「我々は、戦争状態にある」とマクロン大統領がパンデミックの始めのロックダウンの際の演説を行ってから、そろそろ2年が経とうとしています。ウィルスという目に見えない敵相手の戦争状態は、この間のいくつかの波を超え、ワクチンという武器を持ち、一時のような緊張状態ではなくなりました。
しかし、最初のロックダウンの際は、まだどのようなウィルスであるのかも、よくわからずに、外出もほとんどできずに、みるみる病床が埋まり、患者は病院の廊下に並べられ、ついには、野戦病院のようなテントまで建てられ、呼吸器やマスクなどの医療物資が足りずに、到着するマスクが警察の先導で運ばれる様子や、ひたすら家に閉じ込められ、外からは、救急車のサイレンが途切れることなく聞こえてくる中、まさにこれが「戦争状態」というものなのか?と思ったりもしました。
私が子供の頃は、「戦争を知らない世代」などという言葉が使われていたりしましたが、人の一生のうちには、なんらかの戦争に匹敵するくらいの大変な惨事に見舞われることになっているのだろうか?などとも思いましたが、これは目に見えないウィルスとの戦争で、襲っていかかってくる相手が同じ人間である戦争は、ことさら恐ろしいことなのだろうと思っていました。
しかし、現在のウクライナとロシアの緊張状態は、アメリカやヨーロッパを巻き込み、本当の戦争になる緊迫した状態が続いており、海外で生活する身としては、ことさら、他人事ではいられない恐ろしさを感じています。
このロシア・ウクライナ問題に先日、マクロン大統領がクレムリンまで出向き、戦争回避のための話し合いに、プーチン大統領との会談に臨みましたが、5時間近い会談にもかかわらず、確かなことは、「その後も話し合いを続ける」ということだけで、決定的な解決には至りませんでした。
そもそもこの会談、プーチン大統領とマクロン大統領の会談の広い横長のテーブルの端と端に座る極端に離れた距離が話題を呼び、この距離は、後に、マクロン大統領がPCR検査をDNA情報を渡すことを恐れて拒否した結果と言われていますが、感染対策ならば、これだけの距離を取らずとも、いくらでも、方法はあったであろうに、あまりに不自然な距離。
ロシア側は、わざわざ出向いているマクロン大統領との会談を少しでも遠ざけ、相手のペースを乱そうとしていることの表れでもあります。
この会談の後、マクロン大統領は、帰国の際の大統領選用機での記者団の取材に応じ、「この危機に関わるすべての国家に対して「具体的な安全保障の構築」を提案した」「状況の悪化やエスカレートがないことを確認した」と述べているものの、「プーチン大統領は自分の曖昧さの一つ一つを利用している」と語っています。言わば、ロシアは、明快な解決策を見出すことを避けているということです。
アメリカもヨーロッパも、ロシアがウクライナに新たに攻撃を仕掛ければ、クレムリンに壊滅的な制裁を採用することになり、恐ろしい結果になると警告してます。特にアメリカとドイツは、ロシアが攻撃した場合に課すべき制裁について「絶対的に一致」しており、両国は「同じ措置」を取るとしています。
マクロン大統領は、フランスは欧米の同盟国と「協調」していると主張し、ウクライナへの扉を閉ざすことになるNATOの拡大政策の終了を求めるクレムリンの要求を拒否していますが、マクロン大統領は、ウクライナ人抜きでウクライナ問題を解決することは考えられないと主張しています。
昨日、プーチン大統領とマクロン大統領は再び2時間にもわたる電話会談を行なっていますが、平行線のままの模様。口が達者で論破が得意なマクロン大統領もEU議長国の長として、必死に対応しようとしていますが、現在のところ、肩透かしを食っている感じです。
アメリカやヨーロッパの警告をよそに、ロシアが振り上げた手を下ろすことがなければ、本当の戦争が始まってしまいます。
パンデミックというウィルスとの戦争が終わらないままに、本当の戦争が起こるかもしれない状況に、海外で生活している状態の者にとっては、外国人であるという立場は余計に不安が募ります。
パンデミックという戦争状態で、多くの犠牲者を出し続けているにもかかわらず、人と人が争い、さらに多くの犠牲者を出すことが確実な戦争がおこるかもしれないことは悲しいことです。
おりしも、フランスは現在、カナダから触発されたデモで街中には戦車まで登場する殺伐とした状況、平和を叫びながら戦争を起こそうとする人間の罪深さはウィルス以上かもしれません。
ロシア・ウクライナ問題 戦争
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