パリでは、省エネ対策のために、すでに、午前1時から午前6時までの間、電飾広告(広告看板の夜間照明)を禁止していますが、ついに、エッフェル塔のライトアップに関しても時間が短縮されることになりました。
エッフェル塔はフランスのシンボル的存在であり、また、そのライトアップは、最近では、国全体のメッセージを表現するツールとしての役割も果たしており、つい最近では、ウクライナでの戦争が始まった時には、ウクライナカラーに輝いていたり、つい先日、エリザベス女王がご逝去された日は、弔意を示すためにエッフェル塔は消灯されたりしました。
しかし、どんな時でも夜のパリには、エッフェル塔が燦然と輝いており、逆に2年半前の完全ロックダウンで、パリの街中から車も人も消え去り、街全体が死に絶えたような時でもエッフェル塔は変わらず、輝き続けていました。
ロシアからのエネルギー供給が遮断され、エネルギー危機が危ぶまれる中、冬期には、特にエネルギー消費率の高いガラスや金属工場が時短操業に切り替えられることになったりしていると思ったら、今度はエッフェル塔のライトアップの時間も短縮されることになりました。
エッフェル塔の夜間照明は、エッフェル塔全体の年間エネルギー消費量の4%を占めているということで、パリ市は、省エネ計画の一環として、エッフェル塔の夜間照明を1時間強削減することを発表しました。
現在、エッフェル塔は、午前1時までライトアップされていますが、今後は最後の訪問者が帰る時間である午後11時45分に消灯されます。
また、エッフェル塔の外から光を送る336個のスポットライトは、毎日1時間15分早く消すことで、年間約92,000kwを節約することができ、これは40人分の年間平均電力消費量に匹敵する量とされており、また、1時間おきにキラキラとフラッシュされる光が放たれるいわゆるシャンパンフラッシュも午後11時45分でエッフェル塔が消灯されることになると、最終のシャンパンフラッシュは午後11時ということになります。
このシャンパンフラッシュも、30㎡のワンルームマンションに2人で住む場合の年間消費電力量に相当します。
このエッフェル塔のライトアップ時間短縮は、大した量ではないという見方もありますが、これは、ある意味、エネルギー節減の意義を呼びかける極めて象徴的なジェスチャーであり、「これが世界的に有名なモニュメントの役割の一部である」としています。
国民のみならず、エッフェル塔が世界へのメッセージの役割を担っているという言い方も、「これまた、大きく出ましたね・・」と思ってしまうフランスらしいところです。
しかし、この電力問題は、かなり深刻だと受け止めておく方が良さそうで、もともと、電力発電のほとんどは原子力発電で賄っていたと思っていたフランスの原子炉が、実際には、満足に稼働していなかったことが、このエネルギー危機で明らかになっていて、現在、フランスにある56基の原子炉のうち、32基がメンテナンスのための整備中だそうで、半分以上が稼働していない状態です。
本来ならば、フランスは電気をかなり輸出していたはずなのに、昨今、エネルギーに関する協約で、フランスで電力供給が逼迫した時にはドイツが、ドイツでガス供給が逼迫した時にはフランスが援助するという取り決めが行われたと聞いて、おかしいと思っていたのですが、フランス側の原因は、この原子炉のメンテナンスが日頃からできていなかったことにあったのです。
同時にフランスはこの32基の原子炉の復旧作業を急ぐとしていますが、この冬に間に合う感じではありません。
これは、パンデミックが発生した時に、緊急時のために国が備蓄しているはずのマスクの大部分が廃棄処分にされたままになっていた状態と似ています。
緊急事態に備えて、備蓄を整えたり、日頃からあらゆる整備を滞りなく行なっていることについては、フランス人はあまり得意そうではありません。
しかし、最近、夜のエッフェル塔付近の治安悪化が問題になっている今、ライトアップの時間が短縮されることで、夜間にエッフェル塔近辺の人出も減り、犯罪が少しは減少するのではないか?とも考えられ、このエッフェル塔のライトアップ時間短縮がプラスになる面もあるかもしれません。
エッフェル塔ライトアップ時間短縮 省エネ
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