どうやら、イギリス変異種がフランスにも拡大し始めていることを受け、フランスでは、マスク論争が再び再燃しつつあります。
コロナウィルス感染が始まって以来、マスクに関しては、フランスは、紆余曲折を重ねてきました。
昨年3月の最初の感染爆発の際は、本来は、パンデミック対策としてストックされているはずのマスクが大幅に削減されていた状態で、また、マスクの有効性に関しても、政府は「一般人にはマスクは必要ない」などと臆面もなく発表しており、医療従事者以外は、マスクを買えない状況がしばらく続いていました。
その後、マスクが国宝級の待遇で輸入され始め、5月のロックダウンに向けて、マスクが一般人に対しても推奨されるようになりました。
それでも、当初、フランス人にとって、マスクへの嫌悪感は強く、マスクが浸透するには、それなりの時間がかかりましたが、パリ全域でマスクが義務化されたのは、人々がバカンスへ出かけ、第2波を迎え始めた8月末のことです。
マスクをするしないで、バスの運転手が殴り殺された事件も起こりました。
秋から冬にかけて、フランスは、感染者が1日6万人強という、立派な第2波を迎え、周囲の国々もフランスへの渡航を禁止する国が続出しました。
10月末から11月の約1ヶ月間の2回目のロックダウンで、フランスの感染は1日1万人前後にまで減少しましたが、クリスマス、年末年始を過ぎて、イギリス変異種の影響もあるのか、現在のフランスの新規感染者数は、2万5千人前後にまで上昇し、現在は、18時以降の夜間ロックダウン状態です。
特に現在は、イギリス変異種の驚異で、その感染力の強さから、義務化されているマスクも、ただの布マスクやサージカルマスクでは充分ではないと言われ始め、ドイツの一部の地域などは、FFPマスク着用が義務化されていることから、フランスでもFFPマスク(よりフィルタリング効果の高いマスク)着用が必要なのではないかという意見が出始めています。
最初にロックダウンが解除になる際には、「マスクが推奨される」という義務ではない状況にも関わらず、ほとんどの市町村から、ロックダウンに間に合うように、国民にマスクが配布されました。
しかし、今回のFFPマスクは、サージカルマスクや洗って何度も使える布マスクとは違い、価格もサージカルマスクの何倍もかかります。毎日、使うものゆえ、それを抱えるのが国であろうと国民であろうと負担は大きくなります。
また、医療従事者を優先とするのは、必須ですが、FFPマスクの供給が間に合うとも思えず、当初のマスク問題のように、政府は、このFFPマスクについて、「現在のフランスの感染状態では、一般人には、必要ない。」と発表しています。
まるで、あの時と同じではないか・・と私は、思ってしまいます。した方が良いマスクを供給できないことから(補償も含めて)、「必要ない」と言うところが・・。
義務化する以上、何らかの補償を要求するのは、フランス人の最も得意とするところ、コロナウィルス感染対策のために国による規制で営業ができない店舗等に対しては、前年度の実績に対するパーセンテージで補償が支払われています。
前回のマスク義務化の前には、ロックダウン解除の段階で、一応、マスクが配布されました。思えば、これも補償の一部でした。
FFPマスク義務化には、そのマスク配布は、補償という面でも、かなりハードルが高いのです。しかし、義務化に伴う補償をフランス人は要求します。
この危うい感染状況の中で、フランスでは、完全なロックダウンにならない限り、何らかの抗議をするデモやストライキをする権利が常に認められており、また、今週は、RER(イル・ド・フランス圏急行鉄道網)の交通機関のストライキが予定されています。
この状況の中、ストライキによって起こる交通機関の更なる混雑状況をわざわざ起こすストライキが認められていることは、マスクをサージカルマスクにするかFFPマスクにするか以前のフランスの悪循環の大きな要因の一つです。
毎週のように土曜日に行われるデモもまた同じです。
人の行動を大きく制限しながら、主張する権利は決して侵害しないのがフランスです。
今は、特にコロナ禍ゆえ、そんな悪循環が際立って見えますが、思えば、通常時もこのフランス人の権利を主張するデモやストライキは、常に大きな混乱をもたらしているのです。
それでも、フランス人は、この権利の主張を誇りに思い、フランスのフランスたる重要な一面であると大切にしているのです。
<関連>
「コロナ禍中でも続くフランス人の権利の主張」
https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/11/blog-post_19.html
「マスク着用を注意したバスの運転手が暴行を受けた末に脳死状態 フランスの治安」
https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/07/blog-post_8.html
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