もはや、大晦日の行事ではないかと思われる節のある車の放火が、今年は若干、減少し、ジェラルド・ダルマナン内務大臣は、「大晦日の夜は、秩序のおかげで暴力が減少した」「警察力のおかげで暴力が減少した」と発表しています。
しかし、減少したとはいえ、大晦日の夜に燃やされた車両は874台、441人が逮捕されています。2021年の年越しは感染対策のために、シャンゼリゼやエッフェル塔をはじめとする大掛かりな花火は禁止されていましたが、相変わらず、車は燃やされていたようです。
昨年の大晦日は、夜間外出禁止だったために、比較の対象にならないとのことで、2019年末と比較していますが、(2019年末には、1,316台の車が燃やされています)昨年とて、861台の車が燃やされているので、車を燃やす輩には、夜間外出禁止などは、あまり関係ないものと思われます。
実際に、私は、車が燃えている現場に出くわしたことはありませんが、燃やされた車の残骸を見かけたことは何回かあります。これは、日本では見たことがなかった光景の一つです。
大晦日ではなくとも、フランスでは、デモなどで、人が暴れ出すところでは、ゴミ箱を燃やしたり、車を燃やしたりすることは、珍しいことではありません。酷い時には、フランス銀行に火がつけられたこともありました。
血の気が多いというか、興奮すると手がつけられなくなる感の強い人が多いのも、日本とはかなり違うところです。
今年の大晦日は、夜間外出禁止にはならなかったものの、人の集まりや公道でのアルコールなどの飲酒の禁止、マスク着用などの義務や制限もあり、10万人の警察官が動員されるという発表がありましたが、実際には、パリ市内の9,000人を含む約95,000人の警察官と憲兵隊、32,000人の消防士と市民警備隊が動員されていたようです。
今年は例年の大晦日の警戒に加えて、人の集まりなどの衛生環境統制のために、通常より多くの警察官が動員されましたが、結果的には、人の集まりは、シャンゼリゼやエッフェル塔の近辺、モンマルトルなどなど、あらゆる場所で、目を覆いたくなるほどの人の海で、昨日で4日連続で1日の新規感染者数が20万人超えというのに、人が外に出たい!大勢で集まって騒ぎたい!発散したい!という気持ちは、フランス人を抑えつけることには繋がらないようです。
それ以上に長引くパンデミックで、新年を迎えるお祝いの機会にこれまでの鬱憤をはらしたい気持ちが強いのだと思います。
しかし、ヘルスパスが起用されて以来、ほぼフランス人は、多くの人がバカンスにもでかけ、ほぼ日常を取り戻した生活をしており、そこまで鬱憤がたまっているとも思えないのですが、やはり、それでも、いつまでも感染のやまないウィルスに圧迫感が募っているのは確かです。
874台の車が燃やされつつも、「秩序のおかげで車の放火などの暴力行為が減少した」というのも、悲しい話で、これは、単に動員された警察官の数と、今や100万人以上の人が感染のために隔離中のために外に出られないということも、若干、大晦日の暴挙が減少している理由ではないかと思うのです。
一方、ストラスブールの7つの自治体では、大晦日に16歳以下の夜間外出禁止令が県令で発令されていましたが、これは、アルザスの首都でしばしば見られるような、年越しパーティーの暴走を防ぐために、合意の上で採用された措置の一つでした。
アルザスの首都では、大晦日は伝統的に爆竹や花火、時には迫撃砲で祝います。新年を迎えるにあたり、ゴミ箱、バスシェルター、車などが狙われ、放火され、法と秩序を守る警察でさえも暴力のターゲットになってしまうのです。
このような16歳以下の夜間外出制限にもかかわらず、今年の大晦日もこの地域では、約30人が逮捕され、警察との衝突が起こり、花火を投げつけられた警察官が負傷しています。
感染急増への対策として、屋外でもマスク着用を義務化したパリでは、「マスクをしていない」として779人が罰金を科され、そのうち少なくとも600人がシャンゼリゼで罰せられたと、警察筋は述べていますが、本来ならば、そんな人数なはずはなく、途中からは、もう警察でさえも手がつけられないほどの状態であったのが、正直なところだと思われます。
また、ヨンヌ県(ブルゴーニュ・フランシュ・コンテ地域)では、禁止されているレイブパーティーが行われ、サン・フロランタンの工業用地に1500人を集めていたと、県と国家憲兵隊が発表しています。
まことに警察の警戒・統制がないとどうにもならないフランスは、コロナ禍中でも全く変わらないのです。
車の放火
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