WHO(世界保健機構)は、フランスをはじめとするドイツ、イタリア、イギリスを含むいくつかのヨーロッパ諸国があまりにも急激に感染対策を解除してしまったことに警告を鳴らしています。
WHOによると、ヨーロッパの新規感染者数は1月末にピークを迎えた後、急激に減少していましたが、3月に入ってから一転して増加傾向にあります。感染症専門家によると、このリバウンドは、特にオミクロンBA.2亜型の優勢によって説明されるといいます。
この7日間で、WHOヨーロッパ地域で510万人以上の新規感染者と12,496人の死亡者が記録されています。「特に増えているのは、イギリス、アイルランド、ギリシャ、キプロス、フランス、イタリア、ドイツである」と指摘しています。
しかし、一方では、WHO欧州ディレクターであるハンス・クルージ氏は「今のところ警戒してはいるものの比較的楽観的に見ている」とも発言しています。
楽観的になれる理由としては、ワクチン接種の拡大による効果と、これまでの経過で爆発的に感染が拡大したために、ヨーロッパ市民にかなりの免疫がある点を挙げています。それに加えて「冬が終わるので、狭い場所に人が集まりにくくなる」という点もしています。
そして、オミクロンの変異型は、「ワクチン接種の少ない国では、依然としてリスクの高い病である一方で、ブースター投与を受けた完全なワクチン接種者にとっては重症化するリスクが低い」とも指摘しています。
しかし、現実のところ、これまで慎重な態度を取り続けてきたヨーロッパが現在のように感染対策の急激な緩和に踏み切ったのは、これまでの感染拡大回避のための規制による制限と経済復興のバランスをどう取っていくのかという面のみに注力していたことに加えて、「ウクライナ戦争による混乱」が加わり、正直、戦場はウクライナであるものの、いつ具体的な火の粉がふりかかるかもしれない地理的、政治的な関わりや、ロシアへの経済制裁の煽りからの急激なインフレ、数十万単位で押し寄せてくるウクライナからの難民や、ついには核兵器がつかわれるかもしれない恐怖は、ヨーロッパの人々にとっては、コロナウィルス以上のものであるという現実なのです。
その結果が、この急激な感染対策緩和につながっているのですが、WHOとしては、おそらくヨーロッパの立場があまりピンときていないことから生まれるこの警告。
ヨーロッパのコロナウィルス感染状況を鑑みれば、この感染対策規制の緩和は、客観的には、あまりに急激で唐突なものであるに違いありませんが、ある程度は、感染は増加しているものの、ピークは超えたと思われるコロナウィルスへの対応が少し緩くならざるを得ないのかもしれません。
ワクチン接種に加えて、ヨウ素剤の準備などが行われるなか、ヨーロッパは、コロナウィルス感染対策に加えて、経済復興、戦争への対応という3つのバランスをとりつつ進んでいかなければならない結果がになっています。
このバランスが多少、崩れていることは事実で、ワクチンパスやマスク着用義務を撤廃する一方で65歳以上の4回目のワクチン接種を開始。このアンバランスさにフランス政府の焦りも感じられます。
とはいえ、コロナウィルスは、戦争でさえ容赦はしてくれないもの、少しでも気を緩めれば、またこの戦時下に再び新しい感染の波を迎えないとは言い切れず、ここは、冷静にどちらも対処してもらいたいものだと思っています。
WHO警告 ヨーロッパ感染対策規制解除 ヨーロッパ感染増加
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