2023年3月31日金曜日

ネスレ ブイトーニ 食中毒事件 冷凍ピザ工場閉鎖も年内は従業員を解雇しない事情

 


 2人の死亡者と数十人の被害者を出したブイトーニの冷凍ピザの食中毒事件から、この工場の経営にあたるネスレ(Nestle)のコードリー工場は、長期間にわたり、閉鎖されていましたが、事件から9ヶ月後の昨年12月に衛生管理の改善や調理済みの生地を使用したピザのラインのみという条件付きで、一部の生産再開の許可が下りて、生産を再開したものの、ネスレは業績不振のために、今年3月上旬には、再び工場を閉鎖してしまいました。

 食中毒による死亡事故まで引き起こした食品会社の工場は、実際の被害状況はもちろんのこと、その後の会社側の不誠実な対応なども乗じて、再起させることはできませんでした。

 ただし、3月上旬の時点では、とりあえず工場は閉鎖するものの、正式な工場閉鎖の決定までは賃金は会社側が補償するということでしたが、今回、ネスレは正式にこの冷凍ピザ工場を閉鎖することを決定しています。

 この工場の従業員は約140名、このネスレ(Nestle)・ブイトーニ工場の汚名は彼らの再就職にもついてまわります。CV(履歴書)に書かれたこのブイトーニー・コードリー工場勤務の経歴はどう考えてもプラスのイメージではありません。

 元従業員が暴露した、あまりに不衛生な工場内のスキャンダラスな映像は、ちょっと食品工場としては信じられない状況で、従業員の責任は問えないとはいえ、この状態で食品を製造しつづけていた従業員と思えば、同種の職種での再就職はかなり困難と考えざるを得ません。


 この従業員の再就職については、ネスレ(Nestle)は、誠意を持って対応すると述べていたものの、同社のシリアルなどの別の食料品工場にしても業績は思わしくなく、コードリー工場の従業員を社内での他部署へ異動することも難しいと言われています。

 そもそも、止まらないインフレのために消費は低迷、しかも工場操業のための電気・ガス代などのコストもうなぎ上りしている中、スキャンダルとは無縁の普通の工場でさえ、存続は大変、厳しい状況です。

 しかし、ネスレ(Nestle)は、とりあえず、2023年12月31日までは、従業員を解雇しないとしており、同グループは、工場閉鎖と同時に、工場の、確実で永続的な回復ソリューションを見つけるプロセスを開始することに並行して取り組み、140 人の従業員に社内での再配置の機会を提供するとしています。

 つまり、ネスレ(Nestle)は、この工場の買い手を見つけることに尽力しているということで、この雇用確保に関する工場の保持に国から300万ユーロの援助が出ているのも、なんだかきな臭い感じがしないでもありません。

 年金改革問題で揉めに揉めているフランスで、定年の2年延長どころか、失業者が増加してしまう状況を回避したい政府の気持ちもわからないではありませんが、生産性を考えたら、このスキャンダラスな工場を再建するよりも、新しい工場を立ち上げた方が生産性が良い気もしてしまいます。

 フランスでは、以前、日本のブリヂストン工場の閉鎖の際にも、話題に上がりましたが、いったん、立ち上げた工場などを閉鎖するのは、組合の突き上げや国からの圧力などもあって、工場閉鎖、従業員解雇などには大変な労力とお金がかかります。

 あの時も閉鎖されるブリヂストンの工場には労働組合に加えて、労働大臣などの政府のメンバーまでもがおしかけて圧力をかけていた様子にビックリして、ブリヂストンが気の毒になったくらいです。

 余談ではありますが、あの時、ブリヂストンに訪れていた労働大臣は、現在のボルヌ首相で、あの無理を強要するごり押しな感じは以前からの彼女のやり方だったのだろうか?と現在の49.3条問題に通ずるものがあるような気がして、なるほど・・などと、勝手に邪推してしまいます。

 工場閉鎖、従業員解雇の事情などを考慮の上、ネスレ(Nestle)は、この問題の山積みの工場を従業員もろとも売ろうとしているのですが、このスキャンダルまみれの工場を買う人がいるのかどうか?なかなか疑問が残るところではあります。


ブイトーニ冷凍ピザ食中毒 工場閉鎖


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