2021年1月12日火曜日

フランスでコロナウィルスワクチンが浸透しにくい理由

  


 コロナウィルスのワクチン接種に関して、始動時からつまずいて、同時期に開始したヨーロッパ諸国からも大きく遅れをとったフランス。

 フランス政府は大バッシングを受け、巻き返しに躍起になり、ワクチン接種の拡大を今年のコロナウィルス対策の最優先事項に据えています。

 高齢者施設の居住者を最優先としたことが、(家族の同意書等が必要なことから)想像以上にワクチン接種の拡大にブレーキをかけていたことから、フランス政府は、ワクチン接種を受けることができる人の枠を50歳以上の医療従事者に加えて、50歳以上の救急隊員とホームヘルパーまでに拡大、来週からは、高齢者施設居住者以外の75歳以上の人もワクチン接種が可能になります。

 このワクチン接種優先範囲の拡大により、昨日、フランスは、ようやく10万人にワクチンを接種したこと、月末までには、100万人を達成することを発表しました。とはいえ、先を行くヨーロッパ諸国も前進を続け、ドイツなどは、1月末までに400万人に対しての投与を予定しており、フランスの数字は、遥かに及びません。

 そもそもフランスは、ファションなどの流行の発信地であるようなイメージがあるものの、実のところは、とても保守的な人々で、新しいものになかなか手を出さない傾向があります。

 食べ物などでも、次から次へと新製品が出回る日本と違って、新しいものは、なかなか登場せず、たまに出てきても定着しづらく、また、国民があまりそれを求めていないところもあります。

 全く、いつもいつも同じものをずっと食べていて、よく飽きないな・・と思うのですが、そこがフランス人のプライドとも言える「フランスのものが一番!」という意識が新しい製品、海外からの異なる文化の食べ物が進出しにくい所以でもあります。

 そんな中、フランスで日本食ブームが到来し、特にお寿司がほぼ市民権を得たのは凄いことです。

 ワクチンに関しては、昨年、急に発生した新型コロナウィルス。そんなウィルスに有効であるとされ、治験は済んでいるとはいえ、まだまだ登場して数ヶ月しか経っていない薬に対する懐疑心の強さは、特にフランス人ならば、不思議なことではありません。

 大体、考えて見れば、マスクでさえ、その着用義務化が定着するには、時間がかかったフランスです。未だにマスク着用義務に反抗している人も少なくありません。未だに、公共交通機関等でマスクを着用しないと言い張る乗客と乗務員の間にいざこざが起こったり、マスク義務化反対のデモが起こったりするのです。

 現在は、ワクチン接種は義務化ではなく、そこまで広範囲に拡大していないので、波紋を呼ぶほどの騒動には至っていませんが、これから、広範囲に拡大するとともに、ワクチン接種に関する論争は、激しくなることが考えられます。

 そもそも高齢者施設でのワクチン接種がなかなか思うように進まなかったのも、認知症等で本人が同意書にサインできないケースに関わってくる家族の反対が想像以上に多かったためで、ネット上でもワクチンの安全性を説明するサイトと同時にワクチンの危険性を説明するサイトも多く出回っており、アンチワクチン波の意見や動向は、テレビなどでは報道されませんが、この種のサイトは特に若者を中心に広まっています。

 当初から根強く広まっている「若者安全神話」は、このワクチン接種の拡大にも災いしているようです。しかし、この「若者安全神話」が災いして、絶対的に感染を拡大させているのは、若者であることも事実なのです。

 ただ、他国のワクチン接種が拡大していく様子を見て、ワクチンを受けないと言っていた人のパーセンテージが60%から50%に減少しているという話もあり、今後、他国の様子を見て、また、生活を制限される不自由な生活が長引くに連れて、「やっぱりワクチンを受ける・・」と、世論も変化していく可能性もあります。

 どちらにしても、まだ、大多数の人にワクチン接種が可能ではない状態。幸か不幸か、ワクチン接種に関しては、もう少し考える猶予がありそうです。


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「アメリカのものが嫌いなフランス人の夫」

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