2021年1月28日木曜日

なかなかロックダウンを決断できないフランス政府と国民感情の動き

   



 ロックダウンは必須だと言われながら、フランス政府はなかなかその決断を下さないまま、一週間以上が経過しています。感染状況だけでなく、経済的な逼迫状態からも、そのロックダウンの詳細を決めかねているのは、理解できます。

 政府の決断は、僅かな期待を込めて、夜間外出禁止を前倒しして、18時にした成果を見届ける2週間後の今週末まで、決定を引き延ばしていますが、残念ながら、その効果は全く現れておらず、新規感染者数も集中治療室の患者数も増加し続けています。

 もしも、この夜間外出禁止の時間帯を早めなければ、もっと急激に増加していたかもしれないので、それなりの効果はあるとも考えられますが、どちらにせよ、感染が拡大し続けている以上、更なる措置を取らざるを得ないことは誰もがわかっています。

 しかし、国民もロックダウンや多くの制限に縛られる生活に経済的にも精神的にも疲れてきていることもあり、営業停止になっているはずのレストランが痺れを切らして営業を始めたり、先日は、パリでは、いくつかのレストランが実は営業していて、ランチタイムなどは、かなりの人が入っているのに、現地の警察が見て見ぬふりをして、営業が続けられているという話を聞いたばかりです。

 昨日は、ニースにあるレストランが営業禁止を無視して、営業を再開し、テラス席は、50人ほどの客が集まり、20人の警察が踏み込み、営業終了を待って、レストランのオーナーは逮捕、お客さんには、135ユーロの罰金が課されました。

 かれこれ、最初のロックダウンから1年近く経過したフランス国民は、昨年の3月の時点では、93%がロックダウンに賛同していたものの、4月のロックダウン延長時には、83%、2回目のロックダウンの10月末には67%にまで低下し、現時点では、58%まで低下しています。

 10月末の2回目のロックダウンの際には、12月には、なんとかクリスマスを家族で迎えるためにという明確な目標もあり、まだ希望もありましたが、現在は、イギリス変異種の急激な拡大により、周囲のヨーロッパの国々も厳しい感染状況の中、次々にさらに厳しい規制が敷かれている中、終わりの見えない今回のロックダウンには、抵抗があるのは、もっともでもあります。

 しかし、この状況をこのまま放置するわけにもいかず、特に、感染力も高く、致死率も高いイギリス変異種の拡大は、深刻で、2週間前には、感染の1〜2%程度であった変異種が現在では、パリ地域では、14%まで上昇しており、2週間で10倍以上にも膨れ上がったことになります。近いうちにコロナウィルスの主流は、イギリス変異種がとって変わるのではないかとする見方をする専門家もいます。

 これらの状況を鑑みるに、現在3,100人まで膨れ上がっている集中治療室の患者数は、2週間後には、4,000人、さらに2週間後には、5,000人まで増加すると予想されています。

 集中治療室に5,000人というのは、フランスの医療システムの崩壊状態に限りなく近づく数字です。政府は、10,000床まで集中治療室は、拡大できると言っていますが、ベッドだけあっても、それをケアーする人出は足りません。

 政府の決断が遅れれば遅れるほど、感染者は増え続け、国民感情も動揺して、迷いが生じてきます。被害を少しでも少なく留め、できるだけ早く感染を収束させるためには、本当は、もう猶予できない状態なのです。

 昨日は、5月に予定されていたカンヌ映画祭が7月に延期されることが発表されました。先の予定ばかりが先行して延期になったり、中止になったりしているのに、目の前に迫っているロックダウンが決められないことをとても、私はとても、もどかしく思っています。


<関連>「変異種による2回目のパンデミックが起こる」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_26.html

 

 

 

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