2022年2月3日木曜日

日本の雑誌のパリ特集と電気・ガス料金・高速料金値上げ(2022年から変わること)

  


 日本の「家庭画報」という雑誌の新刊の「パリ特集」の記事がパリ在住の人に、かなり衝撃的であったというツイートが舞っています。私は、その雑誌の記事を見てはいないので、多くを語ることはできませんが、「あれは、もはやSFに近い・・」「プチ贅沢どころではなく、あまりに特別な世界・・」「私の住むパリじゃない・・」などのツイートから、なんとなく、内容は想像がつきます。

 それを100%否定するつもりはありませんが、きっとそれは、あまり現実的なものではありません。

 しかし、日本でこういう記事が出続けることで、フランスに興味や憧れを持ってくれる人がいて、フランスに良いイメージを抱いてくださる方がいることは、フランスにとっては有難いことに違いありません。

 たまに旅行で来るならば、その夢の世界に近い世界での時間を過ごすこともできるかもしれませんが、おそらく、恐ろしく高額な旅となることと思います。

 フランスのインフレ率は、エネルギー価格の高騰を背景に2021年全体では1.6%に加速し、2018年以降で最も高い水準となりました。昨年の12月、1ヶ月だけで、消費者物価は前年比2.8%上昇したと言われ、多くの人が物価の高騰に喘いでいるのが現実です。

 そして、2月からは、電気・ガス料金、高速道路料金、タバコなどが値上げになります。

 電気料金は、1.6%(一般家庭用)、2.6%(商業用)の値上げ、ガス料金は平均3.5%値上げ、高速道路(有料道路)料金は、約2%値上げされます。これらの基本料金が値上げされることにより、そこから派生する商品やサービス全てが値上げされつつあります。

 昨年末の段階で、フランス政府は、所得の少ない人に対して、(月収2,000ユーロ以下のフランス人3,800万人)「インフレ・ボーナス」の支給を発表し、すでに配布され始めていますが、これは、恒久的に継続されるわけではなく、一時凌ぎになるだけで、その先は、このインフレの煽りをもろに食い、生活が締め付けられていく人が増えていくのは、明白です。

 一方、非課税貯蓄預金(Livret A)の利率は、これまでの0.5%から1%に引き上げられ、所得の少ない人のための預金(Livret d'épargne populaire (LEP))は、現行の1%から、2%に上げられます。

 しかし、この預金(Livret A)は、2011年には、2.25%であったものが、その後グングン下降し続け、昨年までは、過去最低の0.50%にまで下がっていたものが、少し盛り返しただけで、物価の上昇には、はるか及ばず、多くの人は、いくら預金の利率が上昇したところで、預金に回せなくなるのが現実です。(しかし、日本の銀行の利率から比べればまだ、マシかもしれませんが・・)

 その他、2月から変わることの中には、全く違う内容のものも含まれています。新生児の保護者に産科病棟では、おくるみ、アルバム、ベビーソープ、保湿剤、育児解説書などが入っている「ベビーボックス」(実際には箱ではなく、ショルダーバッグに入っている)の配布が開始されます。

 また、物価の上昇とは無関係ですが、オートバイの事故率が増加していることから、自動車が走る2車線の間をオートバイが移動することが禁止されます。

 たまたま、昨日、近所のコマーシャルセンターの近くを通りかかった時に、かなり高齢のホームレスと思われる女性が近くに座り込んでいて、物乞いをするわけでもなく、ただうなだれて寝ているのか、目を閉じているだけなのか、じっとしている様子を見かけて、投げ出している足に履いている運動靴は破れて穴があいているのを見て、声をかけるのもなんとなく躊躇われたものの、家に戻っても、なんだか気になり、家にあった使用していなかった運動靴を持って、「もしよかったら、これに履き替えませんか?」と言いに行ったのですが、彼女は、「ご親切にありがとう。でも、結構です。」と言いながら、放心した表情で、どこから手に入れたのか、パンを黙々と食べていました。

 我が家の近所で、彼女のような人を見かけるのは、珍しいことなのですが、これもパリの現実でもあるのです。インフレ以外にも理由はあるのでしょうが、悲しい光景です。

 2月からのさらなる物価の上昇で、パリの現実は、日本の雑誌のイメージから、さらにかけ離れた部分が広がるかもしれません。

 先日のドラッグ問題にしても、貧困の問題にしても、実際に生活していると、どうにも負のイメージが強くなりがちで、日本の雑誌の内容が、逆にパリに住む人間としては、衝撃的に感じてしまうのかもしれません。


インフレ 電気料金値上げ ガス料金値上げ 家庭画報 パリ特集


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