2021年1月6日水曜日

ワクチン問題、さらに混乱状態のフランス

  


 コロナウィルスのワクチン接種が極端に遅れていることが問題になって以来、政府もワクチン対応に躍起になって、混乱状態の様相を呈してきています。

 明らかに初動態勢に抜かりがあり、華々しくフランスでの最初のワクチン接種の様子を報道したりしたものの、その実、うまく事は運んでいなかったのです。

 まずは、高齢者施設から、1月末までは、100万人、2月からは・・などと、目標数値やスローガンを立派に掲げたものの、実際の接種に際しての準備が追いついていなかったのです。

 このワクチン接種の数字が各国から具体的に上がってきて、フランスの初動失敗の様子が報じられると、政府は、あたふたと昨日は、「5,000人の接種を行った」ことを報道し、その上、ワクチン接種の最優先の縛りを、これまでの高齢者施設の居住者と50歳以上の医療従事者に加えて、50歳以上の救急隊員とホームヘルパーもワクチン接種が受けられるようになったことを発表しました。

 高齢者施設でのワクチン接種が思ったよりもスムーズに運んでいないこともあり、今、より多くの人に少しでもワクチン接種を行っていくことは必要なことでもありますが、これには、とりあえずの数字稼ぎのような気がしないでもありません。

 なぜ、高齢者施設の居住者を最優先にしたか? それがスムーズに行っていないなら、そのための解決策を、まず、取らなければなりません。

 目標とするスローガンや数字を大々的にアピールすることは、フランスの得意とするところではありますが、論理的には可能なことが、スムーズには運ばないのがフランスなのです。そんなフランスの理想と現実がこのワクチン接種では顕著に露呈した一例であったような気がしています。

 また、スムーズに運ばなかったワクチン接種のこれまでの結果から、貴重なワクチンを無駄にしてしまっているかもしれない可能性まで露見し始めています。

 このワクチンは、ー70℃という冷凍状態で輸送、保存する必要があり、投与前に5日間冷蔵庫に保管、準備ができて5時間以内に使用する必要があります。一度、解凍したワクチンは、食品同様、再度、冷凍することは不可能です。

 そして、現在、使われているファイザー、バイオンテックのワクチンは、6回分のワクチンがまとめてパッケージングされており、ある程度、纏まったワクチン接種が行われない場合、解凍されたままのワクチンを無駄にすることになってしまいます。

 これまで実際にワクチン接種が行われた数字と開封されたワクチンから、すでに少なくとも20%のワクチンが無駄になってしまっていることが問題になっています。

 また、このワクチンがさらにややこしいことには、最初のワクチン接種から2〜3週間以内に2回目のワクチン接種を行わなくてはならないところです。ですから、これからワクチン接種が進むに従って、1回目の接種と2回目の接種の人を同時にこなしていかなくてはならないのです。このまま、急激にワクチン接種を増やしていくということは、自ずと2倍3倍の数をこなしていかなければならないわけです。

 そもそもワクチンに関しては、フランスの最大手製薬会社サノフィのワクチン開発が昨年末になって、高齢者への有効性が低いことから、フランスで製造できるワクチンの完成は2021年の年末にずれ込むことが発表された時点から、雲行きが怪しくなってきていました。

 現在は、ワクチンを100%輸入しているフランスは、そのワクチンの確保も容易いことではなく、現在は、50万回分のストックが確保できているとしていますが、現在、認可されているファイザーとバイオンテックに加えて、数日中には、急遽、モデルナ社のワクチンが認可されるようです。

 バカンス後の感染拡大も大いに心配される中、ワクチン問題ばかりに問題が集中していることがかえって不安に思います。

 負けず嫌いでプライドの高いフランスが、ドイツ、イギリス、オランダ、イタリアなど各国と比較されて、極端に劣っているなどとされることは耐えられないことでもあるかもしれませんが、ここは慌てずに、フランスの実情を踏まえて、ワクチンの有効性をできるだけ保てるように慌てず、確実に進めて欲しいと思っています。


<関連>

「フランス人のプライド」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/08/blog-post_6.html

「フランス人は、イタリアを下に見ている」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/01/blog-post_3.html

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