2022年7月31日日曜日

森林火災の放火犯は消防士だった!しかも、数年にわたる常習犯だった!

  


 夏になると森林火災が発生するのは、フランスに来てから、毎年のことで、日本では、あまり森林火災の被害をあまり聞いたことがなかったので、こんなに毎年毎年、山火事が起こることが私にとっては、不思議でもありました。

 特にここ数年、地球温暖化による猛暑が続き、異常に森林が乾燥していることも手伝って、一度、燃え始めた森林の火は、瞬く間に広がり、何万ヘクタールも焼けてしまうとか、消火に何日もかかるほどの大規模な火災に発展し、今年の夏などは、テレビのニュースなどでは、いつもどこかの森が燃えている映像が流れ続けていました。

 こんなに度重なる森林火災も、まさに火のないところに煙は立たないわけで、自然に発生することはなく、キャンプの火の不始末や放火が原因であろうと言われていました。

 それが、今年、何件も発生している森林火災のうちの一つ、エロー県(オクシタニー地域圏・モンペリエの近く)で発生した森林火災の放火犯が逮捕され、それが、こともあろうに消防士であったという事実を聞いて、驚いています。

 森林火災後の捜査により、この付近での森林火災での複数の火事の発端で、彼の車が目撃されており、嫌疑がかけられた結果、この37歳の消防士が犯行を自供したということです。彼は20年間も森林消防隊員として勤務していた人です。火を消すはずの人が火をつけていたのですから、もう呆然です。

 彼は犯行の動機を、消火活動を引き起こし、人々から賞賛されたかった(社会的認知を得たかった)・・、抑圧的な家庭環境から逃れ、火災から誘発されるアドレナリン欲しさ、つまり、火が燃えるのを見て、興奮を味わい現実逃避したかったためだったと話しています。

 彼の犯行には、多くの同僚が彼に対する嫌悪感と裏切りを感じていると話しています。それはあたりまえです。命の危険を冒して仕事しているのに、自分達の仲間だと思っていた人が犯人だったなんて・・。

 驚くことに彼は、今年は、短い期間に2回も放火しており、過去3年間に何度も放火したことを認めています。つまり、常習犯だったわけです。

 火が燃える光景は、時に人の心を癒すなどともいわれ、人間の本能にも通ずるところがあり、YouTubeなどでも、「よく眠れる夜通し焚き火」などの映像があったりしますし、キャンプファイヤーなど、みんなで火を囲んで集ったりすることもあります。

 しかし、普通は人に迷惑をかけない範囲内でのことで、ましてや彼の仕事は消防士。当然、火が燃えている場面を目にする仕事ですが、それを故意に起こすことなど決してあってはならないことです。

 フランスでは、デモや暴動などが起こって、何かあるとすぐにゴミ箱が燃やされたり、車が燃やされたり、時には銀行などが燃やされたりすることもあり、火をつける、放火行為はそれほど珍しいことではありません。

 しかし、彼の場合はその火を消すという仕事の消防士、自分で火をつけて、その火を消して賞賛を受けようとする自作自演?は、普通の放火とはまた、別格の問題、極めて悪質です。

 今回の事件は、消防士の採用方法への問題も投げかけています。消防士の採用にあたっては、身体的・精神的な健康診断があり、採用後も年1回の健康診断の受診も義務付けられています。

 彼のように、賞賛を得たいため、火を見て興奮したいために火をつけるという状態は、常軌を逸していますが、彼のような精神状態を健康診断で見抜くことは非常に困難なことです。普通、消防士にそのような欲望があったとしても検査にはそんな欲望は隠して検査に臨みますから・・。

 全国消防連盟は採用時にすべての犯罪記録の閲覧を求めているとしていますが、彼が放火を始めたとしているのは、消防士になって、10年以上経過してからのことです。

 検察庁は、彼の身柄を拘束し、「人を身体的危害にさらす可能性の高い状況で、他人の所有する森林、湿原、低木林または植林地を破壊した」ことについて司法調査を開始しました。

 これらの行為は、15年の禁固刑と15万ユーロの罰金に処せられます。



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