在ウクライナフランス大使館が250万人分のヨウ素剤を用意したと発表されて以来、俄かに「ヨウ素剤」についての報道をちらほら見かけるようになってきました。
「原子力災害時のヨウ素剤の用途は?」、「ヨウ素剤服用の効用」、「ヨウ素剤服用の注意点」などなど・・。
そもそも話題に「ヨウ素剤」が取り上げられる時点で、なかなかな物騒な状況です。
「ヨウ素剤」など、日頃、話題にあがらない単語でもあり、そのような単語が話題に持ち上がること自体が受け入れ難い気がしていますが、同時に無視しきれない現実でもあります。
「ロシアは最も強力な核保有国」と威圧し、実際にウクライナの原子力発電所の一部を占拠しているプーチン大統領の発言と攻撃は、これまでの各国首脳との話し合いがことごとく無視されている経過からも、「核を本気で使いかねない」というムードがフランスでも高まっているのです。
そのムードがフランス国内でも「ヨウ素剤」が話題に上がり始める異様な状況を生み出しており、実際に、薬局にヨウ素剤を買い求めに行こうとする人まで登場しています。
ヨウ素とは、そもそも健康に絶対必要な天然微量元素。甲状腺で作られるホルモンの成分で、吸い込んだり摂取したヨウ素と結合します。放射性物質を含まない安定ヨウ素剤は、放射能汚染から甲状腺を守る役割を果たします。
原子力施設で重大事故が発生した場合、放射性ヨウ素が大気中に放出される可能性があり、この放射性元素を吸引したり、汚染された食品を摂取することで、甲状腺がんのリスクを高める放射線照射の一因となると言われています。
1986年のチェルノブイリ原発事故では、放射性ヨウ素が大量に放出され、ベラルーシ、ウクライナ、ロシア連邦西部の汚染地域に住む人々には、甲状腺がんの発生率が高いことが確認されています。
甲状腺が放射性ヨウ素と結合するのを防ぐため、安定ヨウ素剤摂取が被ばく者の健康を守る一つの方法です。 スポンジのように安定ヨウ素で飽和した甲状腺は、放射性ヨウ素を固定することができなくなるのです。そのため、尿から速やかに自然に排出することができます。
しかし、安定ヨウ素剤は、すべての危険を防いでくれるわけではなく、 原子力安全局(ASN)は、「安定ヨウ素剤が守るのは甲状腺という一つの臓器だけであり、原発事故が起きた場合、まず固い建物に避難することが第一の防御策である」との見解を示しています。
また、この薬は、放射線防護ワクチンでも永久治療薬でもなく、放射能にさらされる1時間前、遅くともその後6~12時間以内に服用するのが理想的とされています。
しかも、予防のために安定ヨウ素剤を服用しても意味がなく、役に立たないばかりか、アレルギーなどの副作用を引き起こす可能性があるとも伝えられています。また、過剰摂取は、甲状腺機能障害やある種の心臓や腎臓の副作用を引き起こす可能性もあり、これを無秩序に服用する危険性も説明しています。
フランスでは、この放射能対応のヨウ素剤は、1997年以来、公的機関によって、原子力発電所周辺、半径20キロメートル以内の地域においては、配備されているようです。
一般的に薬局で市販されているヨウ素剤(サプリのようなもの)は、放射能対策として使用される錠剤(130mg)に対して、150マイクログラムのみで、放射能汚染に有効なものではありません。
昨日、たまたまかかりつけのお医者さんにいつも飲んでいる薬の処方箋をもらいに行った時、「この安定ヨウ素剤というものは、買うことができるの?」と聞いてみたところ、「パリでは、APHP(パリ公立病院連合)がまとめて管理していて、必要な事態になったら、配布される準備がなされているとのこと。
しかし、彼女は、「でも、もしパリでそんな薬が配布される事態になったら、薬を飲む間もなく、私たちはもう生きていない・・」と絶望的なひとこと。
コロナウィルス対応のワクチン接種が始まった当時は、副作用などを恐れてワクチン接種を躊躇していましたが、今回のヨウ素剤に関しては、どうやら12時間以内という待ったなしです。
この狂気の戦争がこれ以上の悲劇を生まないうちに終結してくれますように・・。
ヨウ素剤 安定ヨウ素剤
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