2022年7月23日土曜日

リヨンで警察官が群衆に襲われリンチ状態になる恐怖の事件

   


 水曜日の午後7時半頃、リヨンのギヨティエール地区で警察官がスリ・ひったくり撲滅のためのパトロール中のことです。警察官が路上でカップルの後をついていく不審な人物を発見し尾行を開始しました。

 尾行されていた男は、女性が首から下げていたチェーンをひったくるように盗むところを警察官に目撃され、容疑者は警察に追われながら逃走しました。

 逃走はガブリエル・ペリ広場で終わり、警察が本人に尋問を開始しました。その時、事態は一変したのです。警察官の尋問開始直後、警察官は周囲にいた群衆約50人に取り囲まれ、容疑者がこの混乱に乗じて逃走してしまいました。

 群衆に取り囲まれた警察官は、鉄棒で殴られ、催涙ガスや投擲物を投げつけられ、その時のビデオを見ると、リンチさながらのボコボコ状態です。周囲にいた女性も激しく殴打される被害に巻き込まれています。



 群衆が犯人を取り押さえようとするならともかく、群衆が3人の警察官を攻撃するという恐ろしい事件でこの警察官は全治1週間の怪我を負いました。

 警察官が尾行していた容疑者は、18歳のアルジェリア人の男性で、前科十数犯で警察によく知られている人物と見られていて、彼は、過去の司法判断によりフランス領内への立ち入りを禁止されていますが、有罪判決の一環として自宅軟禁状態にあります。

 一方、3人の警察官は省庁間公共交通機関に所属する私服警官だったようで、そのため、警察官だと認識されなかったということも考えられないでもありませんが、しかし、ひったくり犯とそれを尋問する立場の人を見れば、それぞれの立場は誤解されるということも考え難いことです。

 しかも、それがどちらの立場の人だったとしても、50人もの人が鉄棒まで使って暴力行為に走るなど、ちょっとあり得ない話でもあります。

 市民の安全を守るはずの警察に対する暴力が横行する無法地帯状態、警察に対する暴力の悲惨な常態化を警察組合は強く非難しています。また、内務大臣も即座に、「耐え難い暴力の犠牲となった3人を全面的に支持する」と表明、「私の要請により、犯人を逮捕するためにあらゆる手段を動員している。警察官を攻撃することは、共和国を攻撃することだ」と発表しています。

 内務大臣は2020年の段階で、リヨンに年間100人の警察官が増員される(3年間)ことを発表していますが、これは単に警察官の人数の問題では解決できないのかもしれません。

 私服警官がパトロール中に容疑者を特定して、現場を取り押さえて逮捕に踏み切るというタイミングは偶発的なもので、そのために50人もの人がそこで警察官を攻撃しようとして待機していたとも思えないことから、機会があれば、警察官を攻撃してやろうと思っている人々がその近辺にたむろしていると考える方が妥当かもしれません。

 2年前から、リヨンの中心部に位置するこの地区では、暴力シーンが増加しており、昨年から増援が来て、警察の存在感は増していると言われています。にもかかわらず、このような事件が起こるということは、警察官の存在感が増したことにさらに反発感を抱いている人々が機会を狙っていたのかもしれません。

 少し前に、パリで検問のために車を止めた警察官が発砲した事件がありましたが、警察官の高圧的な態度に対して反発をもつ攻撃的な人々が一定数存在しているということは、紛れもない事実のようです。

 この事態に警察組合は、「しっかりとした罰則対応」と「警察官の増員」を求めています。

 いずれにしても、違法行為を取り締まる警察官が攻撃されるということが横行するような状況には、ため息もでません。


リヨン警察官襲撃事件


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