2022年9月3日土曜日

エネルギー危機が招くデュラレックスなどの工場での冬の間の時短勤務と部分的失業手当

  


 特にエネルギーを大量に消費することを避けられない金属やガラスメーカーは、エネルギー価格の高騰のために、この冬に向けて、工場の閉鎖、縮小、時短操業などの措置に踏み切ることを決定しています。

 強化ガラスの食器の製造のパイオニアと言われるフランスの大手ガラスメーカー・デュラレックス社は、ロワレ地区(パリから160㎞ほどのフランス中心部にある地域)にあるガラス工場で働く約250名を11月から時短勤務にすることを発表しました。

 デュラレックス社は、このエネルギー危機の前(1年前)までは、エネルギーにかかる費用は売上高の5〜7%だったものが、現在では40%を超えているため、このまま通常の工場の操業を続けることは困難だと判断したのです。

 とはいえ、ガラス炉は、完全に停めてしまうと冬場は凍結の恐れがあり、火を落とし続けることはできないため、炉の凍結を防ぐために必要な最低限の時間は操業しなければならないのです。

 この時短操業に伴う、その削減された時間分の従業員の給与は国が負担することになります。パンデミックの際にも適用された部分的失業手当というものです。

 デュラレックスのガラスのコップは、割れにくく、丈夫なことで有名で、フランスの多くの学校のキャンティーンで使用されているもので、日本にも多く輸出されていますが、皮肉なことに昨年から今年にかけての売り上げは30%も上昇しており、デュラレックス社は、この冬の間の生産は減少するものの、商業活動は今後数ヶ月の間のための充分な品質の在庫があるとして、「お客さまには引き続きサービスを提供することができる」また、「この緊迫した時期にエネルギー消費を抑えることで、事業と雇用を維持するとともに、産業界の消費者としての責任について政府の期待に直接応えることができる」としています。 

 政府が、この部分的失業手当を支払うことで、デュラレックス社がエネルギー消費を削減し、かつ会社の存続に希望を繋いだをことで、多くの同業他社や金属・鉄鋼メーカーなどもこの例に続く模様です。

 フランスの鉄鋼グループAscometalも、ブッシュ・ドゥ・ローヌとモゼル県の工場敷地を縮小することを選択し、経営陣は労働組合に対し、11月と12月にそれぞれ3週間の生産中断を発表しました。

 この工場縮小や時短操業でなんとか冬の間のエネルギー価格高騰と消費の対策に努めながら、会社を存続させていく方針を固めたと思われますが、これとて、永久に続けられるものでもありません。

 フランスのエネルギー消費部門全体が、今後も電気やガスを別の価格で購入するための解決策や仕組みを見つける必要があるということです。現在も仕組みはあるものの、今回の値上げの速度を鑑みると、全く不十分であり、この解決策には、政府が大きく関わっていかなければならない問題でもあります。

 エネルギー多消費型企業だけでなく、すべての産業が危険にさらされています。全く大変な時代になっていきます。


デュラレックス時短操業 


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