なんと結果は陽性で、現在、私の実家に一人暮らしの娘、とりあえず同居人はいないものの、過去数日間に会った人には、自分が感染したことを連絡し、今のところ、みんな大丈夫みたい・・と話していました。

 特に心配だったのは、隣に住んでいる高齢の私の叔母で、ちょうど、敬老の日に会ったばかり・・というので、「敬老の日」に会いに行って、感染させてしまっていたら、申し訳がたたない・・と、彼女も自分のこと以上に叔母のことを心配していました。

 かなり熱があがって、ドリプラン(フランスから持って行った鎮痛・解熱剤)を飲んでひたすら寝たら、少し楽になった・・と言っていましたが、若いからといって安心とはいえないんだから、この際、大人しく寝ていなさい・・と言って、もしも、すごく悪くなるようだったら、行くからね・・と話しました。

 遠く離れていると、やたらと心配ばかりが募ります。娘と離れて暮らすようになって、いつか、健康面で心配をかけるのは、私の方だろうと思っていたので、とてもびっくりしました。

 しかし、検査結果は検査施設から、直接、保健所には連絡がいかないようで、「日本って、おかしいよね・・」と言っていました。しかし、保健所に連絡して、サポートを申し込むと食糧などを送ってくれるらしいと、そのサイトを調べて送ったら、これまた、具合が悪いというのに、いろいろ証明書や保険証のコピーなどを添付したりしなければならなくて、年配の人はどうしているんだろう?」と素朴な疑問。

 ワクチン接種をしていてもオミクロンには感染すると言われてはいますが、考えてみれば、彼女がブースター接種をしたのは、昨年の12月、それから約9ヶ月くらい経っているので、これまで感染しなかったのは、やっぱりワクチン接種のおかげだったのかな?とも言っていました。

 私自身は、既往症もあったりして、不安だったので、今年の7月に2度目のブースター接種をしましたが、彼女は、「オミクロンは重症化しないなら、もうワクチンはいい・・」と言って、さらなるワクチン接種はしていなかったし、年齢的に該当していませんでした。

 熱が39℃近くあるということだったので、「体温計あるの?」と聞いたら、「大丈夫、料理用の体温計があるから・・」という回答。それって体温計じゃないし、「料理用の体温計」という言葉に大笑いしてしまいました。

 そもそも、我が家の体温計も電池切れのまま、ずっと放置状態・・私自身も熱があるかな?と思うことがあっても、「体温計ったところで、熱が下がるわけでもないし・・薬を飲んでひたすら寝るしかない・・」と熱を計るということを蔑ろにしてきたので、あまり偉そうなことも言えません。

 料理用の温度計をくわえて、熱を計りながら、コロナと一人戦っている娘・・やっぱり、離れていて、何もしてあげられないのは、悲しいことです。

 どうか、無事に回復してくれますように・・。

  

東京都が送ってくれたという自宅隔離用食糧


コロナウィルス感染


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2022年9月23日金曜日

フランスには王室がないのだと実感したマクロン大統領夫妻のロンドン散歩

  


 先日のエリザベス女王の国葬に参加したマクロン大統領の服装がちょっとした話題を呼んでいます。正確に言えば、国葬に参加した際の服装ではなくて、前日に前乗りでロンドンに到着したマクロン大統領夫妻がお忍びでロンドンの街を歩いていた際の服装についてです。

 これは、一瞬、デマ情報まで流れ出し、あたかもマクロン大統領夫妻がこの様相で国葬に参列したかのごとく、ネットを駆け巡りました。

 実際には、前日、ロンドン到着後にエリザベス女王の棺とウェストミンスターで対面するまでの短時間にロンドンの街をお忍びで歩いていた時の映像です。お忍びとはいえ、SPを従えて、全世界に顔を知られているマクロン大統領は、サングラスをしているとはいえ、一目瞭然のうえ、記者にマイクを向けられて、彼はイギリス国民が行列している横で、「イギリス国民の悼みを分かち合う」と答えています。


 

 しかし、フランス大統領という立場である彼のその姿は、とても悼みを分かち合っているようには映らず、このことはむしろ、黒いサングラスに流行りのスニーカーを履き、たくさんのボディーガードをお付きに歩き回る映画スターを連想させ、イギリス人の不評を買うことになりました。そして、しまいには、フランス人からもフランス人のエレガンスがまるで感じられないとフランス国民からも否定的な声があがりました。

 お忍びとはいえ、これだけ目立つ存在であるマクロン大統領は、イギリス人からは、「白熊専用のゴルフクラブに入ろうとする黒眼鏡のキリンと同じくらい、気づかれないようにする才能がある」などと皮肉を書かれています。

 口が上手くて、エリザベス女王のご逝去後にすぐに最大限の弔意を発表していたマクロン大統領でしたが、この映像には、やっぱり口だけか・・というよりも王室に対する礼節を理解していない・・と多いにがっかりさせられるものでした。

 フランスがどれだけエリザベス女王の国葬騒ぎに熱狂し、「イギリスの女王でもあり、私たちの女王でもあった」などと言いながら、やはり王室に対してのリスペクトの仕方は、この程度のもので、やはりフランスには王室がないゆえ、王室というものの品格やマナーが理解できていないんだろうな・・大統領でさえも・・と感じてしまったのです。

 国葬のための訪英をしているフランス大統領は、イギリス到着時からイギリスを発つ瞬間まで、フランスを代表している存在であるべきなのです。普段はスーツにネクタイ姿しか見せない彼が濃紺のジャケットにチャコールのパンツ、黒のトレーナーにマフラーを短く首に巻くというカジュアルな装いで街に出るというわきまえのなさ。


 これは、フランス国民には、思わぬ別の反感をも買うことにもなり、この時マクロン大統領が履いていたスニーカーは、フランスの「ウェストン」というメーカーのもので、「ウェストンのプロモーションのつもりか?」とか、「マクロンのスニーカーは570ユーロ!豊かさの終焉とは貧乏人への言葉だったのか?」などと炎上しています。

 いずれにせよ、古臭いことを言うおばちゃんみたいではありますが、前日のこととはいえ、国葬のために訪れたロンドンでのマクロン大統領の様子は、日本語で言えば、不謹慎?礼儀をわきまえない、作法を知らない・・とでもいうのでしょうか?

 やはり、日本を発たれる時には、白マスクだった日本の天皇皇后両陛下がロンドン到着時には、黒マスクに交換されているような心遣いが日本人としては、非常に好ましく、英国王室に対してのリスペクトが感じられ、それこそが王室へのリスペクト、マナーだと思うのです。


マクロン大統領夫妻トレーナーとスニーカー


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2022年9月22日木曜日

フランスのコロナウィルス第8波の始まり

  


 フランスのコロナウィルス感染者数は、夏の間は、減少を続け、むしろ、日本の方が酷いかも・・と思われる状況が続いていました。もはや、フランス人の生活は、ほぼほぼ、かつての日常に戻り、マスクをしている人も、あまり見かけなくなりました。

 先日のエリザベス女王の国葬でも参列者はノーマスクでしたが、さっそく国葬に参列したデンマーク女王がコロナウィルスに感染したというニュースも流れてきています。

 それでもその直前、WHO(世界保健機構)も「パンデミックの終焉は手の届くところにある」などと、かなり楽観的な声明を発表したりして、パンデミックもヤレヤレ・・ようやく一息つけるかと思いきや、今度はエネルギー危機とインフレで、立て続けの災難に境目がないな・・と、なんとなく、問題が別に移行しているような気にもなっていたのです。

 フランス政府は節電を呼びかけ、特に企業に関しては10%の節電の具体的な計画を検討することを提案し、企業によっては、暖房を使う部屋を減らすために、いくつかに分散されている部屋の人員を集結させて、暖房を使う部屋を減らすことで節電するなどという案なども紹介されていました。

 これまで、やたらとソーシャルディスタンスを叫んでいたのに、今度は節電のために同じ部屋に人を集めて人との間隔をつめるとは、パンデミックも完全に終結したわけでもないのに大丈夫なんだろうか?と思っていました。

 それが、新年度の開始とともに、9月6日以降、減少を続けていた感染者数が一転して上昇に転じ始め、残念ながら、ウイルスの循環が再開された兆候である1の値を超えています。

 週初めには、新たに51,816人の感染者が確認され、これは8月2日以来の記録となり、この1週間、フランスでは毎日平均28,837件の新たな感染が記録されました。これは、わずか1週間で47%の増加であり、多くの専門家は第8波の始まりであると語っています。

 今のところは、これまでに比べれば、大した数字でもありませんが、怖いのは増加率の方です。いったん、増加し始めるともう、しばらくは増加が続きます。

 フランスはここ1週間ほどで急激に気温が下がり、この気温の低下により、さらに感染症が再び増加する兆しと見られています。発生率は地域によって対照的に増加の兆候が見え始め、アルデンヌ地方では、すでに人口10万人あたり500人を超える患者さんが発生しています。

 イル・エ・ヴィレーヌ県(人口10万人あたり415人)、オート・ソーヌ県(451.98人)、ベルフォール県(458.92人)、クルース県(406.29人)、カンタル県(459.24人)の5県は、ほとんどがフランス北部に位置しており、特にフランス北部の被害が大きいことが報告されています。

 医療機関はこの2週間で入院患者数の減少がストップし、今後数日の間に再び増加することは避けられないと言われています。フランスでは、現在12,896人の患者がコロナウイルス感染が原因で入院していますが、1日平均401人が入院しており、この数字はここ数日上昇しています。

 この2年間で、コロナウイルスの季節性が明らかになり、ウィルスの循環は寒い季節の到来により活発になることは証明済であり、新しい変異種が出現せずとも、感染のリバウンドがあることは、わかっています。

 フランス政府は、まもなくオミクロン対応のワクチンが出回ることから、高齢者やリスクの高い人は、待ったなしで2回目のブースター接種を急ぐように呼びかけ始めました。

 皮肉なことに、エネルギー危機で節電を余儀なくされ、暖房も19℃までと指標が定められ、電気代、ガス代の高騰からも、思うように暖房をつけられない家庭も増える中、暖房をせずによりウィルスが循環しやすい環境を作らざるを得ない現在は、余計にややこしい第8波となるかもしれません。


フランス コロナウィルス第8波


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2022年9月21日水曜日

ストラスブール大学 節電のためにこの冬の15日間の臨時休校を決定

 


 ストラスブール大学の学長は、エネルギー価格の高騰に伴い、この冬の2週間を臨時休校とすることを発表しました。

 一昨日、ストラスブール大学学長は、エネルギー価格上昇のためのコスト削減のために、1月初旬に3週目のクリスマス休暇(通常、クリスマスの休みは2週間)、そして、さらに、2月に1週間のリモートワーク期間を設けることを説明したビデオをYouTubeで公開しました。




 「政府の発表を受けて、エコロジーへの移行において、大学もその役割を果たす必要がある」と述べ、「大学の機能をできるだけ維持しながら、エネルギー消費を10%削減する方法を模索しました」と学長はビデオの中で語り、これを正当化しようとしています。

 同大学では、エネルギーコストが爆発的に上昇しており、電気、ガス、暖房費は2021年の1000万ユーロから、補正予算で150万ユーロが追加で認められ、2022年には1300万ユーロに上昇し、2023年には、2000万ユーロの予算が計上されています。

 ちょっと一般的な家庭の金額とは規模が違うためにピンとこないのですが、大学がそもそもの本来最も優先すべきである授業を休講にしてしまうのは、ちょっと違ううえに、かなり乱暴な方法ではないかと思います。

 案の定、さっそく、これには、組合から反対の声が上がっており、組合は声明で、「行政閉鎖は公共サービスの継続性の原則に違反するものである」と述べ、「この措置により研究室へのアクセスが減少し、研究活動に支障をきたす可能性がある」

 そして、「この措置は学生や一部の職員に対する「リモートワークの押しつけ」に相当し、「雇用主が負担すべき暖房費と電気代」を学生や職員が負担することにつながる、「国が自らの雇用主の費用(暖房、(インターネット)接続、照明、ケータリングなど)を職員や学生に転嫁することは全く受け入れられない」と訴えています。

 パンデミックのために、かなり普及したリモートワーク、リモート授業の習慣ではありますが、パンデミックの場合は、感染対策のためであり、まだ合点もいく話ですが、今回のエネルギーコスト削減のための場合、リモートワークによる個々人の家庭の電力消費に負荷がかかるわけで、負担を個人に押し付ける結果になるのは納得がいきません。

 同大学組合はさっそく、「緊急の投資計画」を要求し、9月29日にストライキとデモを予定しています。また、デモです。

 中には、休みが長くなるのを喜ぶ学生もいるかもしれませんが、学生にとっての本業である講義を犠牲にしてまでの節電はお門違いで、大学側は、他の方法を模索する必要があるような気がしています。


ストラスブール大学節電のための臨時休校


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2022年9月20日火曜日

完璧だったエリザベス女王の国葬は世界中にイギリスを再評価させた

  


 エリザベス女王の国葬の日は熱狂し続けているフランスの報道も、いよいよピークを迎え、早朝6時過ぎからイギリスでの国葬の生中継が始まりました。「今世紀最大のセレモニー」と言われていたエリザベス女王の国葬は、どこを切り取っても完璧で美しい葬儀でした。

 イギリスの威厳と品格をこれでもかと感じさせるセレモニーのどの場面も、どこを切り取っても美しい素晴らしい国葬でした。


     


 そして、これを一層盛り上げたのは、数えきれないほどの一般市民で、それぞれに女王を見送る姿は、故意に演出しようとしても成し得ないものでした。

 これを相変わらず、我が国のことのように前のめりに報道し続けるフランスは、報道だけではなく、この日は、パリのメトロの駅 「George Ⅴ」駅が駅名を「ELIZABETH Ⅱ」に変更するという過熱ぶりで、ここはパリだよね・・などと思いました。




 こんなに女王の国葬に熱狂するフランスとイギリスの関係もまた、摩訶不思議な現象でもありますが、国葬当日は、さすがにフランスだけではなく、全世界40億人が見守ったと言われています。

 


 ウェストミンスター寺院での葬儀はかなり宗教色が強いもの(というよりそのもの)ではありましたが、「これがイギリスの国葬だ!」と毅然として、それを崩さない姿勢にも好感が持てました。

 全世界に流された映像は、BBCが独占で撮影したものでしたが、その場面場面、画角、演出なども、これは映画の映像かと思われるほどの質の高さで、イギリスの美しさを最高に見せつけるものでした。 

 エリザベス女王の棺は最初から最後まで、常に軍隊がガードし、葬儀終了後に棺がウィンザー城に向かう時には、棺は、海軍兵が引いていきましたが、この伝統は、ヴィクトリア女王の葬儀の際に馬に引かれていた棺が、馬がパニックになって走り出したために、倒れそうになった時、助けに来たのは英国海軍の水兵で、棺を人の背中に乗せて引っ張ったというエピソードに由来しているイギリスの伝統なのだそうです。

 


 こうした一つ一つの儀式には、伝統的な由来があり、そして、その一つ一つが美しいのですから、もう参りました・・という感じになります。

 



 極め付けの美談は、エリザベス女王は1年半彼女を待って王室保管庫に安置されていた夫のフィリップ殿下と共に、ウィンザー城のセント・ジョージ礼拝堂に埋葬されたということで、これはお二人が生前に、「どちらかが先に逝っても埋葬せずに待っている」という約束だったそうで、お見事としか言いようのない最期でした。

 女王の棺は30年前から用意されていたという噂もあり、ご高齢であっただけに、いつ何が起こってもいいように準備は万端であったであろうとはいえ、何から何まで、本当に見事でした。

 この国葬を見て、「イギリスって、やっぱりすごい!かっこいい!」と感じた人は少なくないはずで、エリザベス女王は、70年間、女王として国のために尽くし、またその死をもってしてもイギリスに大きく貢献したのです。


エリザベス女王国葬


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2022年9月19日月曜日

日本の天皇皇后両陛下のエリザベス女王国葬参列は別格扱いの報道

  



 フランスは9月8日のエリザベス女王ご逝去からの一連の流れに釘付けのような騒ぎようですが、いよいよ国葬の日を迎えるにあたって、脅威的な盛り上がりを見せています。

 エリザベス女王のご逝去からイギリス王室の伝統的な一連の儀式や、どれほど、イギリス国民にとってエリザベス女王がどんなに大きな存在であったか、棺と対面するためにウェストミンスターから、ベッカムでさえも12時間並んだとか、今は16時間待ちだとか、夜通し行列する人々の声などを届けながら、今世紀最大の葬儀の様子をフランスは、もう一週間以上も熱狂的に報道し続けています。

 そんな報道を見ていると、これまで取り立てて考えることもなかった王室や皇室の存在や意味、意義をあらためて思い知らされる気持ちがしています。

 この今世紀最大の葬儀と言われるエリザベス女王の国葬には、夜通し並んでまで最期のお別れをしたい国民や各国からの弔問には、年齢、性別、職業、宗教、政治的思想、国籍など全て異なる人が集まっており、こんなにも多種多様な垣根を越えて、これほどの人々が集まるという出来事は、他にはちょっと考えられない凄いことなのだと思うのです。

 国葬当日には、世界中から約500人の国家元首ら賓客が弔問に訪れ、前日夜には、世界中の要人が続々とロンドンに到着する中、この国家元首はそれぞれの国にとっては、トップの人々でありながら、これだけたくさんの要人が集まるとなると、その一つ一つの国の要人は、たくさんの弔問客に埋もれてしまい、一人一人は特に取り上げられることはありません。

 フランスでは、マクロン大統領のロンドン入りが報道されるのはもちろんのことですが、その他は、当日のウェストミンスター寺院への移動は、専用車の利用が禁止されているところ、アメリカのバイデン大統領だけが警備上の理由で特別に専用車を使うことを許可されたなどと報道されているくらいで、他はその他大勢の扱いです。

 ところが、その他大勢に入らなかったのは、日本の天皇皇后両陛下で、日本の皇室、天皇皇后両陛下のイギリス国葬参列は別格扱いです。

 エリザベス女王の70年にわたる在位中に日本の皇室は、現在の天皇の祖父にあたる裕仁(1901-1989)、明仁(1933年~2019年退位)、そして現在の成仁天皇と三代にわたり友好関係を保ち続け、成仁天皇はオックスフォード大学留学中にも、女王陛下からのご招待を受け、バルモラル城で休日を共に過ごすなど、英国王室との交流があり(皇后陛下も時期を隔ててオックスフォード大学で学ばれていた)、イギリス王室と日本の皇室との関わりの深さから、本来は日本の天皇皇后両陛下は、海外の葬儀に参列することは前例がない中、エリザベス女王の葬儀には、特別に参列することを望まれた結果で、イギリス王室と日本の皇室の強い絆が反映されていると伝えています。

 天皇皇后両陛下は「女王の多くの功績と貢献」に対して感謝と尊敬の念と深い哀しみを表し、女王の死を聞いて3日間の喪に服したと言われています。

 今回の主人公?であるイギリスは、これだけ国全体が哀悼の意に包まれている王室を大切にしている国、またそのイギリスの一大事を熱狂的に報道しているフランスも王室・皇室に関しては、やはり別格に扱うところがあるのです。

 本来ならば、500人以上の国家元首ら賓客の中には、埋もれてしまいそうな日本ですが、日本からは歴史ある皇室から天皇皇后両陛下が慣例を越えて参列されるために別格扱いの注目を集めていることに、なんだか、ちょっと久しぶりに日本が誇らしい気持ちになりました。

 これだけの賓客が集まる中、席次も大変なことだろうと思いましたが、天皇皇后両陛下は4列目に、(ちなみにバイデン大統領は16列目)着席されました。

 今、パンデミック、戦争と世界中が不安定な中、政治や宗教を越えて確固として存在し続けている何かはとても重要なもので、このエリザベス女王の葬儀の一連を見て、王室や皇室の存在というものは、思いの外、貴重な存在であったのではないか?とあらためて、感じているのです。


天皇皇后両陛下イギリス国葬参列


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2022年9月18日日曜日

フランス人の衣替えの素早さにはいつも驚嘆させられる

  


 

 ここ数日でパリはあっという間に寒くなってきました。つい数日前までは、30℃超えのちょっと動くと汗ばむような気候だったのに、あっという間に朝晩は10℃を切る寒さに突入しました。

 日中と朝晩の寒暖の差が激しいのには、さすがにもう慣れましたが、この季節の変わり目の衣替えのタイミングというものは、未だに出遅れそうになります。

 とはいえ、さすがに、出かける前には、天気予報を見て、お天気や気温を見るくらいの習慣はついたものの、その変わり目となると、どうにも、その気温の感覚が選ぶ服装と直結せずに、なんとなく、こんな感じでいいかな?と思っていくと、少し肌寒かったり、逆に暑すぎたりとどうにもチグハグになってしまうのには、パリに来て20年以上経った今でも、どうもバシッと決まり!という感じにはなりません。

 特にここ数年の夏の猛暑と夏の暑い期間が長くなったことで、私の衣替えのバロメーターがさらに狂ってしまった感じがしています。

 ところが、ここがフランス人の肌感覚の凄さというのでしょうか? 先日、出かけたら、もうダウンを着ている人がちらほらいたりして、また、彼らの服装のとおりに、しっかり寒かったりしたのには、やっぱり、彼らは、スゴいな・・と感心します。

 本当にある日を境にどっと服装が変わる、しかも、その変わり方もサンダルからダウンとかになりインパクトが激しいので、驚かされるのです。

 また、逆に暖かくなってくる時期に、少しでも気温が上がる日には、待ってましたとばかりに真夏のような格好でみんな出てくるので、これもまたスゴいな・・と思います。

 そもそも、私にとっては、フランスの天気予報というのは、あまり当てにならない印象があるので、明日は雨になるらしいから、今日のうちになんとか、無理をしてでも行っておこうとか、思って出かけると、翌日も結局、雨など降らずに晴天だったりするのです。

 前日まで、サンダルにTシャツだった人々が、一気にダウンやコート、マフラーまでしているのには、本当に見事だな・・と思わせられます。秋の訪れとともに、ブーツを履いている人もちらほらし始めます。これは、ファッションなのか?おしゃれなのか?わかりませんが、どこか、秋の風を感じたりし始める季節、季節を先取りしている感じのブーツも彼らなりのファッションなのかもしれません。

 私の印象としては、彼らには、春や秋というものの存在は薄く、夏から冬、冬から夏になるような気がします。

 そもそも、パリの街中にいる人々の服装は、本当に様々なので、多少、季節にピッタリ来ない格好をしていても、そんなに目立つことはないのですが、この季節がわりのタイミングだけは、急にダウンやマフラーなどのアイテムがいきなり出てくることに、毎年のことながら、驚かせられるのです。

 だいたい、もともと、彼らは、夏の間には、コートを防虫剤を入れてしまい込むということもせず、ほぼ一年中、同じタンスに入れたままに保管している人が多いようで、急な衣替えにも対応できる?体制を保っているような気がします。

 日常のお天気(雨が降るかどうか?)については、彼らにとっては、雨が降ろうが傘もささないので、彼らにとっては、「雨が降りそうだから、今日は傘をもっていかなきゃ・・」なんてこともないのでしょうが、この衣替えだけの素早さだけは、彼らは完璧です。


フランス人の衣替え


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2022年9月17日土曜日

WHOが発表 パンデミックの終焉は手にとどくところにある 

  


 「世界はパンデミックを終わらせるためにかつてないほど良い状況にある」「まだそこには到達していないが、終わりは手の届くところにある」コロナウィルスの出現から約3年、WHOのトップは世界的なパンデミックの将来について楽観的な見解を発表しました。

 WHOの最新のレポートによると、先週、コロナウィルスによる週間死亡者数は2020年3月以来、最低に減少したと報告しています。

 ワクチン接種の拡大により、大幅に重症化する患者数やそれに伴う死亡者数も確実に減少した結果であるとはいえ、2020年3月以来、最低の死亡者数までになたたということは、ようやく振り出しに戻っただけであるということもできます。

 このパンデミックによって、世界経済は長期間にわたり麻痺し、ワクチン接種の開発と浸透により、多くの人々の命が救われたと同時に、このワクチン接種を含む世界規模の不平等を露呈させたとも言われています。 豊かな国々は有効なワクチンをため込み、多くの貧しい国では接種率がまだ低くなっているのが現実でもあります。

 実際の感染者数が正確に把握されているとも言い難く、WHOが公式に確認した世界中の感染者数は6億人を超えていますが、公式に記録された640万人の死亡者数と同様、現実よりもはるかに低い数字だとも言われています。

 「パンデミックの終わりが見えてきた」というのは、トンネルの向こうに微かな希望の光が見えてきた程度の話で、逆に言えば、「この機会をとらえなければ、さらなる変異種、さらなる死、さらなる混乱、さらなる不確実性が生じる危険性がある」とWHOは同時に警告もしているのですが、世間の捉え方はどうしても希望、楽観的な予測に偏りがちです。

 ワクチンという強い味方を手に入れたものの、ワクチン接種をしているのに、感染するケースなどもあります。しかも、これから秋から冬へと気温が下がってウィルスが活発化する季節を迎えている今、このWHOの見解は、かなり楽観的なもので、多くの人を油断させるという逆効果になりかねないのではないだろうか?と心配しています。

 今や、フランスでは、ほとんどマスク姿の人は見かけなくなりましたし、今、毎日のように中継されているエリザベス女王を弔問する人々の長蛇の列を見ても、マスクをしている人の姿は見えません。

 しかし、一方では、フランスでも、一部には頑なにメトロの中でもオフィスでも、マスクをキープしている人がいないわけでもありません。そして、以前には、日常であったビズー(頬と頬を合わせてのあいさつ)は、未だに完全復活はしておらず、握手に切り替えている人が多いのには、ちょっと救われる気持ちです。

 いつまでも、怖がっているのは、ナンセンスな気もするのですが、私は、このまま「パンデミックの終焉は手にとどくところにある」と安堵する気にはどうしてもなれないのです。

 私は、4回目のワクチン接種を7月に済ませていますが、今度はそうそうに、インフルエンザのワクチン接種の招待券?が送られてきました。これまではインフルエンザのワクチン接種などしたことがなかったのですが、昨年は、インフルエンザに罹って抵抗力が落ちた時にコロナに罹ったら、もっと怖いと思って、インフルエンザのワクチン接種をしてかなり体調を崩してげっそりしました。

 こうして、これから、毎年、コロナとインフルエンザのワクチン接種を続けることになるのでしょうか?


パンデミックの終焉 WHO


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2022年9月16日金曜日

子供の「はじめてのおつかい」も時代が変わったことにしみじみする

  


 この間、スーパーマーケットに買い物に行ったら、レジで私の前に5歳くらいの男の子が並んでいて、気がつけば、彼は一人でレジに並んでいました。彼がレジのベルトコンベアーの前に置いているのは、数個のパンが入った袋だけでしたが、手にはゴールドカードを1枚、握りしめていました。

 スーパーマーケットのレジの近くには、つい追加してしまいそうになるガムやキャンディ、チョコレートなどが置かれているのは、どこの国も一緒で彼もまた、その中のチョコレートバーに魅了され、手にとって、それをしばらく見つめていました。

 パリで小さな子供が一人で買い物に来ているということは、非常に稀なことで、そもそも一人で外出させるということはあまりないのです。

 家庭によっても多少は差があるとは思いますが、小学校卒業までは、学校の送り迎えをするのが普通で、我が家の場合、朝学校に送って行って、仕事が終わって学校に迎えに行って帰ってくると、もう夜7時過ぎくらいにはなってしまうので、学校が終わって友達と遊ぶということもなく、学校がお休みの日はお稽古事などに追われているわけで、それも全て送り迎えが必要で、一人で出歩くということはまずなかったのです。

 たまにお友達のお誕生日会などに呼ばれてお友達の家に行く時も、必ずお友達の家まで送って行って、また終わる頃にまた迎えに行く、もしくは、招待してくれたおうちの人が家までおくってくれるという感じなので、一人で買い物に行くとか、寄り道をするとかいうことは、少なくとも小学生のうちは、ありませんでした。

 なので、買い物に行くことはあっても、必ず家族の誰かと一緒なわけで、一人で買い物をするという、日本でいう「はじめてのおつかい」のような体験はありません。

 しかし、娘が小さい頃に、一度、お店で何か一人で買い物をするということをさせてみたくて、一緒にパン屋さんに行った時に、1ユーロのコインを娘に渡して(あの頃は1ユーロでバゲット1本買ってもお釣りがきた・・)、「バゲット1本買ってきて!焼けすぎていないやつ(「Une baguette pas trop cuit s'il vous plait」)ってちゃんと言うのよ!」と言って、ちょっと離れたところで見守っていたことがありました。

 娘は最初は躊躇っていましたが、意を決してパンを手に入れ、どこか満足そうにしていた記憶があります。

 私の前にレジに並んでいた男の子に、「ん??一人??」と思っていた私は、次の瞬間、彼がチョコレートバーをつかんで「これ買ってもいい?」と控えめな声で少し離れたところにいるお母さんに尋ねているのに気がつきました。

 一人で買い物に来ていたのかと思いきや、いつかの私のように、少し離れたところでお母さんがしっかり見守っていたのです。

 お母さんは、しっかり口を結んで、「ダメダメ・・」と首を横にふると、彼は「これ、90セントだよ!」とさらにもう一声、それでも、ママは毅然として、「ダムダメ・・」と・・。彼は諦めてチョコレートバーを棚に戻していましたが、そんな光景を見て、なんだか、懐かしいような、微笑ましいような、そんな気持ちになりました。

 しかし、今は子供に買い物をさせるにもゴールドカード、しかもサインも暗証番号も必要ないし、軽くカードをかざすだけで決済が済んでしまうので、おつりの計算も心配もいりません。

 なるほど、昔はお金を預かって「お釣りを間違わないようにね・・」などと言っていた子供のおつかいも、今はひどく簡単になりました。

 一方、カードなら、余計なものがいくらでも買えてしまうので、頼んだもの以外は頑として買わせないというのは、現代のこどもの「はじめてのおつかい」には、必要な訓練なのかもしれません。

 私も最近は、すっかり現金は使わなくなり、現金を使って買い物をするということは、1年に1〜2回あればいいほどで、何かの時のために少額の現金は持っているものの、そういえば、お釣りのことなど考えることもなくなりました。

 しかし、こうして「子供のおつかい」などを見ていると、お金を握りしめて、お釣りの計算をしたりする・・そんなアナログな時代も、それはそれでよかったな・・という郷愁のようなものを感じるのです。

 

はじめてのおつかい ゴールドカード


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2022年9月15日木曜日

電気料金値上げによるエネルギークーポン再び配布

   


 たまたま、昨日、EDF(フランス電力)から、請求書が届いて、今までになく、ドキドキして開封しました。電気料金の請求書は2か月に一度で、これまでは、毎回、似たり寄ったりの金額で、そんなに深く考えることもなく、支払っていたのですが、ここのところ、どんどん電気料金が値上がりしているというし、周囲からも「EDFの請求書を見てビックリした!」とかいう話も聞いていたので、ちょっと怖かったのです。

 電気料金については、自分のアカウントがあって、調べれば、現在、自分がどの程度、電気を消費しているかは、ネットでいつでも見ることはできるのですが、さすがにそこまですることはなく、それでも今までよりは、使っていない電気製品のコードを外したり、こまめに電気を消したり、ある程度は気をつけてはいるものの、我が家の場合は冷房もなく、どうしても暑いときに扇風機を使う程度なので、今の時点でも、かなり節電しているつもりなので、請求書がくれば、その通りに支払うしかありません。

 新年度が始まって、税金の支払いなど、出費がかさむ中、昨日、ボルヌ首相がエネルギー危機に関する政府発表を行いました。

 首相は特に「今の我々の目的は、ヨーロッパ規模でのエネルギー価格の爆発を止め、より穏やかな価格に戻すこと」と述べ、2023年に向けてのエネルギー危機への対応とともにエネルギーに関する援助を延長することを発表しました。

 この冬、フランス人が十分なガスと電気を使えるようにするために、ガス在庫の充填を加速(現在95%)、LNG基地の輸入能力の増強、再生可能エネルギープロジェクトを加速するという政府の方針です。

 この発表の中で、最も驚いたのは、「誰もが自分の責任を果たし、必要な節度を保てば、冬場に停電は起こらないであろう」という部分で、逆に言えば、「皆がこれまでどおりに生活していたら、冬場には停電する」ということで、そこまで差し迫った状態であるということが、エネルギーに関する政府の発表があるたびに、明らかにされていく気がします。

 彼女は、前回の発表の際に、エネルギー消費量を10%削減するという目標をかかげていましたが、混乱を抑えるためなのか、「節制とは、生産量を減らすことではなく、暖房を少し減らし、無駄な消費を抑えること」と説明しています。

 フランス人はパニック状態になった場合、最も収拾がつかない状態に陥る可能性が高いことを考慮している発言であると思われます。

 これにより、フランス高級ブランドグループLVMHは、10月からフランス国内の店舗で夜間照明を午後10時に消灯することを発表しています。

 いつの間にかどんどん上昇している電気・ガス料金は、それでもEDF(フランス電力)などの電気・ガスの供給会社に値上げ分だけでは賄いきれない不足分を直接、電気・ガスの供給会社に不足分を政府が援助しながらも、これでもギリギリの値上げを続けているわけで、それでさえも、2023年には、電気・ガスともにさらに15%の値上げが見込まれています。

 しかし、それでさえ、政府の介入がなければ、来年の初めには、電気・ガス料金は 2.2倍にもなるということなので、これでもマシな方なのかもしれません。

 同時に彼女は、値上げのお知らせとともに、再度、弱小世帯に向けてエネルギークーポンを配布することを発表しました。これは1200万世帯が該当するもので、10世帯のうちの4世帯の割合にあたります。

 金額は、収入や家族構成によって考慮され、100ユーロから200ユーロの間で支給されるということです。

 前回、今年4月に、すでにエネルギークーポンが配布されていますが、これは、本来ならば2023年3月末まで使用できるということになっていたのに、追加でエネルギークーポンが必要になってしまったということは、4月に配布されたものでは十分ではなくなり、想像以上に値上がりの速度も速く、爆上がりしているということです。

 電気代というものは、気をつければある程度は、節電することは可能であるものの、それ以上はあまりわかりにくい消費のかたちで、普通に生活しているだけで、いつの間にかどんどん請求書の価格だけがどんどん上がっていくことは、やるせないような気持ちにもなります。特に高価なものを買ったわけでも贅沢をしたわけでもないのに、どんどん支払いだけが増えていくなんて・・と思ってしまいます。

 これが、マクロン大統領が言っていた「豊かさの終焉のとき」の具体的なあらわれかたの一つなのかもしれない・・などとも思います。

 これまでろくに請求書の内容など見たこともなかった私ですが、こう値段があがっていくと、「えっ??間違いじゃないの??」とマジマジと請求書を見つめることになるのですが、ここにきて初めて、電気代にかかる税金が20%近いことに気付いて、またまたびっくりしています。

 しかし、EDFは、「2023年中に停止されている原子炉が再開する見込みはたっておらず、今後、当分、電力供給が増加することはない」と発表しており、この値上げが2023年中には、おさまることはなく、2024年まで持ち込むのではないかと見られています。

 まだ始まってもいない2023年より前からすでに2024年まで持ち込みそうだという話には、ほとほとウンザリさせられます。


エネルギークーポン


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2022年9月14日水曜日

映画界の巨匠 ジャン・リュック・ゴダールの死と安楽死問題

   


 現代映画の礎を築いた最後の巨匠といわれ、世界三大映画祭の全ての最高賞を受賞しているフランスの映画監督ジャン・リュック・ゴダールが91歳で亡くなりました。

 このニュースは、単に彼の死が悼まれるだけではなく、彼の死が自らスイスで安楽死の道を選んだものであったことが家族から発表されたことから、また別の意味でも注目されています。

 2014年のインタビューにおいて、すでに彼は、自身が死について、安楽死(自殺幇助)に頼る可能性があることを「私は何が何でも生き続けたいという気持ちはない。あまりに具合が悪いと、一輪車で引っ張られ続けてまで生きるつもりは全くない」ときっちりと語っています。

 これは彼の確固とした死生観は、彼の作品にも度々、表現されてきており、「物事が終わるときにこそ、意味がある」というセリフなどにも象徴されています。

 現在のフランスでは、安楽死は認められていないため、彼(フランスとスイスの二重国籍保持者)はスイスの自宅で死を迎えるために出国していました。

 スイスとて、無条件に安楽死が認められているわけではなく、医学的倫理規範によって規定された一定の条件の下で受動的安楽死や自殺幇助などが認められていますが、一方では、利己的な動機により、致死物質を提供するなど誰かの自殺を幇助した者は、5年以下の拘留または金銭罰に処されます。

 今回の彼の医療報告書の条件によれば、「複数の身体障害のため」とされています。

 スイスでは近年、安楽死(自殺幇助)は年々増加しており、2003年には年間187件だったものが、2015年には965件、2021年には約1,400人がスイスで安楽死を迎えています。

 フランスでは、マクロン大統領が、彼の死の情報に照らして、6ヶ月間にわたる「終末期に関する市民会議の立ち上げ」を発表し、あらたな意味をもたらすことになりました。この会議の立ち上げは、2023年末までの新しい「法的枠組み成立」の可能性を視野に入れています。

 倫理委員会としては、厳格な規制のもとであれば、積極的な臨終の支援も考えられるとしています。

 2021年6月の段階で、国家諮問倫理委員会(CCNE)はすでに、「倫理的に、ある厳しい条件のもとで、積極的な死の援助を適用する方法がある。近年、いくつかの国がそれぞれの法律を改正していますが、フランスは何の対策もとっていない」と問題提起していました。

 国家諮問倫理委員会は、「死の象徴的・精神的表象、恐怖、不安が一体となった終末期問題が極めて複雑であること」を強調しており、緩和ケアにおける公衆衛生対策を強化し、各人の「早期の意思表示」をより促すとともに、深部継続鎮静を専門病棟以外にも拡大することを求めています。

 委員会は、新法は安楽死や積極的臨終支援というテーマだけに焦点を当てるべきでないと考えており、緩和ケアへの取り組みを加速させることを提唱しています。

 フランスの終末期医療を見るに、どこまでも生に固執する感じは日本に比べると薄いような気もするのですが、どのように自分の死を迎えたいのかは、病気に罹患した場合にどこまでの、どのような治療を受けるかにも関わっていることであり、常日頃から、自分がどのように死にたいか、どのように生きていたいかについて、常に考え続け、ある程度、意志は固めて、見極めていることが必要なのだと思わせられます。

 いずれにしても、彼は、映画だけではなく、自分の死をもってして、世界にメッセージを残してくれたさすが、世界最高峰の巨匠でした。

 フランスは、今後、スイスやベルギー、最近ではスペインなど、非常に厳格な枠組みの中で安楽死(自殺幇助)を認めている国々と肩を並べることになると宣言しています。


ジャンリュック・ゴダール 安楽死


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2022年9月13日火曜日

遺体を家に連れ帰る日本と家には連れ帰らないフランス

  


 日本では、一般的に、家族の誰かが亡くなった場合に、無言の帰宅などという言い方もするし、家に連れて帰ってあげたい・・というふうに思われる方もいて、自宅でお通夜をしたりするケースも多い気がしていましたが、フランスの場合は、家に遺体を戻すということは、あまり一般的ではありません。

 現在では、一定の手続きをすれば、埋葬、あるいは火葬までの間、家で遺体を保管することは、可能ということにはなっているようですが、以前はこれは禁止されていたことで、家に遺体を連れて帰るということはあまり一般的ではありません。

 日本で、母が亡くなった時、病院では、「解剖させていただけるのでしたら、葬儀までの間、遺体は預からせていただきますが、もし、そうでなければ、その日のうちにお連れ帰りください」と言われました。

 母の葬儀は、母の通っていた母の大学の先生が牧師を務める近所のキリスト教の教会にお願いしていたので、病院がダメでも、教会の方で安置して頂けるということだったので、家に連れ帰らなくても教会に預かっていただくこともできたのです。

 私は、最期は苦しかったであろう母にさらに解剖などという目に遭わせるのに忍びなくて、最初は解剖することには、反対だったのですが、母の病気が心臓病だったことから、心臓病の多くが遺伝という要因もあることから、その病態の解明は母の遺伝子を引き継いでいるであろう私たちのためにも解剖はお願いした方がよいという意見が親戚の意見としてまとまり、結局、母の遺体は解剖していただくことになり、その後に教会に搬送することになりました。

 私は、母の死後に家に戻してあげたいという気持ちはあまりなく、母が家に帰りたがっているともあまり感じなかっただけでなく、それよりも残された父が、その後にその家で一人で生活(私も弟も海外暮らしのため・・)していかなければならない場所に、亡くなった母が寝かされていたイメージが残像のように父に残されてしまうのはどんなにか辛いだろうか?と思ったのが、母を家に戻さなかった大きな理由でもありました。

 フランスでは、夫が亡くなった時には、それがあまりに若く、急なことであったため、私は、ほぼ放心状態ではありましたが、亡くなった直後に病院で「解剖をさせていただきたいのですが、これは強制ではありません。どうしますか?」と言われて、その時は、あまりに急に亡くなってしまったので、どうしてもはっきり理由が知りたくて、「是非、お願いします!絶対、やってください!」とお願いし、実際に、「できることなら、自分でやりたいくらいだ・・」と思いました。

 夫の遺体は解剖のために病院を移され、解剖の順番待ちのために、数日、病院に安置され、その間、2度、遺体と面会(対面?)に行きました。パリの大きな病院のため、遺体の安置所も大きくて、大きな冷蔵庫の引き出しがたくさんあるところで、遺体との面会をあらかじめ予約しておくと、時間には、冷蔵庫から出してきてくれるのです。

 家の夫のパソコンの裏に、どういうわけか、自分が死んだ場合は家から一番近い墓地に埋葬してほしいという書き置きがみつかったために、家の近所の市営墓地に予約をして、場所を確保し用意してもらいました。

 最近、フランスでも火葬を希望する人が増えたとはいえ、やはり、フランスでは、まだまだ普通の埋葬が多く、私にとっては、火葬以外の埋葬に立ち会うのは、初めてのことで、今から考えれば当然のことなのですが、想像以上に深く土が掘ってあるのが、とても衝撃的でした。

 エリザベス女王の遺体が数カ所を経由しながら、ロンドンに戻られていく様子を見ながら、あまりに次元が違う話ではありますが、自分の家族が亡くなった後のことを思い出しました。


遺体安置 遺体搬送 火葬 埋葬 通夜


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2022年9月12日月曜日

省エネ対策のため、エッフェル塔のライトアップ時間短縮

  


 パリでは、省エネ対策のために、すでに、午前1時から午前6時までの間、電飾広告(広告看板の夜間照明)を禁止していますが、ついに、エッフェル塔のライトアップに関しても時間が短縮されることになりました。

 エッフェル塔はフランスのシンボル的存在であり、また、そのライトアップは、最近では、国全体のメッセージを表現するツールとしての役割も果たしており、つい最近では、ウクライナでの戦争が始まった時には、ウクライナカラーに輝いていたり、つい先日、エリザベス女王がご逝去された日は、弔意を示すためにエッフェル塔は消灯されたりしました。

 しかし、どんな時でも夜のパリには、エッフェル塔が燦然と輝いており、逆に2年半前の完全ロックダウンで、パリの街中から車も人も消え去り、街全体が死に絶えたような時でもエッフェル塔は変わらず、輝き続けていました。

 ロシアからのエネルギー供給が遮断され、エネルギー危機が危ぶまれる中、冬期には、特にエネルギー消費率の高いガラスや金属工場が時短操業に切り替えられることになったりしていると思ったら、今度はエッフェル塔のライトアップの時間も短縮されることになりました。

 エッフェル塔の夜間照明は、エッフェル塔全体の年間エネルギー消費量の4%を占めているということで、パリ市は、省エネ計画の一環として、エッフェル塔の夜間照明を1時間強削減することを発表しました。

 現在、エッフェル塔は、午前1時までライトアップされていますが、今後は最後の訪問者が帰る時間である午後11時45分に消灯されます。

 また、エッフェル塔の外から光を送る336個のスポットライトは、毎日1時間15分早く消すことで、年間約92,000kwを節約することができ、これは40人分の年間平均電力消費量に匹敵する量とされており、また、1時間おきにキラキラとフラッシュされる光が放たれるいわゆるシャンパンフラッシュも午後11時45分でエッフェル塔が消灯されることになると、最終のシャンパンフラッシュは午後11時ということになります。

 このシャンパンフラッシュも、30㎡のワンルームマンションに2人で住む場合の年間消費電力量に相当します。

 このエッフェル塔のライトアップ時間短縮は、大した量ではないという見方もありますが、これは、ある意味、エネルギー節減の意義を呼びかける極めて象徴的なジェスチャーであり、「これが世界的に有名なモニュメントの役割の一部である」としています。

 国民のみならず、エッフェル塔が世界へのメッセージの役割を担っているという言い方も、「これまた、大きく出ましたね・・」と思ってしまうフランスらしいところです。

 しかし、この電力問題は、かなり深刻だと受け止めておく方が良さそうで、もともと、電力発電のほとんどは原子力発電で賄っていたと思っていたフランスの原子炉が、実際には、満足に稼働していなかったことが、このエネルギー危機で明らかになっていて、現在、フランスにある56基の原子炉のうち、32基がメンテナンスのための整備中だそうで、半分以上が稼働していない状態です。

 本来ならば、フランスは電気をかなり輸出していたはずなのに、昨今、エネルギーに関する協約で、フランスで電力供給が逼迫した時にはドイツが、ドイツでガス供給が逼迫した時にはフランスが援助するという取り決めが行われたと聞いて、おかしいと思っていたのですが、フランス側の原因は、この原子炉のメンテナンスが日頃からできていなかったことにあったのです。

 同時にフランスはこの32基の原子炉の復旧作業を急ぐとしていますが、この冬に間に合う感じではありません。

 これは、パンデミックが発生した時に、緊急時のために国が備蓄しているはずのマスクの大部分が廃棄処分にされたままになっていた状態と似ています。

 緊急事態に備えて、備蓄を整えたり、日頃からあらゆる整備を滞りなく行なっていることについては、フランス人はあまり得意そうではありません。

 しかし、最近、夜のエッフェル塔付近の治安悪化が問題になっている今、ライトアップの時間が短縮されることで、夜間にエッフェル塔近辺の人出も減り、犯罪が少しは減少するのではないか?とも考えられ、このエッフェル塔のライトアップ時間短縮がプラスになる面もあるかもしれません。


エッフェル塔ライトアップ時間短縮 省エネ


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2022年9月11日日曜日

エアフランス パリー羽田便運行再開と燃油サーチャージさらに値上げ

  


 しばらく運行停止になっていたエアフランスのパリ⇄羽田便が9月8日から運行再開になりました。これは、おそらく日本側が9月7日から日本への入国制限を1日2万人から5万人に拡大したことによるものだと思われます。

 パンデミック前までは、1日2便はあったはずのエアフランスのパリ⇄羽田便がなくなり、パリ⇄成田便だけになっていました。そもそもどちらにしてもパンデミックから2年以上は、フライト以前に入国制限が厳しすぎて(入国前の検査提示、入国後の検査、入国後の隔離施設での隔離、公共交通機関の使用禁止など)、とても日本に行く気にはなりませんでした。

 それでも、入国後の強制隔離施設での隔離が撤廃された時点で、日本へ行く気にもなったのですが、今度は戦争でパリ⇄羽田便を運行していたJALでさえも、今度は戦争のために、一時、直行便が飛ばなくなった上にロシア上空を飛べないために経由便のうえに迂回フライトになり、再び、日本行きの腰は重くなりました。

 エアフランスのパリ⇄羽田便が再開になったと聞いて、エアフランスのサイトを見てみると、AF272便(パリ13:45発 羽田10:00着)週3便(水、金、日)、AF279便(羽田12:15 発 パリ19:45着)が週3便(月、木、土)が運行されるようです。

 以前は、1日2便運行されていたエアフランスのパリ⇄羽田便ですが、日本への入国制限が2万人から5万人に拡大したとはいえ、外国人にとっては、まだ自由に日本に入国できる状態にはなっていない以上、この程度にしか戻らないのは仕方ありません。

 パリにはすっかり観光客が戻り、エッフェル塔の来場者はパンデミック前の1日2万人までに復活しているそうです。

 それにひきかえ、日本はまだまだ入国には厳しくて、未だパリの日本大使館には、日本入国のためのビザの申請に訪れる人で毎日、行列ができています。1日の入国を2万人から5万人に増やすといっても、基本的に日本人が海外旅行に行って、再入国する場合の入国を見積もっている数字なのかな?と思ってしまいます。

 しかし、エアフランスのパリ⇄羽田便の再開とともに驚いたのは、燃油サーチャージが10月発券分から、再び値上げされるということで、10月以降の発券分はヨーロッパ線は、現行の46,900円から57,100円に値上げされるということで、燃油サーチャージ分だけで114,200円もかかります。

 エアフランスが値上げしたということは、JALやANAもだろうな・・と思いながら、一応、確認してみると、両社ともに10月から値上げ。しかも、エアフランスよりも高く、JALは、47,000円から57,200円へ、ANAは49,000円から58,000円へと値上がりしており、多少ではありますが、燃油サーチャージも航空会社によって違うことにビックリしました。

 現在、日本に行くつもりはないものの、ちょっとチケットを同日の出発、帰国便で比較してみると、かなりの違いがあるようで、またさらにビックリしました。

 燃油サーチャージが最も安いエアフランスでさえも燃油サーチャージだけで114,200円ということは、以前であったならば、季節にもよりますが、これで十分に日本に行けた金額です。

 これに航空券自体の金額が乗っかるとなると、現在の値段は、以前だったら、余裕でビジネスクラスに乗れた金額で、ちょっとウンザリさせられるのは当然なことで、今までよりも時間もかかり、費用もさらにかかるとなると、せっかくエアフランスが羽田便運行を再開させてくれたとしても、やっぱり日本に行くのは、また当分、お預けだ・・と、思うのでした。


エアフランスのパリ・羽田便運行再開 燃油サーチャージ値上げ


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2022年9月10日土曜日

まだまだ続くフランスのイギリス王室フィーバー

  


 エリザベス女王の突然の訃報に、その日は1日中、想像以上に大騒ぎだったフランスに、ちょっとビックリしていたら、そのイギリス王室フィーバーはその翌日もまた、さらに続くことになりました。

 気がつけば、各テレビ局のメインキャスターは、ほぼ、全てロンドン、あるいはスコットランドに飛び、イギリスから生中継。いくら遠くはないとはいえ、メイン級のキャスターがこぞって翌日には現地入りするとは、ものすごいテンションです。

 また、フランス国内でも朝からマクロン大統領がパリのイギリス大使館に弔問に訪れ記帳する様子や在仏イギリス大使の発表を生放送で放送。その後、王位を継承したチャールズ3世がバルモラル城からロンドンに移動する様子を生中継。

 また、バッキンガム宮殿に到着して、カミラとともに、国民から送られた花束や手紙を見て歩いたり、弔問に訪れてくる市民と親しく握手しながら、時にはハグをしたりする様子を流しながら、ずっとイギリス王室の模様を実況中継していました。

 エリザベス女王が25歳で王位を継承したのとは対照的に、チャールズは73歳にして、ようやく王位を継承したのです。あらためて思うに在位70年の威力というのは、国内外ともに、大変な存在感のあるもので、少なくとも70歳以下の全ての人々にとっては、生まれた時から、イギリスの王はエリザベス女王しか知らないわけで、その間、フランスでは8人の大統領が交代し、本国イギリスではもはや歴史の教科書に登場するようなウィンストンチャーチルという歴史上の人物の時代から15人の首相が交代してきた長期間、彼女は王位に君臨し続けて来たのです。

 これまでの世論調査でもチャールズは決して好感度が高くなく、母親のエリザベス女王は81%、息子のウィリアム王子77%にも大きく差をつけられている56%の支持率と王室の中でも最下位に近く、ダイアナ妃が抜群に人気があった分だけ、一連の不倫騒動、離婚、そして結果的にダイアナ妃が悲劇的に亡くなったことによって、彼はダイアナ妃を愛する国民の目の敵になっていた感もあります。

 あまりの不人気に、一時は、チャールズをすっ飛ばして、エリザベス女王の後は、ウィリアム王子が王位を継承するのではないか?などと言われていた時期もありました。

 フランスでも、エリザベス女王の在位中から、何度となく、彼のこれまでの行状をルポルタージュした番組で「残念な皇太子」のような報道が流され続けて、エリザベス女王が亡くなったら、イギリスはどうなってしまうんだろうか?と思わせられる感じでした。

 おそらく、そんな経緯もあって、世界中から敬愛されていたエリザベス女王の後を彼がどのように受け継いでいくのかは、それが上手くいこうといくまいと、逆に上手くいかない可能性も高いと見られていたからこそ余計に注目を集めたのかもしれません。

 だからこそ、チャールズ3世が王位に着任して以来、最初のスピーチは、なんとフランスのマスコミまでが、固唾を飲んで見守る感じでした。

 その日のチャールズ3世の様子を現場で伝えているリポーターたちは、むしろ前のめり気味で、彼の王としての最初の1日を弔問に訪れた市民と距離を縮めて、スキンシップなども含めて触れ合う様子に、「彼のこれまでのイメージを払拭する第一歩を切った!」と興奮気味に伝えてもいましたが、紙面を見ると、「本来ならば、73歳という引退する年齢にようやく王位についたチャールズ3世は・・ようやく・・」などと初っ端からキツめの見出しをつけている新聞などもあります。

 注目された彼のスピーチでは、「エリザベス女王へ女王として、また母親としての生涯への感謝、そして、ハリーやメーガンも含めた彼の家族への期待」を語りました。

 誰が書いたスピーチ原稿なのかは不明ではありますが、これはまことに上手くできている原稿で、特に最後の一文には、ダイアナ妃へのメッセージも含まれていたことも話題になっています。

 「天使の歌声があなたを安息に導いてくれますように・・」

 「May flights of angels sing thee to thy rest」はダイアナ妃の葬儀で演奏された作曲家ジョン・タヴナーの作品『アテネの歌』の歌詞に引用されている一節でもあるのです。

 それにしても、イギリス国民はもちろん、フランスまで多くの人が熱狂的に王室の訃報に接して、エリザベス女王の生涯の軌跡を辿って敬意を示したりしているのを見ると、王室、皇室というものを保ち続けているということが尊い財産であることのように思えてきます。

 フランス人は、やたらと「歴史的な瞬間」という言い方が好きだなぁ・・と思うことが多いのですが、長い歴史を保ち続けている王室や皇室というものは、それを失ってしまった国にとっては、もう再び作りようのないものでもあるのです。

 文化的に異なっているとはいえ、日本の天皇陛下の皇位継承の儀などは、フランスでもかなり高い注目を集め、絶賛されていました。「古式ゆかしい」皇室の行事などは、文化遺産でもあり、一見、意味がわからないようだけど、継承すべき文化なのではないか?と今、あらためて思うのです。

 この民主主義の世の中に政治とは関係なく、信仰とはまた別の形で、国の中で圧倒的に尊ばれる国の象徴的な存在としてあり続けるということが、この不安定な世の中で、人々の心の拠り所のようなものの一つでもあり得るのかもしれません。

 王族、皇族に生まれついた方々には、自由もなく、誠に生きにくいことかとお気の毒な気もするのですが、だからこそ、その不自由な境遇の中でも、イギリス王室のように、不倫騒動や離婚、さらには王室を離脱してしまう人まで現れる逆に人間っぽいドラマもフランス人を惹きつけているのかもしれないと思ったりもするのです。


チャールズ3世 イギリス王室


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2022年9月9日金曜日

エリザベス女王ご逝去のフランスでの報道

  



「私は、長い短いにかかわらず、私の全生涯をあなたのために、そして私たちの属する偉大な王室のために捧げます」21歳のお誕生日の日に、そう宣言したエリザベス女王は、70年にわたり、王位を守り続け、2日前まで新首相に面会する映像が流されていた、ほんの数日後にご逝去されました。

 フランスには皇室がないこともあってか、イギリス王室については、ことのほか、注目度が高く、スキャンダルも含めて、マスコミに取り上げられることも多く、この日も女王陛下の容態が悪いことを昼頃から騒ぎ始めました。

 

指摘されていた女王の右手の手の甲の青あざの確認できる写真


 2日前に公開されたイギリスの新首相任命の映像を振り返り、新首相のリズ・トラスと握手している女王陛下の右手の甲に青あざができていたことや、続々と王族のメンバーがバルモラル城へ向かっているのは只事ではない・・などと伝えていました。

 バルモラル城、バッキンガム宮殿を見守り続ける中継映像は、その日の午後から始まり、女王陛下の訃報が流れたのは午後7時半頃(フランス時間)。全てのニュースが吹っ飛んだと思ったら、その日の夜は、特別番組が組まれ女王陛下のニュースが延々と続きました。

 パリのイギリス大使館にも、すぐにエリザベス女王の大きな写真が掲げられ、大勢の人が集まっていました。

 訃報が流れてすぐにこのようなことができるのも、女王陛下の年齢もあり、イギリスは、各国の大使館も含めて、その時に備え続け、誤解や論争を避けるために、ここ数年は、年に2回は、女王陛下が亡くなった場合について、その段取りなどの細部までが検討され続けて来たようです。

 こうして、フランスでの報道を見ていても、フランスには、どれだけイギリス人がいるのかとも驚かされると同時に、また逆にイギリスにはどれだけフランス人がいるのかとも感じ、フランスとイギリスの繋がりの深さを思わせられます。

 フランスにとっても在位70年にわたるエリザベス女王は代々フランス大統領8人との歴史を持ち、また、女王陛下はフランス語も完璧に話すことができた人で、彼女はフランスにとっても女王でもあり、彼女自身もフランスをこよなく愛していたと伝えています。

 ちなみに彼女のお気に入りのフランス大統領はミッテランだったと言われています。

 個人的にも私はイギリスに留学していた時期もあり、イギリスは私にとって特別な国の一つでもあります。当時、私は、勉強のために、イギリスで多くのホスピスを見学して歩いたのですが、そのどこへ行っても、エリザベス女王がそのホスピスを訪問した際の写真が飾ってあり、また、彼女が訪問してくれた時の話を目を輝かせてしてくれる人など(たまたま、ついこの間、いらしてくださったと・・)に出会ったりもして、イギリスの国民にとって、王室がどれほど大きな存在であり、大きな役割を果たしているのかを直に感じる機会もありました。

 とはいえ、こうして彼女の在位中の歴史を振り返る報道などを見ていると、イギリス王室も平坦な道のりではなかったわけで、王室不要論や数々のスキャンダルに非難を浴び、特にダイアナ妃が亡くなった際の女王の冷たい反応などに国民の反感を買ったこともありました。

 彼女がダイアナ妃の訃報を知ったのも、彼女自身がこの世を去ったバルモラル城でのことでした。

 彼女の死後、ご遺体のロンドンへの搬送からさまざまなセレモニー、国葬、埋葬まで、すべて10日以内のスケジュールやその詳細(イギリス国内がどのように喪に服すか)は、すでに全て細かく取り決められています。

 フランスでも、彼女の国葬は前例のない壮大なものになるであろうと伝えています。

 ちょうど、国葬問題で物議を醸している日本にとって、本当の国葬とはどんなふうに行われるものかを目にするよい機会となるのではないかと思っています。ほぼ同時期に行われる国葬は、悉く比較され、いや、もはや比較の対象にさえならない国葬と呼ぶことが憚られるものになる気がしています。

 

エリザベス女王ご逝去 英国王室


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2022年9月8日木曜日

恐怖の家 子供の児童手当を食い物にして子供に虐待を続けてきた親 逮捕

   


 私は日本で子育てをしたことがないので、日本の児童手当というものが、どの程度のものかはわかりませんが、時代が違うとはいえ、私が子供の頃に両親から児童手当の話というのは聞いたことがなく、そのようなものを国からもらっていたという話も聞いたことがないので、少なからず、育児に対する国の支援はフランスの方が手厚いような気がします。

 フランスでは、子供を育てるにあたって大なり小なりの支援金が支払われます。その金額は、家族構成や親の収入や職業形態によって、支援の金額も方法もリソースも変わってきます。

 たとえば、年度始めには、新年度のための準備費用が支給されたり、公立の場合は授業料は無料ですが、キャンティーン(給食)の費用は両親の収入によって金額は違います。また、子供の人数によって年金のポイントが加算されたり、税制上も子供の人数が考慮され、3人以上子供がいると、グッと優遇されるという話も聞いたことがあり、実際に娘のクラスメイトなども3人兄弟という家族が多いです。

 また、共働きが多い(というか、ほとんど)ため、両親の仕事の時間帯によっては、ベビーシッターが不可欠な場合は、その一部を国が負担してくれるというシステムもあります。また、親の収入が少ない場合などには、住宅手当なども子供の数によって換算されます。

 しかし、どんなに国が援助してくれるとはいっても、実際に子供の教育にかかる費用をそれだけで賄えるはずはなく、私などは、とうていこれ以上は無理だとハナから、もう一人子供を・・などということは考えていませんでしたが、まあ、それも子供をどのように教育したいかによっても異なってくるので、中には、子供の児童手当をほとんど子供には使わずに、自分たちはロクに働かずにいる親もいるということは聞いていました。


 今回、パ・ド・カレー県(フランス最北端の県)で4ヶ月から24歳までの10人の子供を持つ夫婦(40歳と44歳)が、この中の子供の一人が警察に駆け込んで、助けを求めたことから、児童虐待で逮捕されました。

 この家は、「恐怖の家」として知られることになり、この子供のうちの一人(21歳)がテレビなどに顔出しで証言しています。

 この青年が耐えきれなくなって、警察に助けを求めに駆け込んだことにより、警察が家に踏み込んだ時には、幼い子供2人が椅子に縛られ、排泄物まみれになっていたといいます。すべての子どもたちは、常に両親からの脅迫、暴力に怯え続けて育ってきました。

 この家庭は、2013年からソーシャルサービスによって監視されていたものの、両親はソーシャルサービスのチェックの前に子供たちに圧力をかけ、「家で何が起きているのかを言ってはいけない、すべて順調だと言え!。私たちが経験していることを話すと、ホームに入ってみんなから遠ざけられることになる!」と脅迫し、何とか制裁を免れ続けてきてしまったようです。

 この青年の証言によると、父親はこれまでに半年間しか働いたことがなく、夫婦は生活保護と児童手当で生活しており、子供を金づるとしていて、子供が成人して、援助が切られるたびに、子供を作って収入を補うということを繰り返していました。

 子供は彼らの収入源だっただけでなく、この子どもたちの自由を奪い、殴る、蹴るの身体的な暴力や言葉による脅迫、逆らえば長時間の土下座、少しでも動けばリンチ状態。

 その矛先がたとえ、自分に向かないことがあっても、常に兄弟姉妹の誰かが暴力を振るわれる場面を目にすることだけでも、大変な恐怖とストレスを感じ続けていたのです。

 このような家庭ですから、児童手当は子供のために使われることはなく、父親は頻繁に車を買い替えたり自分のためにお金を使っていたようです。

 両親の逮捕により、子供は保護され、現在は特別な施設での生活を始めています。

 この青年は、両親の仕打ちに耐えられなくなって警察に駆け込んだわけですが、この青年が他の兄弟姉妹の命を救ったかもしれません。しかし、少なくともこれまでの間にこの家で育って来た子どもたちの心の傷やトラウマは想像を超えるものであるに違いありません。

 本来は、このフランス政府が行っている児童手当は大変、ありがたいもので、この政策をきっかけにフランスは日本のような少子化の道を辿ってこなかったのも事実です。しかし、中には、このようなクズ親も現れてしまうことも事実です。

 かねてからフランスでのクズは限りなくクズだと思っていましたが、このクズ対応をするべくソーシャルサービスが機能していなかったことは、その被害に遭い続けて来た子どもたちの年月には取り返しがつかないことです。

 以前、私たちがフランスに来たばかりの頃、パリに引っ越してくる前、まだ娘も小さかった頃、突如、「子供を学校に行かせていない(フランスでは2歳から学校)と通報があった」とソーシャルサービスの人が家に訪ねて来たことがあり、「こっちは忙しくしながら、学校だけでなく、公文にまで通わせているのに・・」と憤慨したことがありましたが、そんなことは、学校に聞いて貰えばすぐにわかることなので、何の問題にもなりませんでしたが、逆にそんなすぐに嘘がわかるような嫌がらせの通報をする人がいることの方を不気味に思ったくらいです。

 また、このソーシャルサービスから難癖をつけられて、しっかり働いて子育てしているにもかかわらず、子供をとりあげられそうになって日本に子供を連れて帰国した人も知っています。

 このクズ親も問題ですが、このチェックを行うソーシャルサービスも適正に機能していない印象を拭いきれない気がするのです。


児童手当 児童虐待 恐怖の家


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2022年9月7日水曜日

ディオールギャラリーとアヴェニューモンテーニュのディオールショップ

   

 

 凱旋門がラッピングアートにデコレーションされていたのは、昨年の9月のことで、あれからもう、1年も経ってしまいました。

 ラッピングされた凱旋門を見るために久しぶりにシャンゼリゼに行った時、シャンゼリゼの中腹あたりにあるルイヴィトンビルの正面あたりの建物の大きなスペースが工事中で、それこそ工事中用の美しいラッピングに包まれた建物全てが Dior(ディオール)になっていて、ディオールスゴいな・・と思いながら、凱旋門に向かってシャンゼリゼを上がっていきました。

 すると工事中のディオールとは別に、ディオールのお店があって、普段は無縁のこういう高級品のお店を覗いてみるのもいいな・・と思って店内に入っていくと、まだそんなに観光客が戻ってきていない時期なのにもかかわらず、けっこうお客さん(観光客らしき人々)がいて、またまたびっくり!「いるところにはいる!」「売れているところは売れているもんだ!」と私にとっては、美術館を眺めるような気分でディオールのお店をぐるーっと見てきました。

 近くにいた店員さんに、「あんなに広い工事中のスペースがディオールだっていうことは、工事が終わったら、このお店も向こうに引っ越すんですか?」と聞いてみたら、「いやいや、あれは事務所だから、このお店はこのままで・・」と言われてまたびっくり!こんな一等地にあんな規模の事務所!!

 お姉さんは、私の驚きをよそに「今、アヴェニューモンテーニュの方のお店が改装中で、来年春頃には、素晴らしいお店に生まれ変わるから、ぜひ、春には向こうのお店も見に行ってみてね!」と見学だけの私にそれはそれは愛想よく親切に教えてくれたのでした。

 その後、そんなことは全然、忘れていて先月、偶然、バスでアヴェニューモンテーニュを通りかかり、一つの大きな角地にディオールのお店があるのをバスの中から見かけて、さすがにアヴェニューモンテーニュ!お店の前には、ヴォアチュリエ(正装をしたお車係)までいて、「お!これがあのお姉さんの言っていたディオールのお店だ!」と思いましたが、私はバスの中、わざわざ降りるのも面倒で、その日は、そのまま通り過ぎてしまいました。

 後日、たまたま友人と久しぶりに会う約束をしていて、「どこか行きたいところある?」と聞いたら、彼女が「ディオールのギャラリーに行きたい!」と言うので、急遽、予約をとって、ディオールのギャラリーに行くことに・・。




 当日、予約どおりにギャラリーに行くと、予約をとっているにもかかわらず、行列が・・しかし、さすがにそれほど待たされることはなく、中へ。



 
 


 中に入ってすぐ、中央には螺旋階段があり、その周りを色とりどりのディオールの商品のミニチュアで囲まれているスペースはまさにインスタ映えしそうなスポット。展示場には、エレベーターで上がり、この螺旋階段は帰りに降りてくることになります。

 中を進むと、ディオールの歴史を辿るドレスやアトリエ、ディオールにまつわる展示品の数々が続々と並びます。

 


 数々の名作と言われる映画の中に登場していたドレスはその映像とともに楽しむことができます。

 


 また、部屋ごとにドレスや展示品にあったように立体的にデコレーションされている様子は特にディオール好きというわけではない私も圧倒されました。

 


 洋服はドレスが中心で、あまり現実的なファッションではないものの、その分だけ美しいドレスに囲まれた空間は、異次元の夢の中の気分を楽しませてくれます。

 J'adore(ジャドール)の香水のCMで使用されたドレスなどもありました。

 


 しかし、なんといっても圧巻だったのは、最後のクライマックスのポイントに用意された音楽とともに朝日から夜への時間とともに背景の変わるスペシャルポイントでした。

 



   

 「ファッションデザイナーは、ある意味、夢の先導者」というディオールの言葉どおり、夢のひとときに誘ってくれる空間で、庶民の日常にはない贅沢な夢の中に身をおくのも、たまには、よい経験かもしれません。

 このギャラリーから出ると、すぐのところにまた、例のアヴェニューモンテーニュのディオールの店舗があるのですが、これは、少し現実的といえば現実的ではありますが、これもまた、お店の中のカフェには、大きな陶器の動物園のような空間ができていて、ディオールってどんだけスゴい!!と思わせられる空間なのでした。

 私にとっては、こちらもまた美術館と大して変わらないような、しかし、カフェでお茶を飲むくらいは参加できるかな・・と思う空間でした。

 やっぱり、ディオール・・恐るべし・・です。

 



ディオールギャラリー ギャラリーディオール アヴェニューモンテーニュ

11 Rue François 1er, 75008 Paris 11:00~19:00 


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