ジュネーブで開かれた国連人権理事会でのロシア外相演説で退席する外交団 |
緊迫するロシアのウクライナへの侵攻が続く中、世界中の国々がロシアを避難し、ロシアへの制裁に加わり、その輪が広がっています。
最初は、ロシア対ウクライナ、アメリカ間でのせめぎ合いに、フランスのマクロン大統領が仲介に入ってロシアへの説得を続け、プーチン大統領とバイデン首相の話し合いの段取りをつけた直後に、ロシアがウクライナへの侵攻を開始したのには、世界中が驚愕しました。
当初からロシアがウクライナに侵攻した場合の制裁を宣言していたアメリカに続き、イギリス、ドイツ、フランス・・から、その制裁参加国は、いつしかG7(日本、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ)に広がり、今や32カ国がロシアへの制裁に参加していると言われています。
これまで、武器供与などに関しては消極的な態度をとっていたドイツもドイツ自身にとっても歴史的な変換と言われる「国防費を昨年の倍以上の1,000億ユーロに大幅に増加させる」という大きな決断を下しました。
ロシアは、ウクライナへの侵攻により、結果的にウクライナとの間での争点のきっかけとなったNATO(北大西洋条約機構)参加国以外の国までも敵に回し、EU加盟国でありながら、NATOには加盟していないフィンランドやスウェーデンがウクライナに武器を供与する方針を発表しています。
いずれの国(フィンランド、スェーデン)も、これまで紛争国に武器を送らないという方針を長らく貫いていた国であり、フィンランドやスウェーデンにとっても歴史的な決断とされています。
また、永世中立国であるはずのスイスでさえも、EU(欧州連合)が課した経済制裁を全面的に適用することを発表。
英ガーディアン紙によると、スイス国立銀行には、ロシア関係の預金額が112億ドル(約1兆2800億円)に上ると言われています。ロシアの富裕層の隠し資産の最大の拠点であるスイス銀行までもが資産凍結という事態はさすがのプーチン大統領も予想できていなかったのではないかと思います。
プーチン大統領は、アメリカ、G7、NATOのみならず、世界の多くの国を敵にまわし、ロシア国民でさえも「この戦争をロシアの侵攻とは言わないでほしい(プーチンの侵攻と言ってくれ!)」と叫び、背を向けられ始め、四面楚歌に近づいています。
まさに共通の敵を持った世界中の国々が一見、結束しているようにも見えますが、一方では、共通の敵で団結したグループの繋がりは脆弱で長続きしないとも言われます。
現在のまさに戦渦、共通の敵ロシアに制裁を行うことは必要なことであると思われますが、この機に、これまでの掟破りに踏み切った国々が、これまでの蛇口を緩め、今後、どのように変化していってしまうかということも不安なことでもあります。
フランス国内でも、国民の目がウクライナ戦争に関する注目が集中し、大統領選挙に関する報道は大幅に削られています。
大統領選挙の公示期限が迫った現在でも、マクロン大統領は立候補を正式に表明する時間もなく、(昨日も日本の岸田首相をはじめ、アゼルバイジャン、フィンランド、リトアニア、インドの首脳と電話会談)、ましてや選挙活動なども全くできていないのですが、大統領選挙に関する世論調査では、マクロン大統領の支持率は、これまでの最高となっています。
マクロン大統領は2月にモスクワでプーチン大統領と会談したほか、ウクライナのゼレンスキー首相、プーチン大統領、バイデン大統領の他、世界の首脳と長時間電話対談を行い続けており、削られている大統領選挙の報道のかわりにマクロン大統領の活躍が逆にクローズアップされ、ウクライナを応援するフランス国民心情が、マクロン大統領への評価に繋がっているとも言えます。
現在、プーチン大統領はフランスの国民心情としても敵であり、その共通の敵と世界の首脳をリードして戦うマクロン大統領は、共通の敵を持つ頼もしい同士・リーダーと見られている感じがあります。
実際に今回のマクロン大統領の活躍はめざましいものではありますが、この「共通の敵」への盛り上がりは、世界にしても、フランス国内にしても、そして、ごくごく身近な私たちの人間関係におきかえても、考えさせられる面を孕んでいるような気がするのです。
共通の敵 ウクライナ戦争 フランス大統領選挙
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