2021年3月29日月曜日

すでにトリアージュ(命の選別)の準備はできているパリ公立病院連合(AP-HP)

            Des personnels soignants s'occupent d'un patient en soins intensifs à l'hôpital AP-HP Ambroise Pare de Boulogne-Billancourt, près de Paris, le 8 mars 2021


 先週25日の夜遅くに行われたマクロン大統領の会見は、主にヨーロッパのコロナウィルスワクチン確保対策に関するものでしたが、その会見の中で、フランスの感染対策・対応について、「1月末の段階(1月29日)でロックダウンしなかった決断は正しかった!」「なぜなら、感染爆発は起きていないのだから・・」と、自信満々の発言に、私は、大いに引っかかり、首を捻ったのでした。

 EU間の話し合い、取り決めにより、滞っていたワクチンがこれからスムーズに届くようになるから、これで私たちは乗り切れる・・ワクチン接種が拡大するまで、できるだけロックダウンを回避して、時間稼ぎをしてきた自分たちの選択は正しかったと言っているのです。

 しかし、何を持って、感染爆発が起こっていないと言っているのかが、私には、甚だ疑問です。

 すでに、現在のイル・ド・フランス(パリを中心とする地域)の集中治療室の占拠率は、127.7%(3月28日現在)(フランス全体でも96.3%)と、毎日毎日、増加を続け、とっくの昔に100%を超えているのです。

 これって爆発状態ではないのだろうか???そして、この数字でさえ、すでに、行われるはずの手術の予定などを40%以上組み直し、可能な限り、他の地域に患者を移送してもなお127.7%という数字なのです。フランス全体でも96.3%ということは、もう他の地域に移送することさえできなくなるのです。

 この医療現場の状況から、AP-HP(L'Assistance Publique -Hopitaux de Paris ・パリ公立病院連合)のディレクター40人以上は、すでに患者をトリアージュする準備ができており、今後、2週間以内に医療崩壊がおこり、トリアージュを余儀なくされる状況になると発表しています。

 つまり、患者を選別するということであり、助かる可能性のある患者が助からなくなるということです。デプログラミングとよばれる、行われるはずの手術が延期され始めた時点で、緩やかな、一種のトリアージュが始まっているとも言えますが、より具体的で結果がすぐに現れる形での患者の選別を行わなければならない状況になるということです。

 昨年の第1波の際には、その状況が短期間のうちに起こり、患者の選別をしなければならない状況をイカつい感じの医者が涙ながらに語っていたのを今でも強烈に覚えています。

 しかも、現在は、昨年の今頃の厳格なロックダウンとは違い、数々の制限下にあるとはいえ、街には人が溢れかえっている状況で、交通事故も凶暴な暴力事件も起こる状況です。コロナ以外の患者の搬送も決して少なくないのです。

 彼ら(AP-HP)が用意しているトリアージュの条件は、コロナウィルス、それ以外の全ての患者、特に成人患者の救命救急へのアクセスに関するものであり、昨年の最悪な状態を迎えた時以上の深刻なものであると言います。

 マクロン大統領が今なお、自信満々に、1月末にロックダウンしなかったことは、正しかったと言っている反面、多くの人がロックダウンのタイミングであったと主張し続けている今年の1月29日からこれまで(3月28日まで)のフランスのコロナウィルスによる死亡者数は、19,796人、ほぼ2万人近くの人が命を落としています。(当初からの死亡者数は、94,596人)

 どんな時にも、フランス国民はよく努力している・・経済的、精神的な負担を軽減するためにと、厳しいロックダウンをせずに甘々な対応に見えていたフランス政府ですが、実のところは、犠牲者を出すことも厭わない冷酷さが見え隠れし始めた気がしているのです。


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