マクロン大統領が、「誰もがもっと長く働かなければならない」として、法定退職年齢の引き上げや、年金の拠出期間を43年に延長することを提案したことから、フランスでは、大規模なデモが巻き起ころうとしています。
29日には、パリだけでも少なくとも4万人が集結し、この定年退職年齢引き上げと賃上げ・労働条件改善を訴えるためのデモを行いました。フランス全土では、少なくとも200ヶ所で25万人を動員したなかなか大規模な動きです。
現行ではフランスでは、法定退職年齢は62歳と定められていますが、これを2023年には62歳4ヶ月、2024年には62歳8ヶ月、2025年には63歳、そして最終的に2031年には65歳にまで延長する計画です。
これには、おまけがついていて、定年退職年齢より1年早く退職すれば、年金支給額からマイナス5%、1年長く継続すればプラス5%とペナルティーとボーナスの両方が提示されています。
しかし、考えてみれば、どちらにしてもそのプラス・マイナスの基準となる年齢が引き上げられる以上、これまでの見積り?どおりに退職しようものなら、マイナスにされてしまうわけで、年金支給額をプラスにしようと思うならば、これまでよりももっともっと働かなければなりません。
年金の計算はフランス人の趣味なのか?と思うほど、年金についてはシビアなフランス人。
以前の職場にも退職を数年後に控えた同僚などは、暇さえあれば年金の計算をああでもないこうでもない・・と話している様子を私は冷ややかな目で眺めていました。(今さら、計算したところで変わらないでしょ・・っと思って・・)
しかし、これくらいフランス人は年金を受け取れる日を心待ちにしており、今は亡きフランス人の夫も初めて年金の書類が届いた時には(まだまだ定年退職はず〜っと先のことだったにもかかわらず)ものすごく喜んでいたのを、これまた、ちょっとしらけた気分で見ていました。結局は彼は年金をもらう年齢になる前に亡くなってしまったので、彼が亡くなった時には、「あんなに年金、楽しみにしていたのに・・」と、思ってしまいました。
もともと夏のバカンス明けには行われる予定だったデモ・ストライキは、前例のないインフレ(8月は5.9%増)に直面して賃上げを求める当初のスローガンに、この定年延長・年金問題が加わり、さらにヒートアップしています。
インフレだ、節電だと不安定な情勢の中、ただでさえストレスフルでイラつくことの多い現在、だからこそということもあるのでしょうが、このうえ定年退職年齢延長、「もっともっと働け!」と言われて、黙って引き下がるフランス人ではありません。
今回の定年延長問題には、すべての全国労働組合組織(CFDT、CGT、FO、CFTC、CFE-CGC、FSU、Solidaires、Unsa)が動員をかけており、SNCF(フランス国鉄)やRATP(パリ交通公団)などの公共交通機関をはじめ、教職員組合なども部分的に抗議活動に参加し、ストライキも起こっています。
「賃上げ要求!」「定年延長反対!」などとともに、「人生を無駄にして稼ぐのはやめよう!」というプラカードには、「長く仕事をし続けるのは人生の無駄・・そんな年齢まで働いていては、人生を楽しめない!」というフランス人の本質も見えて、なるほど・・と思いました。
自分自身については、もともとフランスで仕事を始めた年齢が遅く、年金の拠出期間を43年間などと言われては、超高齢になるまで働かなければならないため、もともと問題外の話です。
日本にしても、フランスにしても年金についての制度はどんどん変わり、どちらにしてもいいようには絶対に変わりようがないので、思い悩むのもバカらしく、別の手段を考えるようにしています。
しかし、この問題、政府スポークスマンのオリヴィエ・ヴェランは、年金について「この改革は、大統領プログラム全体を発展させるために不可欠だ!」と強気に語っていますが、さっそく野党からの反発も強く、「年金支出は2027年までGDPの14%未満にとどまる。2021年には、わが国の年金制度は9億ユーロの黒字になることさえある!」などと言われて、過半数割れしている政権が押し通すことができるかどうか、節電で暖房も控えなければならない冬が熱いことになるかもしれません。
パンデミック前まで長きに渡り続いていた「黄色いベスト運動」のように、フランスのデモは経済活動の妨げになるケースにまで発展する危険があり、今後、どのように国民と政府が戦っていくのかが注目されます。
しかし、「人生を無駄にして稼ぐのはやめよう!」とは、さすがフランス人、痺れるな〜〜。
フランス定年退職年齢延長65歳へ
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