2022年10月1日土曜日

プーチン大統領のウクライナ領土併合宣言の演説

  


 クレムリンの神々しい大きな黄金の扉から、二人の兵士が大きなアクションで扉を開ける派手な演出の中、プーチン大統領が行った演説は再び世界中を騒がせ、フランスでも大騒ぎしています。

 プーチン大統領は、その荘厳な演出とはうらはらに何やらせかせかと壇上にあがり、せっかく、こんな派手な演出をするならば、堂々と威厳のある感じで登場してもよさそうなものに・・と思いながら、私は演説の中継を見ていました。

 今回の彼の演説は、投票が行われる前から多くの国々がパロディだとか、とんだ茶番劇だと言っているドネツク、ルハンスク、ケルソン、ザポリージャでのロシアへの統合に関する住民投票が行われた時点で予想されていたシナリオどおりで、最初にウクライナに侵攻を始めると発表した時のような驚きはありませんでしたが、この演説が再び、周囲の国々からの制裁を強くし、連帯させ、ウクライナへの援助が追加されることになることは、予想がつくはずのことでした。

 プーチン大統領は、この投票の結果を圧倒的多数でこの4地域をロシアに併合することになったと語り、併合地域の4人の代表者と共に、これらの地域がロシアに加盟することを正式に表明する加盟協定に署名した。彼は「国民投票により、何百万人もの人々の意思に疑いの余地がない選択がなされた」と述べ、「ドネツク、ルハンスク、ケルソン、ザポリージアの住民は我々の市民であり、永遠に我々の市民だ ロシアはあらゆる手段で国土を守る」と宣言しました。

 このウクライナ領土4地域併合の公式発表直後、プーチン大統領はウクライナに対して「すべての軍事行動を停止」し、「交渉のテーブルにつく」ことを要求し「キエフは今日、国民の自由な選択を尊重して考慮しなければならない」とウクライナに「停戦」を求める一方で、プーチン大統領は、南部と東部の4地域の併合問題を今後の交渉で取り上げることを拒否するとも断言し、それが「平和に向かう」道への「基礎段階」であると主張しました。

 相変わらず、身勝手自分本位の主張のみです。

 しかし、ウクライナへの停戦呼びかけについて以外は、演説のほとんどは、欧米、特にアメリカを非難する内容のもので、あらためて、この戦争の根源がプーチン大統領の欧米を敵対視する過去のソ連への幻想に取り憑かれているものであることを感じさせました。

 「ワシントンはロシアに対して、「全世界を略奪」し、ロシアを「植民地」にするという「新植民地主義的なドルの独裁を維持」するために戦いを挑んでいる」、ウクライナの同盟国である欧州連合やバルト諸国は、米国の金で動く「奴隷」である」という過激で極端な論法は、逆に欧米を煽っているような気さえしてしまいますが、これは、ウクライナや欧米に向けられたもの以上にロシア国民に向けた、はったりや洗脳である気もしています。

 また、ロシアのガスをヨーロッパに輸送するために建設されたガスパイプライン、ノルドストリーム1および2に大規模な漏れを引き起こした爆発の背後に欧米がいると非難しました。ウクライナ侵攻の最初からの言い逃れと同じ方法で自分でやっておいて、相手の仕業にする戦法?です。

 「あらゆる手段で国土を守る」と述べることで核兵器使用を匂わせつつ、「アメリカは広島と長崎に原爆を落とし、核兵器使用の前例を作った」と自国の領土を守るために核兵器を使用する正当性を持たせるような発言に、アメリカも大激怒。

 これに対して、バイデン大統領は、プーチン大統領演説の直後に「アメリカと同盟国はNATOの領土を隅々まで守る用意がある」「アメリカと同盟国は脅かされることはない」と警告に加え、この派手な式典はクレムリンの指導者の強さを示すための「見せかけ」であり、逆に「彼が窮地に立たされている」ことを物語っている、と述べています。

 一時は、プーチン大統領とも、ほぼ毎日のように電話会談を行っていたマクロン大統領もEUの議長国の任期が切れたこともあるのか、最近はパッタリと彼との電話会談も減りました。しかし、この演説には、他国同様、「ロシアによるウクライナのドネツク、ルハンスク、ザポリジャ、ケルソンの各州の違法な併合を強く非難する。これは国際法およびウクライナの主権に対する重大な侵害である。フランスはこれに反対し、ロシアの侵略に立ち向かい、全領土に対する完全な主権を回復するためにウクライナの側に立つ」と声明を発表しています。

 ウクライナだけでなく、アメリカ、欧州連合、G7、NATOと全てを敵に回し、ロシアが困っている状況なのは、明白で、30万人を部分的動員にと発表したとたんに、国民からも再び反発をくらって、ロシアから出国しようとする人が20万人を超えていると言われる中、必死の抵抗なのかもしれません。

 しかし、プーチン大統領が「いかなる手段を持ってしても守る」のは、ロシアの領土であり、国民ではないことは、突然、動員されて戦禍の盾に使われようとしている国民にも伝わり始め、その国民の士気を高めるため、そして、ウクライナの攻撃を停止させるのが、一番の目的なのだと思います。

 まことに理解し難い言動ばかりのプーチン大統領ですが、この先のシナリオをどう考えているのか?全然、読めませんが、この戦争がこのまま歳を越してしまうのは必須な感じがしてきました。


プーチン大統領演説 ウクライナ領土併合


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