2022年3月4日金曜日

フランスが3月14日からのワクチンパスポート廃止を発表した理由

   


 昨日行われた国防会議の結果、フランスは、3月14日からワクチンパスポートを撤廃することを決定しました。あれだけ大騒ぎして起用したワクチンパスも、オミクロン株への移行や、それによる感染の急激な減少と、何より「戦争」のために、想像以上に早い撤廃になり、あの騒ぎは一体、なんだったのか?と、なんだか拍子抜けな気もします。

 ここのところ、フランスの報道は、「ウクライナ戦争」でほぼ一色となっており、コロナ関連のニュースはほとんど報道されないようになっていました。それだけコロナ問題はおさまる方向に進んでいたということでもありますが・・。

 年末年始にかけてのフランスは、1日の新規感染者数が30万人超えまでになり、本当に一時はどうなってしまうのか?と思っていましたが、その後、ブースター接種も比較的、順調に進み、感染状況は、どんどん改善してきました。

 2月に入ってテレワークの義務化が撤廃され、2月16日からはディスコ・ナイトクラブの営業が再開され、2月末には、ワクチンパスポートの提示が義務付けられている場所(公共交通機関や医療施設・高齢者施設は除く)でのマスク義務化が解除され、その時点では、ワクチンパスの廃止は、医療状態が平常状態に戻った場合には、3月末か4月に可能になるかもしれないと発表されていました。

 当時、フランス政府はカナダで起こっていた「ワクチン接種義務化に反対する大規模なデモ「自由の車列(Freedom Convoy)」がフランスに飛び火しそうになっていた状況を非常に警戒しており、それまでの予想以上に早い制限の撤廃の予定を発表したのですが、その時点では、まだ、慎重な態度も崩さず、政府報道官のフライング気味の発表に、慌ててオリヴィエ・ヴェラン保健相が「屋内マスク義務化を撤廃するには、集中治療室の患者数が1,500人を切った場合」と具体的な基準を示し、「ワクチンパスポート撤廃はさらにそれ以降、科学的な検証に基づいて慎重に行う」としていたのです。

 一時の状態が酷すぎたこともありますが、現に感染状態が改善しているのは事実、しかし、集中治療室の患者数は、減少したとはいえ、未だ2,400人前後に留まっている現段階では、目標数値には達しておらず、政府の本意ではなかったはずです。

 しかし、今度は、カナダでの大掛かりなデモどころの話ではない、ウクライナとロシアの戦争に、それどころではなくなったというのが正直なところであると思われます。

 「ワクチンパスポートの廃止」は、戦争の影響による緊迫する政情やエネルギー価格をはじめとする、さらなる物価の上昇で、国民の不満、不安が爆発することが考慮されたのだと思います。

 幸いにも感染状態は急激に改善しているために、ワクチンパスによる抑圧から国民を早めに解き放つことで、少しでもストレスを減らそうと予定を前倒しにしたと思われます。

 ただし、ワクチンパスポートは全面的に撤廃されるわけではなく、公共交通機関や医療施設、高齢者施設等では、ワクチンパスポートの提示が義務付けられ、公共交通機関でのマスク着用義務は据え置かれます。

 今のところ、屋外マスク義務化が撤廃されたわりには、マスクをしている人はけっこういるな・・という印象ですが、このワクチンパスポートの撤廃が、今後、どの程度、感染状況に影響するかは、未知数です。

 WHO(世界保健機構)は、パンデミックにより、コロナウィルスによる直接的な罹患だけでなく、メンタルヘルスにも大きく影響をおよぼしており、世界中で不安やうつ病のケースが25%以上跳ね上がったと発表しています。

 ほんとうに、パンデミックも終わらないうちに、毎日毎日、戦争での悲惨なニュースばかりで、ニュースを見るだけでもメンタルがやられそうになる感じです。私自身は、ワクチンパスを持っているし、マスクが撤廃されるよりも依然として感染の危険の方が怖いので、現状での感染対策を全く不満には感じてはいませんが、この戦渦に、少しでも抑圧から解放されるのであれば、今のフランスの感染状況ならば、悪くない決断なのかもしれません。

 実際に、これはフランスでは久々の明るいニュースで、本来ならば、大々的に取り上げられ、「よかった!」とか、「まだ、早すぎる!」などと、喧々囂々となるところなのですが、この朗報?でさえも、ニュースのほんの一部にしかならずに、ほぼほぼ、報道の中心は「ウクライナ戦争」です。

 この「ワクチンパスポート廃止」による感染再拡大・・なんてことになれば、戦争×パンデミックで、とんでもないことにもなりかねません。

 しかし、これは、あくまでも私の見解ですが、今回のウクライナ戦争に関しては、戦争から派生するフランス自国への被害はもちろん少なくはありませんが、フランス人にとって、民主主義の侵害という側面を持ったこの戦争に対しては、身を挺してでも戦うべきことでもあるわけで、その意味ではフランス政府がロシアに対して行う制裁のために起こるインフレよりも、ワクチンパスよりも「民主主義の侵害」「自由の侵害」は、根本的に許せないことであり、国民の怒りの矛先はプーチンに向かい、この敵を糾弾するエネルギーが勝るような気がしています。


フランス ワクチンパスポート廃止

 

<関連記事>

「3月中旬の屋内でのマスク着用義務撤廃の基準」

「次のステップに進むフランスの感染対策規制緩和 ディスコ・ナイトクラブ再開」

「自由の輸送団(Convoi de la liberté)への政府の大規模な警戒」

「「フランスのワクチンパスポートは3月末から4月には解除できる」と政府が発表した理由」

「戦争づくめの報道とウクライナカラーになっているエッフェル塔」 

「プーチン大統領の演説にフランスの大統領選挙報道が吹っ飛んだ!」 


 

0 コメント: