私が日本から帰国した翌日、猫の世話を頼んでいたジャン・ピエールという元同僚のフランス人から電話がかかってきました。
「無事、予定どおり、帰れたんだね。日本は、どうだった? コロナウィルスで日本は、患者がたくさん出ているんでしょ! 」そう言って、彼は、ほとんど、一人で、フランスのテレビで報道されているであろうことをほとんど一人で滔々と話し続けていました。
日頃からおしゃべりで、話し出すと止まらない人ですが、それにしても、手をこまめに洗った方がいいとか、うがいをした方がいいとか、そばにいる彼の奥さんも加わって、説教じみたことを言い始めたので、内心、うんざりしながらも、彼の現在の関心事は、コロナウィルスなんだ・・と思わずには、いられませんでした。
翌日に、彼は、預けていた鍵を返しに来てくれたのですが、昨日の饒舌っぷりとは、打って変わって、いざ、家にやってくると、私が日本から帰ってきたばかりで、感染している危険性があるとでも思っているのか、彼自身、口には、出しませんでしたが、明らかに私を恐れている感じで、いつになく、落ち着かずに、鍵だけ渡すと早々に帰って行きました。
コロナウィルス騒動の当初から、アジア人がウィルス扱いで、差別されているという報道を目にしてきましたが、こういうことが発端になっていくのだろうなと、初めて、身近なこととして感じたのです。彼の場合は、差別というよりは、単純に恐怖なのでしょうが・・。
とはいえ、フランスは、早々に中国・香港・上海へのフライトをストップして、ウィルス感染の対策をとり、今のところは、日本のように多数の感染者は出てはいませんが、それでも、室内など閉鎖空間で5000人以上が集まるイベントを禁止する政府方針を発表しています。
実際に、パリで予定されていたハーフマラソンなども中止になっています。
しかしながら、私が疑問に思うのは、パリでも、薬局でマスクが売り切れになっているとか、消毒薬が売り切れているとかいう話を聞くわりには、街中でマスクをしている人は、あまり、見かけないどころか、昨日も年金反対のデモが行われていて、彼らのウィルスへの危機観念というのは、年金問題のデモとなるとすっ飛んでしまうものなのかと、大いに疑問に思ったのです。
たしかに、デモは、閉鎖空間ではありませんが、大勢の人と接触する場面であることに変わりはないと思うのです。それも、また、なかなかの人出でなかなかの騒ぎだったようです。
彼らは、それなりにウィルスに対して、恐怖心を抱いたり、アジア人を差別するような行動に出つつも、根本のところでは、自らマスクをしたり、大勢の人との接触を避けるほどの危機感はなく、年金問題での怒りが高まり興奮すれば、デモに走るほどの危機感しか持ち合わせていないのです。
しかし、一応、フランスでは、コロナウィルスの予防対策として、
・定期的に手を洗う ・握手をしない ・ビズー(挨拶のキス)をしない
・咳やくしゃみをする際は、肘で口を押さえる ・一度使用したティッシュは使わない
・病気の際は、マスクを着用する
といった呼びかけをしています。
肘で口を押さえるとか、一度使用したティッシュは使わない・・など、日頃の基本的な衛生観念にツッコミを入れたくなるような内容であることも、「ああ、私は、フランスに帰ってきたのだな。」としみじみ思わされるのです。
3月31日には、再び、大掛かりな、ストライキ・デモが予定されているそうです。
フランス人にとってのストライキやデモは、コロナウィルスにも屈しないのです。
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