2021年5月29日土曜日

フランス生活の修行の一つ 「届くはずの荷物を待つ」

   


 母は、生前(といっても元気だった頃)は、毎月、一回、日本の食料や娘の洋服など、何かしらの小包を送ってくれていました。平日の日中は仕事で留守なので、大抵は、すぐに受け取ることができずにいつも不在通知を持って、休みの日には郵便局に取りに行くことが多かったので、娘が小さい頃には、お休みの日に娘に「今日はどこへ行きたい?」と聞くと、「ゆうびんきょく!」というくらいでした。

 しかし、母も亡くなり、荷物を送ってくれる人もいなくなり、私自身もここのところは、年、1〜2回のペースで日本に帰国していたので、必要なものは(ほぼ食料品ですが・・)ほとんど、その際に買ってきているので、欲しいものを言えば、キリがありませんが、まあまあ、パリで買えるものを工夫して、併せて使いながら、なんとかそれらしいものを作りながら、次に日本へ行ける時まで凌いで生活しているのです。

 それが、今回ばかりは、日本に行けなくなってから、もう一年以上、私は、それでも奇跡的にパンデミックになる直前の昨年の2月後半に用事があって、日本に行っていたので、その時には、「今度は、いつ来れるかわからない?」と、いつも以上に気合を入れて食料を持ってきていたために、せこせことその食料を使いながら、何とか生き延びてきました。

 一時は、日本はおろか、フランス国内でさえも、ちょっと買い物に気軽に出かけるのも憚られるくらいだったので、ベランダで野菜を育てたりしながら、何とか食べ繋いできました。

 日本にいる友人や親戚などからも、さすがにもう日本の食べ物なくなったでしょ!いるものがあったら送るよ!と、言ってもらってはいても、もう言い出したら、キリがないし・・と特にお願いをすることもありませんでした。

 そうこうしているうちに、先日、心優しい私の従姉妹の一人が食料品を送ってくれたという連絡をくれて、内心、ワクワクしながらも、郵便事情のあまりよくない(それでも最近はずいぶんマシになった)フランスで、荷物がちゃんと届くかどうかが不安でもありました。

 それが、昨日、朝8時頃にクロノポストから「あなた宛の荷物が今日、配達されます」というメッセージが入り、しかも、メッセージには、「今日の18時までに・・」というおまけ付き・・8時から18時まで・・という大雑把なお知らせに、もう今日は、荷物が届くまで、一歩も家を出まい!と心に誓うも、家にいても不在票を入れて行かれてしまう場合もあり、下まで降りて行って待っていようか??(我が家は8階なので)などとも思ったのですが、さすがに10時間の開きがあるお知らせにそういうわけにもいかず、家で用事を済ませつつ、耳を済ませて、配達の人が来るのをひたすら待っていたのでした。

 人一倍、食い意地の張った我が家では、その荷物を送ってくれた従姉妹は神のような存在で、私たちが日本に行った際に彼女が食べさせてくれるものや、お土産にと持たせてくれるものは、それはもう、選りすぐりの逸品ばかり、絶対に間違いのないもので、大変な貴重品に間違いないのです。

 彼女は、食べることを真剣に追求している人で、あらゆる場所の美味しいものを知っていて、旅行先などで美味しいものを見つけたら、そこに通い詰めて仲良くなったお魚屋さんだとかが全国にあって、パリでさえも彼女に美味しいお店を教えてもらったりするくらいな食通なのです。

 そんな彼女が高い送料を払って送ってくれたものは、絶対になくされたりするわけにはいかない!とこちらも、いざという時には・・などと、なくされる前から戦々恐々としていたわけです。

 これまで、フランスに来て以来、色々な人から色々なものを送ってもらってきましたが、なくされてしまった(盗まれた)荷物も数知れず、箱がボロボロになって、ようやく息絶え絶えになって、よくぞ、これで届いたな・・とか、もうダメだと思っていたら、忘れた頃になってやってきたこと・・など、トラブルは山のようにあったので、久しぶりの荷物到着に、何だか半分、戦闘態勢で待っていたのです。

 10時間でも待つつもりだった荷物は、難なく昼頃に到着し、ドアホンがなって、アパートの下のドアのロックを解除して、インターホンで、「お宅は何階ですか?」と聞かれたので、「8階です。セ・ボン?(大丈夫?)」と聞き返したら、「セ・パ・ボン(大丈夫じゃない)」というので、慌てて、「じゃあ、下まで降りましょうか?」と言った時には、もう応答なし・・それから、数分の間は、下に降りようか、どうしようか迷いながら、エレベーターの前でソワソワと待つことになりました。

 それから、ほんの2〜3分、待っていたエレベーターが開き、荷物は無事に到着しました。彼の「セ・パ・ボン」は、ほんのジョークだったようですが、お宝を前に余裕のない私には、通じない冗談でした。

 とはいえ、荷物は思ったよりもずっと早くに無事到着し、喜びを分かち合おうと娘が帰ってくるのを待って開封しました。

 海外とはいえ、パリは比較的、日本食は行くところに行けば、手に入るとはいえ、やはりそれは、限られたものであり、もうずっとフランスにいるのだから、いい加減、いつまでも未練がましく日本食品を諦めようと思いつつも、久しぶりにお目にかかったパリではお目にかかれない食品の山に我ながら、いつになく、ハイテンションなのが自分でもわかるくらいで、その日は、1日ウキウキで過ごしました。

 それにしても、これまでの郵便事情のトラブルの後遺症ともいうべく、手元に届くまで、一切、信用せずにギリギリまで最悪の事態に備えてしまうこの姿勢。以前、アマゾンの配送で、届くはずの荷物を待っていたら、いつの間にか、サイト上では、荷物が到着済みとなっていたので、慌てて外に出てみたら、隣の家の玄関の前に(地べたに)置かれていたこともあったのです。その時は、まだ、届いただけ、マシだと思いましたが・・。

 最近は、アマゾンやモンディアル・リレー(自宅ではなく中継地点に荷物の配送を委託するシステム)などができたためにフランスの郵便事情も以前よりはずいぶん、改善されてきました。

 とはいえ、トラブルがいつも隣り合わせの生活に、特に郵送品(特に日本からの荷物)というと、異常に警戒してしまう悲しい習慣がついてしまっているのです。


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