2022年1月31日月曜日

3日に1人の割合で起こっているフランスの警察官の自殺


 24日にマルセイユで、22歳の警察官が自殺したというニュースで、俄にフランスでの警察官の自殺問題が取り上げられています。

 マルセイユ北支部に駐在する22歳の警察官の自殺は、警察長官が前週、組合や協会と面会した数日後に起きたもので、彼は勤務中に携帯していた銃を用いて自殺(警察官の場合は、この勤務中に携帯している武器(銃など)によるものが多い)しています。

 そして、彼の自殺により、フランスでは、24日の段階で、警察官の自殺が今年に入ってから9人目であることが表沙汰になり、警察組合は、「これは、3日に1人の割合で自殺者が出ている計算になり、非常に憂慮すべき問題であり、優先的に取り組む問題である」と声明を発表しています。

 これらの事件は、リール、ストラスブール、ブザンソン、シャロン・シュル・ソーヌ(ソーヌ・エ・ロワール)、ノワジール(セーヌ・エ・マルヌ)、マルセイユと次々に起こっており、この自殺の波は、危機感を持っている同僚に不安を与えており、周囲の警察官からのSNSによる発信なども相次ぎ、問題視されています。

 これまで、自殺は、「個人的な問題」として説明され、特に警察内では、問題を追求するのは、どちらかといえばタブー視され、見過ごされてきた問題を単に個人的な問題だけでなく、多様な原因が関わっていることを公にして、解決すべき問題があることを浮き彫りにしています。

 悪化する治安、度重なる暴力事件や犯罪が絶えることのないフランスで、警察官(少なくとも一般的な警察官に関する限り)は、依然として低賃金であり、たやすくはない勤務体系、頻繁な暴力への対応、時には有害な物の管理などを伴う緊張感が絶えないこの職業においては、自殺と関連すると思われる多くの困難な問題を抱えるものであることは、容易に想像がつきます。

 特にマルセイユの警察官の年齢が22歳であったということにも、メンタルヘルスを含めた警察学校での訓練で十分な武装ができているかどうかが問われています。現場の警察官であれ、捜査官であれ、彼らの肩には大きなプレッシャーがかかっており、現代の社会は、非常に複雑でもあります。

 それに加えて、警察内の上下関係の圧力は、悩める警察官をさらに苦しめています。

 2021年には、35人の警察官が自らの命を絶ったと言われていますが、まだ1月で9人とは、今年は、すごい勢いであることは、言うまでもありません。しかも、警察官の場合は、常に武器を携帯しており、それを自分に向けて使うことも容易で、昨年の警察官の自殺の半分は、この武器が使用されたものでした。



 日頃、フランスの治安の悪さを嘆いてばかりいますが、その治安を守ってくれている警察官には、常にストレスのかかる介入が繰り返されており、彼らの自殺の一因は、事件介入の心的外傷後ストレスでもあると言われています。

 日常では、人生を思い切り楽しみ、やっぱりこの人たち、ラテン系だ・・と思わされる場面が多いフランス人も警察官だけではなく、自殺は決して少なくなく、むしろ、一般的には、孤独に絶えられず、メンタル弱めの人も多く、特にこのパンデミック禍中、ストレスに絶えかねている人は少なくないのです。

 フランスでは、今年に入ってから、すでに778人が自らの命を絶っています。毎日29人が自殺し、550人が自殺を試みているという数字も出ています。これは、毎年10,500人の自殺と200,000人の自殺未遂に相当します。フランスの自殺率は人口10万人あたり14.7人で、欧州平均を大きく上回っています。


フランスの警察官の自殺問題


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