2020年2月5日水曜日

まずいイギリスの食事の懐かしく甘い記憶




 今、娘が今年の夏のイギリスでのスタージュのために、ロンドンのアパートを探しています。しかも、娘の行く学校が、以前に、私自身がスタージュのためにロンドンで生活をしていた South Kensington(サウス・ケンジントン)という場所だという偶然も手伝って、最近は、もう、娘がどこへ行くとしても、あまり、首を突っ込まない私も、懐かしさもあって、娘のロンドンでのアパート探しの様子にちょっと首を突っ込んだりしました。

 アパートといっても、スタージュは、3ヵ月だけなので、短期の賃貸を見ていると、ロンドンは、物価も高く、なかなか手頃な物件が見つからない中、娘が学生向けのレジデンスのような物件に目をつけて、しかも、学校まで歩いて行けそうで、かつ手頃な値段の物件を探し出し、ジムなども付いていて、しかも、2食、3食付きとあるのに、ビックリしたのです。

 この値段で、2食、3食付き・・2食は、まだ理解できるとしても、3食とも、家で食事する人って、老人用のケアーホームじゃあるまいし、どんな生活を送る人なんだろうか? とか、この値段での3食って、想像するだけでも、恐ろしい食事だろうと思ったのです。

 イギリスでの食事を思い浮かべた時に、私には、以前、自分が体験したイギリスのまずい食事の記憶が鮮明に蘇ったのです。

 私がイギリスに渡って、最初の一ヵ月は、ホームステイで、イギリスの家庭の食事にほんとうにウンザリした記憶があり、その時のウンザリした食事をまざまざと思い出したのです。

 後にも先にも、あんなに食事にウンザリした記憶はなく、朝のカリカリに焼いたトーストやベークドビーンズや卵、ふにゃふにゃしたソーセージは、まだ、良いとしても、夕食の焼いたか煮たかわからないような、オレンジ色がかった茶色いソースがかかった肉に、溶けて半分、粉状になったようなグリンピース、噛めば、ジャリジャリと音がするようなケーキのデザートなど、1日も早く自炊できるアパートをと必死にアパート探しをしたものです。

 しかし、今から考えてみると、あれだけまずい未知の食事の経験は、決して、嫌な記憶ではなく、むしろ、長い一生のうちに、期間限定であるならば、後から、振り返ると、若い時だからこそできる、なかなか良い経験だったと思うのです。

 その後、一人暮らしを初めてからも、どうしたら、こんなにまずいものが出来上がるんだろうか?と不思議になるほどまずいカップヌードルや、何の肉を使っているのかわからないようなスコッチエッグなど、数々のまずいものに遭遇しましたが、今では、そんな、イギリスならではのまずい食べ物にも、おかしな郷愁を持っています。

 私が、未だに、パリでも、M&S(マークスアンドスペンサー)(イギリスのスーパーマーケット)が好きなのは、あの頃のことを懐かしく思う気持ちがあるからなのだと思います。

 とはいえ、M&Sは、それでも、高級な部類のスーパーマーケットで、しかも、その中から、自分の許容範囲内で懐かしい食品やクッキーなどを買うだけですが・・。

 しかし、あの頃のまずい記憶が、若い頃に体験した、一種の甘い記憶となっていることが、若い頃に、一定期間を異文化で生活した自分の中でのかけがえのない一生の思い出となっていることに、今、私は、しみじみと喜びを感じるのです。














 

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