日本の国会で演説を行ったウクライナのゼレンスキー大統領は、同日、フランスの国会においても、演説を行いました。彼は3月1日の3月1日の欧州議会での演説以来、国際舞台での外交キャンペーンを精力的に続けています。
アメリカ、ドイツ、スイス、イスラエル、イタリアの国会で連日演説を行った後、3月23日(水)は、日本に続いて、午後3時からフランスの国民議会と上院で演説を行いました。
毎回、ウクライナからビデオ会議で、自国語(同時通訳)で、軍用カーキ服を着て自国の旗の前での彼の演説は、スタンディングオベーションを受けていました。
すでに、彼の演説は、それぞれの国にあわせた歴史的な出来事や人物を組み込んでおり、言葉も語調もその聴衆にあわせて語られています。
イギリスでは、ウィンストン・チャーチルやシェイクスピア、アメリカでは真珠湾攻撃や9•11のテロ事件、またドイツではベルリンの壁を引用したかなり強めな訴えと日本では、TSUNAMIという言葉を使ったり、震災における復興にあたった日本の力を讃えたりと、その内容は様々ですが、もともと俳優であった彼にとっては、人に訴えかけて話すことはかれの得意分野でもあります。
しかし、どの国においての演説でも共通することは、聴く人の感情に大きく訴えかけるものであり、今や世界中の誰よりも世界中で演説を行い、その聴衆を引き込んでいくチカラを持った大統領であるかもしれません。
このコミュニケーションは、ウクライナの重要な武器の一つでもあります。真実が拡散するのを恐れて言論統制をしているプーチン大統領と真実を訴えかけるために自ら演説を続けるゼレンスキー大統領とは、まさに対照的です。
フランス国会での演説では、まず、「我々はフランスの援助に感謝しています」と述べ、この戦争にあたって、真のリーダーシップを発揮してくれているマクロン大統領の努力を賞賛し、フランスとその指導者がウクライナの領土保全を維持することを期待している」と述べました。
そして、マリウポルをベルダンになぞらえ、3月9日のマリウポリ産科病院への爆撃は「中世のような残酷な包囲攻撃」だと述べました。「怪我をした女性、足を切断した女性、赤ちゃんを亡くした女性、骨盤を骨折した女性・・医師は彼女を救おうとしたが、彼女は死なせてくれと言っていた。彼女はもう生きる理由がないと思って死んだんだ・・」語り、とフランスの過去の記憶に訴えました。
「ロシアの侵攻から数週間が経ち、マリウポルをはじめとするウクライナの街は、誰もが見たことのある第一次世界大戦の写真のようなヴェルダン廃墟を思わせる」と説明し、「フランスがベルモンドに別れを告げることができたように、私たちも互いに別れを告げることができなければなりません」と述べました。
また、すでに数百社のフランス企業がロシアから撤退したものの、一部は今もロシアで活動を続けていることに言及し、「誰が罪を犯しているか、砂に頭を隠してロシアで金を見つけようとしているかは、皆さんがよくわかっているだろう」とオーシャン(Auchan・スーパーマーケットチェーン)、ルロワメルラン(Leroy Merlin DIYショップチェーン)、Renault(ルノー)グループを引き合いに出して、「フランス企業はロシア市場から撤退せよ」と呼びかけました。これらの企業は「ロシアの戦争マシンのスポンサーであることをやめなければならない」とロシアからのフランス企業の撤退をかなり厳し目に訴えました。
同日、ルノーは、このプレッシャーのため、ルノーのモスクワ工場の操業停止を発表しています。
そして、ゼレンスキー大統領は、「フランスは、真実を大切にし、それを守り続けている国であることをウクライナはよく知っている」と述べ、フランスのモットーとされている「Liberté, égalité, fraternité'(自由、平等、友愛)」という言葉を用い、「ウクライナ人が自由のために戦ってから1ヶ月になる」「我々の軍隊は数の上で勝るロシアに英雄的に対抗している 」と堂々と語り、「自由が失われないために、我々は、十分に武装しなければならない」とさらなる援助と物資支援を求めました。
また、将来の紛争を防ぐために、フランスが「主導的な役割」を果たすべき欧州の「新しい安全保障システム」を構築することを期待していると述べました。
おそらくフランス人に一番、ストレートに響く「自由」「真実」という直球の言葉を使った彼の演説は、どれだけ、フランス人の気持ちに響いたでしょうか?
また、この世界中での演説を巧みに進めていくゼレンスキー大統領の様子を見ながら、日本のトップは、このような説得力のある演説を世界に向けてできるだろうか?とも思ったのでした。
ゼレンスキー大統領演説 フランス国会
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