2022年3月7日月曜日

在ウクライナ フランス大使館250万人分のヨウ素剤の用意とウクライナからの国民退避についての国の対応

   


 先日、一時、総理大臣候補とも言われた日本の衆議院議員のツイートで、「ロシアの侵略開始によって、ウクライナ残留を希望しておられた在留邦人約120名の方々は退避を決意して下さったのかと外務省に確認しましたが、ごく少数の方以外の状況はかわっていないそうです。よって、大使はじめ邦人保護に携わっておられる大使館員も退避できず、邦人の安否が心配でなりません。」というツイートを見て、愕然としました。

 戦場となっている惨状の中で退避できない邦人には、余程の事情があるか、余程の覚悟があるはずです。また、ウクライナにいる日本人が「PCR検査で陽性になったために、帰国できない・・」というツイートも目にしています。

 この日本の政治家は、ウクライナの日本大使(大使館員)ではないので、実際に在ウクライナ日本大使館がどのように在留邦人に接しているのかはわかりませんが、日本でも名の知れた政治家のこのような発言の意味は決して小さいものではなく、かなりショッキングなものでした。

 捉えようによっては、「在留邦人のために大使および大使館員が退避できずに迷惑している」ということで、挙句の果てに「邦人の安否が心配でならない」という偽善者めいた言葉が添えられていることに、えも言われぬ不快感を感じました。

 大使館の仕事には、災害や事件などが起こった際に自国民の命を守ることも含まれています。しかし、その命には、その人の人生や生活も含まれています。未だウクライナに残る人は、退避を希望していても、物理的に不可能だという場合は別として、命をかけてでも守りたいものがそこにあるということです。

 非常時ゆえ、退避を勧告するのは、当然としても、残留する人のために大使、大使館員が退去できない・・というのは、あまりの言い方です。これは在ウクライナ大使の発言ではありませんが、この日本の政治家には、ガッカリさせられたのでした。

 一方、昨日、在ウクライナ フランス大使がテレビのニュースのインタビューで、「ウクライナに残留しているフランス人は何人くらいですか?」との問いに、「在留届を出している人ばかりとは限らないので、正確な人数は、把握できていませんが、おそらく300人程度だと思います」と答えています。

 インタビュアーが「その方々の退避の目処はついていますか?」と続けると、「もちろん、退避するフランス人の援助は続けますが、この時点で残留を希望している人々には、それなりの理由もあるので、残留するのも致し方ない」と答えていました。

 一見、見捨てているようにも取られかねない発言でもありますが、大使は、「どちらにしてもウクライナに残って、最後まで国民を守る」と静かに語っていました。個人の生活や人生を尊重して、国民を守ってくれる・・私には、そんなふうに頼もしく感じられました。

 しかし、それよりも、在ウクライナ フランス大使館は、「核の危険のために、250万人分のヨウ素剤を用意」と発表。プーチン大統領がこの戦争で核を使う危険への現実的な対応を開始したのです。

 マクロン大統領は、同日、プーチン大統領と電話会談し、「ロシア軍のウクライナ侵攻がもたらす原子力安全、セキュリティ、保障措置へのリスクについて重大な懸念」を表明し、これに対する具体的な措置が急務であることを伝え、また、国際原子力機関(IAEA)の規則と事務局長の提案に従って、ウクライナの民間原子力施設の安全性とセキュリティが保証されなければならず、その完全性に対するいかなる損害も避けることが絶対的に必要であると強調した」と伝えています。

 また、エリゼ宮は、プーチン大統領が、「IAEAがこの方向で遅滞なく作業を開始することに同意した」と発表していますが、これまでマクロン大統領との会談での同意がプーチン大統領にはことごとく破られていることからか、また、電話会談の感触で危険を感じた結果なのか、この核に対する危険をこれまでよりも切実で具体的な対応を開始したものと思われます。

 250万人分のヨウ素剤の用意など、大使館が独自にできるものではなく、この日のプーチン大統領と会談したマクロン大統領が決断したものであるのは、間違いありません。まさか、そんなことをするはずがない・・そこまではしないであろうという多くの国の予想をことごとく裏切ってきたプーチン大統領、追い詰められて、「窮鼠猫を嚙む」状態になる危険を感じます。


在ウクライナ フランス大使館 ヨウ素剤250万人分手配


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