もういつロックダウンになっても仕方ない状態がずっと続いていたフランスは、これまで、あくまでもロックダウンは、最終手段であるとし、ロックダウン回避の姿勢をとってきました。
ロックダウン回避のためにできることは、全てやると言って、人気YouTuberにまで協力を呼びかけたりしてきた政府も、結局のところ、年明けから変わったことと言えば、警備が多少、強化された程度で、今から考えると、直接、感染を減少させる追加対策は、取られていなかったような気がします。
10月末に迎えた第2波によるロックダウン以来、レストランやバーなどは、ずっと閉店したまま、18時以降の夜間外出禁止も続いたままにも関わらず、感染は一向に減少しないどころか、イギリス変異種の拡大により、ジワジワと感染は増加してきました。
ジワジワとはいえ、すでに年明けの段階で、1日の感染者数が2万人超えの状態でのジワジワですから、毎日2万人以上も増えている感染者から感染がさらに広がっていくのは、当然です。
つい先日のテレビのニュース番組に長時間のインタビューに答えたカステックス首相が言っていたように、第3波を迎えつつある状態で、「フランスは、予防のためにロックダウンはしない」という対策、つまり、最悪の状態になった場合にだけロックダウンということです。
そして、その最悪の時が来つつあります。
最終的なロックダウンの決定をするのは、マクロン大統領ですが、マクロン大統領があくまでもロックダウン回避の方針に大きく舵取りを始めたのは、高等教育機関(大学以上)の学生からのマクロン大統領への手紙のやりとりが話題になった頃からで、この学生を始めとする若者の声の高まりが彼を動かしたような気もしています。
これを機に、学校はとにかく継続、貧窮する学生への食事の援助(1ユーロで供給されるキャンティーンなど)も始まりました。
医療崩壊さえ起こらなければ、ロックダウンはしないという言葉どおり、集中治療室の占拠率が90%を超えて、逼迫し始めた段階で、できる限り、集中治療室の空きを作るために、まだ少し余裕のある病院への患者の移送をすることを発表しました。
少しずつ患者の移送が始まりはしたものの、実際のところは、リスクも伴う移送に患者や患者の家族が同意しない場合も多く、政府の算段どおりには、移送は進まず、逆にそれ以上の集中治療室に入る患者数が大きく上回り、問題となっていたイル・ド・フランス(パリを中心とする地域)の集中治療室の占拠率は、患者の移送を開始してすぐに、100%を超えてしまいました。
さらに、1日の新規感染者数もこれまで2万人台に止まっていたものが、昨日(17日)には一気に38,501人までに跳ね上がり、これまで高い数字とはいえ、なんとか微増の状態で持ち堪えていた状態が、一気に第3波の波に乗ってしまった感じです。
第2波がおさまらないまま続いているのだから、これは第3波ではないと失笑してしまうコメントを出している人もいましたが、大きな波に乗ってしまったことは間違いありません。
失笑するコメントには、「悪いのはフランス人じゃない!マスクの性能が悪いんだ!」なんていうのもあって、ずっこけました。
ここへきて、悪いことにアストラゼネカのワクチンの安全性をめぐって、ワクチン接種もほとんどストップしている状態で、まさに待ったなし、崖っぷちの最終手段を取らなければならない状態です。
とはいえ、フランス全土がこの危機的な状況であるわけではなく、これまですでに週末のみのロックダウンが施行されているニース・アルプマリティーム県やダンケルクに加えて、オード・フランス、イル・ド・フランスが今後、週末のみ、あるいは、2回目のロックダウンと同様の制限(学校は継続)になることは、確実です。
フランスの現在の感染拡大は、イギリス変異種が全感染の70%まで達して、猛威をふるっていることが、大きな原因ですが、そもそもイギリス変異種が警告されて、慌てて、イギリスとの国境を閉鎖したのが、昨年のクリスマス直前のことでした。
あまりの急な国境閉鎖にたくさんのトラックが国境付近で足止めを食い、PCR検査をしないと入国できなくなったトラックの運転手がクリスマスどころか、トラックで数日間、寝泊まりする事態にも陥りました。
イギリス変異種の感染の勢いと重症化から、マスクがこれまでのサージカルマスクでは充分ではなく、FFPマスクでなければイギリス変異種の感染は避けられないのではないか?などとFFPマスクについても話題にもなりました。
しかし、年が明けてから、何回も、もうこれはヤバいのではないか?という状態でも、あくまでもロックダウンはしないという政府の姿勢から、イギリス変異種への危機感も何となく、認識が薄れてきてしまったのが現実です。
実際に、1月半ばの段階で、Inserm (Institut national de la santé et de la recherche médicale) (国立保健医療研究所)は、イギリス変異種が本格的に拡大・急増するのは、3月半ばすぎであると発表しており、それまでに少しでも感染を減少させて、病床を空けて備えなければならない」と警告していました。
最初のロックダウンが始まってから一年、経済的にも、国民の精神的な疲弊も考慮しつつ、ロックダウンはできる限り避け、ワクチン接種が拡大するまで、何とか凌ごうとしていたフランスですが、結果的には、さらに感染は拡大し、この拡大してしまった感染を抑えるのは、さらに長い時間がかかることになります。
昨日の病院の現場を視察に出たマクロン大統領が、「この厳しい状況は、4月半ばまで続くだろう」と語ったことが話題になっていますが、今、すぐにロックダウンをしても、すぐに感染がおさまるものでもなく、ロックダウン後もしばらく上昇を続けて、下降し始めるのは、少なくとも2週間後、4月の半ばではとても済む状況ではありません。
ここまで拡大した状況になると、もはや、ロックダウンする日が1日でも遅れれば、それだけ、感染は拡大し、回復するまでには、さらに時間がかかります。
結局のところ、もっと早くロックダウンしていれば、こんなに酷いことにはならなかったのではないか?と、やっぱり思ってしまいます。
今年に入ってからだけでも、フランスのコロナウィルスによる死亡者数は26,805人、1日平均350人が亡くなっています。
もはやロックダウンか?というニュースとともに、世界一ワクチン接種が進んでいるイスラエルでは、外出の際のマスクは義務付けられているものの、全てのお店がオープンし、ほぼ日常の生活を取り戻し始めているというニュースが流れています。
国の対応の違いで、こんなに変わるものなのか?と楽しそうにしているイスラエルの光景をフランス人はどんな思いで見ているのだろうか?と、ちょっと切なくなりました。
<関連>
「フランスの感染がおさまらないのは政府の責任というフランス人」
https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/11/blog-post_14.html
「マクロン大統領のユーチューバーとのチャレンジ企画 Mcfly et Carlito(マクフライとカーリト)」
https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/02/blog-post_22.html
「フランスの高等教育機関の授業体制への抗議に対するマクロン大統領の手紙」
https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_16.html
「変異種による2回目のパンデミックが起こる」
https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_26.html
「コロナウィルス変異種感染拡大によるイギリスからの入国制限が引き起こした混乱」
https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/12/blog-post_24.html
「FFPマスクの義務化の是非とフランス人の義務と補償と権利」
https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/ffp.html
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