2021年3月19日金曜日

フランス・3回目のロックダウンの衝撃と実質的な制限

   

            Discours de Castex : nouveau confinement, couvre-feu à 19h... Les annonces

      

 1月末頃から、いつロックダウンになるかと思っていました。その時がとうとうやってきました。毎日毎日、感染状態を気にしながら、いよいよヤバいと思っていました。

 ロックダウン発表の前日の段階で、感染状態が特に深刻なイル・ド・フランス(パリ近郊の地域)、オー・ド・フランスは、これまで以上のさらに厳しい制限が敷かれることが発表されていたので、ロックダウンもあるとは思っていました。

 しかし、ここのところの政府のやけに強気なロックダウン回避の対応に、週末のみのロックダウンかと思っていました。今年に入ってからというもの、ロックダウンは最終手段と言い続けてきたフランス政府は、とうとうその最終手段を取らなければならない状態にまでなってしまったということです。

 結局、感染状態は、想像以上に深刻で、すでに集中治療室も満床状態のイル・ド・フランスの発生率は一週間で23%も増加しており、すでに第2波のピーク時の数字を超え、イギリス変異種が感染の75%以上を占め、もう生半可な対応では済まなくなっていたのです。

 とうとう19日金曜日の夜、午前0時から、正確には20日の午前0時から4週間、イル・ド・フランス、オー・ド・フランスなどの16の地域は、最低4週間、ロックダウンされることになりました。

 いつかいつかと思ってはいたものの、実際にロックダウンとなると、やはり、ショックです。

 いみじくも、結局、昨年と同じ時期にロックダウンになってしまったわけです。

 一時は、この深刻な状況にも関わらず、4月には、レストランの営業が開始されるという噂もちらほらしていただけに、急転直下のこのロックダウンには、まだまだ先の道のりが長いことを再確認させられた形になりました。

 これで3回目のロックダウン。対象地域2000万人、23万店舗の営業がストップします。

 しかし、学校は継続され、外出証明書携帯の上、10㎞以内の明確な理由のある外出(買い物、散歩、運動)(しかも時間制限なし)は許可されます。

 よくよく考えてみれば、ロックダウンという言葉は充分に衝撃的である反面、なんだかんだと理由をつければ、かなり外出はできるわけです。

 しかも、これまで行われていた夜間外出禁止は、これまでの18時から19時に延長されます。

 昨日のカステックス首相とオリヴィエ・ヴェラン保健相の会見では、1月29日の段階で、科学評議会(Conseil scientifique)のロックダウンするべきだという警告を聞かずに進んできて、現在の状況に陥ったことは、政策の失敗だったのではないか?という質問に対しても、依然として、政府側は、失敗とは認めず、経済的、国民の心理的な負担を考えれば、決して失敗ではなかったと言い張っています。

 しかし、今年に入ってから亡くなっている27,000人以上の人の命、家族の悲嘆を考えると、これが失敗ではなかったとあっさり片付けられてしまうことには、かなり疑問が残ります。

「ウィルスと共に生きる」とスローガンを掲げながら、生きられなかった人がこんなにいるのです。

 外出したところで、生活必需品以外のお店は閉店しているわけですが、この生活必需品として認められている範囲は、想像以上に広く、食料品、薬局はもちろんのこと、本屋、通信機器、大型電気店、園芸用品店、DIY用品店、眼鏡屋、銀行、郵便局、保険屋等・・・これでは、閉店しなければならない店舗をあげた方が早いのでは?と思ってしまうくらいです。

 結局のところ、ロックダウンという衝撃的な言葉とはうらはらに、10㎞以内であれば、これらの買い物のためという理由だけでも、外出証明書さえ携帯すれば、外出し放題です。

 どんな状況になっても、全く懲りないフランス人、ロックダウンも3回目で、ウィルスの回避の仕方以上にロックダウン等の制限の網の目をかいくぐることにも慣れてきています。

 最も、あくまでもロックダウンを回避してきたフランス政府からしたら、ある程度、国民の心理的なダメージを考えて、ある程度、緩いロックダウンに変化させているとは思うものの、実質的なロックダウンの効果を考えれば、蓋を開けてみれば、これで、本当に大丈夫なのだろうか?と思う結果になりそうな気配です。

 少なくとも、昨日の首相の会見は、ここ数週間の会見とは明らかにテンションが違い、危機感は伝わってきたものの、結局のところ、いくらでもかいくぐることのできるゆるゆるなもので、結局のところ、国民の意識との乖離を感じずにはいられないのです。

 考えれば考えるほど、これは、本当にロックダウンなのだろうか?という気がしています。

 それでもやはり縛られることを嫌い、パリを逃れたい人がいっぱいで、ロックダウン発表翌日のTGVは、ギリギリのタイミングでパリを脱出したい人で、あっという間に満席になりました。


<関連>

「なかなかロックダウンを決断できないフランス政府と国民感情の動き」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_28.html


「まだロックダウンしないフランスの真意」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_30.html


「ロックダウンしないフランス政府の決断は正しかったか?」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_31.html


「ロックダウンは最終手段という姿勢は崩さないフランス カステックス首相の記者会見」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/02/blog-post_5.html


「このままロックダウンせずに乗り切ることは可能なのか?」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/02/blog-post_10.html

 



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