2021年10月25日月曜日

燃料費の急激な高騰のためにフランス政府が緊急に支払う100ユーロのインフレ補償手当

   


 パンデミック以来、ロックダウン等により、停滞していた経済が想像以上の速さで回復しつつあったフランスで、今回の燃料費を始めとする物価の急激な上昇は、見過ごすことができない問題として急浮上してきました。

 日常生活に直結するこの急激な物価の上昇にフランス国民がおとなしくしているはずはありません。

 すでに、先週末には、夏以来、続いてきた「ヘルスパス反対」のデモとともに、黄色いベスト運動が、この燃料費・物価の上昇に対するデモを開始しています。

 フランス政府はこれを棄ておけない状況であると判断し、カステックス首相は、このインフレに対応する措置として、「月収2,000ユーロ(約26万円)未満の国民に対し、100ユーロ(約13,000円)のインフレ補償手当を支給する」ことを発表しました。

 この100ユーロの「インフレ補償手当」支給には、3,800万人のフランス人が該当しています。

 カステックス首相は、「価格の上昇に直面して、政府は最も公正で効率的なシステムを選択した」と説明しています。これには、就業者、従業員、自営業者、失業者だけでなく、奨学金を受けている学生、年金生活者などの多くの人が対象になります。

 このインフレ補償手当は、家族の構成や車を所有しているかどうかに関わらず、1人当たり100ユーロが支給されます(非課税)。この手当は個別に支払われるため、例えば、夫婦で双方が2,000ユーロ未満の収入の場合には、200ユーロが支給されます。

 この2,000ユーロの基準額は、税務世帯の規模ではなく、1人あたりに決定されたもので、労働者の半数以上と退職者の70%をカバーしていることになります。また、私は都市部に住んでいるので、さほど車の必要性を感じることはありませんが、フランスでは、現在、84%の世帯が車を所有しているため、特に燃料費の高騰は多くの世帯にとって、切実な問題であるのです。

 すでに高騰している物価のため、この措置は緊急性を帯びていることから、この資格に該当する者には、特別な申請等の手続きは必要なく、2021年12月から2022年2月の間に、自動的に支払われます。

 しかし、これは、恒久的な補償ではなく、差し迫った状況にある中産階級への財政的な後押しであることは言うまでもありません。

 100ユーロ支給の価格について、政府は、車を頻繁に利用する人の値上がり分の費用を80ユーロ、追加の20ユーロは他の物価上昇(食品等)のインフレを補うと見積もっています。

 この緊急措置に必要な金額は38億ユーロとされており、そのための資金として増税が心配されていますが、政府は、このインフレ補償手当を行うことで、消費を停滞させることなく国民が消費することで、価格が上昇している分、追加になる消費税で10億ユーロは回収できるとしており、残りの28億ユーロについては、2021年の経済回復率が6.25%に上方修正されたことにより、特に増税することなく、回収可能な金額であると説明しています。

 フランスのお役所仕事は、本当にトラブルも多く、時間もかかるのが普通ですが、税金やお金に関することは、きっちり漏れなく請求も来るし、支払われるべきものは、きっちり支払われます。

 ロックダウン中の営業停止などのための補償金なども、大きなトラブルが起こったという話を聞くこともなく、早急に支払われていました。

 これは、全ての情報が全てオンライン化され、個人個人の納税状況などが全て把握されているからこそ可能だったわけで、今回の「インフレ補償手当」も同じように支払われるものと思われます。

 同じお役所でも税務署(財務省)だけ、どうして、こうもきっちりしているのだろうか?と思いますが、徴収される場合だけでなく、支払ってくれる時には、ありがたいことです。

 決して黙って我慢はしない国民を抱えたフランス政府は、この燃料費の高騰により、2018年に起こった過激な「黄色いベスト運動」の二の舞にならぬよう、即刻に緊急措置をとったのだと思われます。

 放置すれば、物価の上昇による経済停滞だけでなく、暴徒化するデモにより、さらに状態は悪化する可能性を秘めているのです。

 それにしても、この対応措置の速さ!スゴいです。


フランスの補償 燃料費高騰


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