フランスでは、「オリヴィエ・ヴェラン保健相がコロナウィルス感染」というニュースがセンセーショナルに報じられています。
昨日、朝、閣僚会議に出席していたヴェラン氏は、午後に感染者追跡アプリ(TousAntiCovid)を介して、感染者と接触していることを警告され、最初のテストを受けましたが、陰性であることが証明されました。しかし、昼過ぎに軽い症状が出たため、再度検査したところ、今度は陽性だったそうです。
1日のうちに2度の検査を行なって、陰性であった結果が陽性になるということにも、ちょっと驚きです。側近によると、「彼は自己診断で抗原検査も陽性であることを確認した」ということです。(彼自身は、本来、医者でもある)
彼は、10月末に3回目のブースター接種を受けているので、現在、ワクチン接種の間隔を3ヶ月と定めているフランスで、ワクチン接種後3ヶ月以内でも感染するというワクチン接種に対するネガティブキャンペーンに繋がりかねない政府首脳の感染のニュースですが、幸い彼の症状は、軽症で、隔離状態にはなるものの、今後も職務をリモートで続行するそうで、これが「ワクチンをしていれば、重症化しない」キャンペーンになってくれればと思います。
現在、フランスには、約500万人ほどのワクチン未接種者が残っていますが、この感染爆発状態に、この500万人の中から、続々と病院に入院してくる患者に病院の逼迫状態は進み続けています。
先週の初めに、パリのピティエ・サルペトリエール大学病院名誉教授のアンドレ・グリマルディ氏のジャーナル・デュ・ディモンシュ(フランスの日曜紙)に「ワクチン接種を拒否する成人には、重症になった場合に蘇生を希望するかどうかという事前指示書を書くように体系的にアドバイスするべきではないか?」「ワクチン接種を受けないという自由な選択を主張する人は、蘇生を受けないという自由な選択を前提に一貫性を持たせるべきではないか?」という疑問を投げかける寄稿が物議を醸しています。
この寄稿は、パンデミックが始まって以来、そろそろ2年が経とうとしている現在、感染の波をいくつも繰り返し、疲れ果てている医療従事者の怒りの心情を吐露したものです。
多くの医療従事者の怒りは、政府とワクチン未接種者という2つのターゲットを持っており、その一つである政府に対しては、早い段階で病院スタッフを確保し集中治療室の病床を増やすための手段を取らなかったことを非難しています。
また、ワクチン未接種者に対しても、特に50万人と言われる80歳以上のワクチン未接種者について、重症化した場合に蘇生術が効かなくなり、理不尽な治療のために長い期間を集中治療室を占領することになり、結果的に起こる患者のトリアージュ(患者の選別)に繋がっており、結果的にその判断を迫られる医療従事者の負担は計り知れないものであるという内容です。
集中治療が必要な複数の患者に対して、病床が不足している場合に、どちらを優先させるべきか?を合議で決めるのは医療従事者ですが、「この介護者を導くべき原則を議論するのは、学協会、独立機関、倫理委員会、そしてそれ以上に社会全体とその選出代表者に任されるべきではないか?」と問題提起しているのです。
医療従事者が道徳的な判断を持っていないということではなく、その判断が患者との関係に介入し、彼らの判断に影響を及ぼしてはならないということを彼は注意深く説明しています。
コロナウィルス以外の患者の集中治療室での平均滞在期間が4〜5日であるのに対し、コロナウィルス感染患者の平均滞在期間が2〜3週間であることを念頭に、コロナウィルス以外の患者(がん患者等)の手術予定が崩され、延期されるたびに感じる怒りとやるせなさ、集中治療室を占領するコロナウィルス患者のほとんどがワクチン未接種者であることに憤りを覚えながら、ワクチン未接種者のコロナ患者に「だから言っただろう・・」と思いながら、この仕事をしながら、初めて患者に共感できなくなっていると語っています。
彼の寄稿の「ワクチン接種拒否なら集中治療辞退を!」という部分が特に取り上げられて騒がれていますが、ワクチン接種を受けないという決定を苦々しく後悔している患者が毎日、病院に到着するという光景が日常とならないように、そして、集中治療室のコロナウィルスの患者の選別が、医療従事者の責任だけに委ねられていることに疑問を呈しているのです。
病気に関しては、本来、患者を責めることはできませんが、ワクチン接種という防御の手段がある以上、それを拒否して罹患した場合は、すでにその患者や家族の選択の結果であると言えないこともありません。その選択の結果、人手不足や病床不足のためにおこる命の選別、医療従事者につきつけられる患者の一人一人の命を選別しなければならないという医療従事者が感じる厳しさややるせなさは、計り知れません。
ワクチン接種拒否なら集中治療辞退
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