2022年3月17日木曜日

マクロン大統領のゼレンスキールック

   


 今週の始めにマクロン大統領がSNSに、明らかに今やウクライナの英雄的存在となっているゼレンスキー大統領を意識したと思われるラフな出立ちで登場したことが話題になっています。

 目の周りの隈、髭も剃らずに乱れた髪、ジーンズと黒いパーカー姿のマクロン大統領は少なくないインパクトを国民に与えています。

 共和国大統領の公式カメラマン、ソアジグ・ドゥ・ラ・モワソニエール氏が自身のインスタグラムアカウントで、エマニュエル・マクロンの一連の写真を「日曜日 13/03/2022 - 夜遅く - エリゼ宮 - 国際電話中の @emmanuelmacron」というキャプションとともに公開したのです。

 マクロン大統領は、オルレアン近郊に拠点を置く空軍第10軍(CPA10)のロゴが入ったパーカーを着ています。

 パリッとしたシャツにダークスーツという、マクロン大統領に慣れ親しんでいるクラシックなスタイルとはかけ離れたカジュアルな服装には、いろいろな憶測が飛び交い、大統領選の第一ラウンドまで1カ月を切った今、選挙戦に臨むアピールとも思われ、何よりも、この彼の出立ちは、最近、SNSを巧みに利用し、世界に向けて発信を続け、英雄的な存在となっているウクライナのゼレンスキー大統領を彷彿とさせるものがあり、「ゼレンスキールック」と揶揄する人もいます。


 このSNSの投稿には、「ゼレンスキーを気取っているつもりか!」「バカバカしさの極み!」「2日前はEUのVIPたちとヴェルサイユ宮殿で宴会をしていたのに、今度は3ヶ月間雪の下で戦っていたかのように振る舞っている!」「フランスを動かしているのは、この知恵遅れでナルシスト!」などなど、厳しい非難の声も多数、上がっています。

 かねてより、コミュニケーションの達人と呼ばれ、自らツイッター、インスタグラム、TikTokのアカウントを持ち、あらゆる発信を続け、人気ユーチューバーのチャンネルに登場したりと、SNSを広範囲で利用してきたマクロン大統領ですが、戦渦で命を狙われながら鬼気迫る強力な発信を続けるゼレンスキー大統領にのっかるようなこのゼレンスキールックの発信には、反発を感じる人も少なくなかったようです。

 しかし、実際に、これは、休日であるはずの日曜日の夜のこと、戦渦を逃げ回ることはなくとも昼夜、休日問わずに働き続けているマクロン大統領の目の下の隈は、リアルなのではないか?と思います。

 いずれにせよ、これだけ話題をさらうということは、彼のアピールにはつながっているのだし、口の達者なマクロン大統領なら、「ウクライナとの連帯の気持ち」などと、容易にかわせるものであるでしょうが、彼自身は、沈黙を保っています。

 このような反応にいちいち応えているほど、彼も暇ではないでしょう。

 私は、むしろ、このような休日のラフなスタイルが逆にしっくり似合っている若くてエネルギッシュな大統領を単純に羨ましく思っています。

 以前、コロナウィルスの感染対策のためにステイホームを呼びかけるために、日本の元首相が流したSNSでの発信に比べたら、どれだけカッコいいか?と思ってしまうのです。

 しかし、休日には、ゼレンスキールックに身を包んでいるマクロン大統領のもとには、ウクライナのペトロ・ポロシェンコ前大統領からキエフへの招待状が・・。

「マクロン大統領のキエフ訪問は、非常に大きな連帯の象徴となるであろう」「彼が勇者であることは知っている」と・・。

 激務に追われるマクロン大統領が危険を冒してキエフを訪問することは、あまり現実的な話ではありませんが、こんなSNSが流された直後のことで、なんだか、ちょっと皮肉な感じも受けてしまう結果となりました。


ゼレンスキールック マクロン大統領の休日



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