2021年10月3日日曜日

ブレグジット(Brexit)がもたらす混乱 M&S(マークス&スペンサー)がパリから消えていく

  


 2020年12月31日をもって、イギリスがEUを離脱し、ある程度の部分での猶予期間が設けられていたものの、着々と離脱の現実が表れ始めています。

 これまでEU圏内の国民に対しては、EU圏内の移動に関しては、IDカードのみで可能であったものが、10月1日から、イギリス入出国に関しては、パスポートが必要になることになりました。

 パンデミック以来、途中、英国変異種の出現などもあり、特に、このブレグジット云々以前に、イギリスとの行き来が制限されたりして、ことさらブレグジットに注目されることはありませんでしたが、少し感染状態が減少してきた今になって、徐々にこのブレグジットによる影響が注目されるようになってきました。

 陸続きではないとはいえ、ユーロスターで2時間ちょっとで行けるパリ⇄ロンドンは、フランス人にとっても、イギリス人にとっても相互に人気の観光地でもありました。ロンドンに行って、買い物をしていたりすると、びっくりするくらい周囲からフランス語が聞こえてくるのに驚いたことがあります。

 現在は、パスポート云々以前に、イギリスへ行き来するには、イギリスで課している感染対策(ワクチン接種をしていても、入国後2日目にPCR検査が必要で、しかもイギリスでのPCR検査が高額(フランスでは現在のところ無料)なために気楽にイギリスに観光に出かけるフランス人は少ないと思われます。

 EU圏内ならばIDカードで行き来できるため、フランス人のパスポート所持率は意外に低いのです。わざわざパスポートを取得しなければならなくなるとなると、フランス人にとって、ロンドンは、これまでのように気楽に出かける場所ではなくなる可能性もあります。

 これまでIDカードで済んでいたものがパスポートが必要になることは、想像以上にフランス人にとってのイギリスとの行き来のハードルを上げることになるかもしれません。(フランスでのパスポート取得には、大人86ユーロ、15〜17歳は42ユーロ、15歳以下で17ユーロがかかります。)

 それ以上に問題なのは、実際にフランスに居住しているイギリス人、イギリスに居住しているフランス人が在留許可を取得しなければならない点です。(フランスには、約13万人のイギリス人居住者がいると言われています)

 ただでさえ、常時、滞って問題が積載されている在留許可の手続きに新たにイギリス人が加わることは大変な問題です。これは、フランスだけでなく、EU圏内どこの国にも起こってくる深刻な問題でもあります。

 また、これにより、イギリスでは、多くのEU圏内から移住していたトラック運転手が本国に帰国したり、他国へ移住してしまったことで大幅に不足していることから、物流が滞り、特にガソリンの供給に支障をきたし、パニック状態に陥っているといいます。

 ブレグジットにより滞っているのは、ガソリンだけではなく、食料品などにも影響が出ています。イギリス大手スーパーマーケットM&S(マークス&スペンサー)は、イギリスからEUへの生鮮食料品及び冷蔵製品の供給のための複雑で長い時間を要する手続きから、フランスにある20店舗のうち11店舗を閉鎖することを発表しています。

  

すでにM&Sの店内の商品はガラガラ状態

 これは、個人的にも大変、ショックな話で、M&Sは、フランスにあるスーパーマーケットの中でも、イギリスのものが手に入るお気に入りのお店だっただけにとても残念で、つい先日、近くを通りかかって、お店に入ったところ、すでに店内には充分な商品はなく、ガラガラ状態・・フランスにあるM&Sの多くが閉店してしまう話を聞いていたので、店員さんを捕まえて、「ここのお店も閉めてしまうの?」と聞くと、今年いっぱいで閉店とのこと。

 どうやら、残されるのは、駅や空港にある店舗のみのようです。

 EU加盟時にも、ユーロの通貨は使用せずに自国の通過であるポンドを貫き通したイギリスだったので、他のEU加盟国とは、一線を画した感じではありましたが、実際に40年以上も続いたEUを離脱したとなれば、これまで自然な流れで進んでいたことに様々な場面で変更しなければならない規制が出てくるのです。

 考えてみたら、EUというのは、不思議なもので、違う国でありながら、EUとして大きく括られていて、外国でありながら、他の外国とは違う関係。

 結婚する時よりも別れる時の方がエネルギーがいるなどと言いますが、イギリスのEU離脱もなかなか時間もエネルギーもいることなのかもしれません。



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