2021年3月5日金曜日

変異種61%に拡大・感染悪化もまだまだ粘るフランス 週末ロックダウン1県追加・特別警戒地域23カ所に拡大 

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 もはや、ここ数週間、首相の定例会見になっている木曜日の夜、新たにフランスでは、パ・ド・カレー県(オー・ド・フランス地域圏)での週末ロックダウン(ニース、ダンケルクに続いて3県目)と、これまでの20地域に加えて3地域(エーヌ県、オーブ県、オー・ド・アルプ県)を特別警戒地域に追加することが発表されました。

 今回、週末ロックダウン地域に加えられたパ・ド・カレー県では、感染率はもちろん、集中治療室の占拠率が102%と医療崩壊を起こしています。

 国内の感染状況については、毎日のニュースで伝えられており、今週末には、パ・ド・カレー県と並んで、イル・ド・フランスも週末ロックダウンになるのではないかと言われていました。

 しかし、イル・ド・フランス(特にセーヌ・サン・ドニ県)では、感染率は、今回、週末ロックダウンに加えられたパ・ド・カレー県とほぼ同等の感染率ではあるものの、集中治療室の占拠率は75%とされているため、また、人口も多く、影響も甚大なイル・ド・フランスを週末ロックダウンにすることは敢えて回避したとも見られます。

 これに対して、セーヌ・サン・ドニ県(イル・ド・フランス)の医療従事者は、「75%の占拠率とは、コロナウィルスによる患者だけをカウントした数字で、他の患者も大勢いる中、この75%という数字は、現実的な数字ではなく、もうとっくに100%を超えている状態なのだ!週末だけでもロックダウンをして欲しい!」

と訴えています。

 しかし、フランス政府は、あくまでも、できる限り、ロックダウンは回避するという方針は頑として崩さず、カステックス首相は、「ロックダウンは不可能なことではないが、必然でもない」としています。

 しかしながら、フランスの感染状態が、悪化している状況は続いており、先週には、50%を超えてしまったと言っていたイギリス変異種の割合も、今週には、61%まで増加しています。

 変異種が確実に拡大している中、これまで2地域の週末ロックダウンが加わったのみで、他の地域は、取り締まりが厳しくなったというだけで、制限自体は強化されたわけでもなく、感染が減少する理由は一つもありません。

 ただ一つの朗報は、ここ2週間ほどで、全ての年齢層での感染が増加している中(平均14%増)、80歳以上の感染率だけが17%減少しており、これは、80代以上の人口の28%がワクチン接種が済んでいる結果として、ワクチン接種の効果が具体的な数字に現れ始めたとしています。

 ロックダウンをしない以上、頼みの綱はワクチン接種しかないわけで、ワクチン接種の拡大の一手段として、ワクチン接種の条件を満たしている人に対しては、3月15日から、薬局でのワクチン接種が可能になります。

 また数日前に政府報道官の一人であるガブリエル・アタルが、「4月中旬には、コロナ以前の日常に近い生活を取り戻すことができる」と発言したことから、この発言に対しての質問が上がりましたが、これは、4月中旬までには、ワクチン接種がかなり進むであろうことからの希望的観測で、現段階で、日程を指定しての予測は、不可能であるとしています。

 当然です。

 また、感染が悪化しているのにも関わらず、ロックダウンをしない、むしろ感染悪化の更なる悪化を待っているような状況について、厚生相オリヴィエ・ヴェランは、「周囲のヨーロッパの国々で厳しいロックダウンをして、もう2カ月間も学校も閉鎖し、お店も営業しないでいる国でも、感染は、一時、減少しても、また増加したりしている。ましてや、現段階で、ゼロコロナは不可能で、これだけ長期間に及ぶのであれば、何とかロックダウンせずにワクチン接種が進んでいくまで、乗り切るべきだ。」と説明しています。

 しかし、今年に入ってからのフランスのコロナウィルスによる死亡者は、23,203人。一ヶ月に1万人以上の命が失われています。パンデミック以来、フランスの死亡者総数は、87,835人(3月4日現在)。今年に入ってからの人数は、この全体の26%にも及んでいます。

 ワクチン接種の効果が見えてきたとはいえ、ワクチンの供給も接種も政府の理想どおりには、進んでいないフランスです。医療従事者に対してのワクチン接種も現段階では3人に1人しか済んでいません。一番危険な現場で働いてくれている医療現場での、このワクチン接種の現状は、深刻です。

 これまでに接種が進められているファイザー、モデルナ、アストラゼネカのワクチンに加えて、3月中旬には、1回の接種で済むと言われているジョンソンアンドジョンソンのワクチンが認可され、4月中旬には、このワクチンでの接種も開始される予定になっています。

 感染拡大のスピードとワクチン接種の拡大のスピード、このどちらが勝つかが、フランスの今後の鍵を握っています。

 しかし、私の印象では、一時、「ロックダウンをする用意はいつでもある」としながら、踏ん張ろうと揺れていた時期もありましたが、そのころに比べて感染は悪化しているにも関わらず、政府には、ロックダウン回避の方向で進むさらに強い意志が感じられます。

 この選択が良かったか悪かったかは、ずっと後にならなければわかりませんが、これまでもいくつもの場面で失敗しているはずのフランス、でも終わってみれば、「俺たちは、よくやった!」となるところもフランスなのです。

 


<関連>

「全く懲りないフランス人 ロックダウンを回避したい政府の気持ちは伝わらない」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/02/blog-post_28.html


「このままロックダウンせずに乗り切ることは可能なのか?」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/02/blog-post_10.html


「ロックダウンしないフランス政府の決断は正しかったか?」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_31.html

 

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