2019年9月29日日曜日

イクメンと家族サービス




 最近、日本では、「イクメン」という言葉が生まれて、フランスで子育てをしてきた私には、とても、妙な印象を受けます。

 だいたい、「イクメン」という、育児という当然のことをしている男性のことを褒め称えるような言葉自体に、とても違和感を持っています。

 少なくとも、フランス語で「イクメン」に当たるような言葉はありません。

 私が、「イクメン」と同じくらい嫌いなのが、「家族サービス」という言葉です。

 たとえ、女性が働いていたとしても、家族に対してすることを「家族サービス」という言い方はしないと思います。それを男性側から「家族サービス」などと言われたら、気分が悪いことこの上ないでしょう。

 「家族サービス」は、家族と一緒に出かけたり、旅行に出たり、父親が自分も一緒に楽しむはずのことを、どこか、上から目線で、まるで、自分は、家族の一員であるというよりも、どこか違う位置付けにいる人のような言い方です。

 フランスは、ダメダメなところもたくさんありますが、こと家庭、家族のあり方に関しては、個人差はあるにしても、育児に男性が関わることも、家族で出かけたり、家族としての過ごし方も、父親も同じように家族の一員であり、家族みんなで楽しんでいます。

 そこには、「家族サービス」という観念はありません。

 それでも、日本でも、昭和世代の家庭よりは、改善されてきて、実際に「イクメン」も増えてはいるのでしょうが、「イクメン」という言葉が生まれるあたり、やはり、それは、「イクメン」ではない人が多いからこそ生まれる言葉なのだと思ってしまいます。

 また、日本でも、女性の社会進出が増えているとはいえ、やはり、女性に対してのハンディは大きく、ましてや仕事をしながら、子育てをするとなると、さらにハードルは上がります。

 子供を預ける保育施設なども充分ではないのでしょう。

 私の日本の実家の近くに、ほんの小さなスペースのみの保育所がずいぶん前にできて、こんなに狭い、施設としても、粗末なもので、すぐに潰れてしまうだろうと思っていましたが、現在でも、その施設は続いています。

 それだけ、正規の保育園が足りていないということだと思います。

 その上、日本の教育費は、驚くほどに高額です。

 子供を育てていくために、また、子供の将来の教育費のためにも、富裕層でなければ、女性も働かずに子供を育てていくことは、大変な事だと思います。

 フランスでも、より豊かな教育を子供に受けさせようと思えば、それなりにお金はかかりますが、特に大学などに関しては、フランスの教育費は、日本に比べると桁違いに安いのです。

 それに加えて、フランスは、各家庭の子供の数が増えれば、(特に三人以上の子供を持った場合)働いている親に対しても税制上の大きなメリットがあります。

 この日本とフランスの子育て環境、事情を比べてみただけでも、なぜ、日本が少子化の一途を辿り、フランスが少子化の問題を克服したのかもうなずけます。

 女性の社会進出を推進する一方、男性も育児を含めた家事を負担すべきであるということが、社会的な責務であるとされる風潮はある一方、それは、どこか、中途半端で、女性側に、より負担が大きくなる傾向があるように思えてなりません。

 そもそも、育児や、家庭を築くことは、手伝うことでも、サービスでもなく、男性も女性も主体的に関わるべきものだと思うのです。

 


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