2021年1月30日土曜日

まだロックダウンしないフランスの真意


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 金曜日の夜18時に、マクロン大統領がエリゼ宮に防衛評議会を招集したというので、これは、いよいよロックダウンだと思いました。

 フランスのコロナウィルスの感染は、劇的な悪化はしていないものの、確実に増加しており、夜間外出禁止の時間前倒し(18時以降外出禁止)が、感染減少には繋がるほどの効果が出ていないことは明らかな状態です。

 防衛評議会は、1時間ほどで終了し、そのおよそ1時間後には、カステックス首相の会見が開かれるというので、その会見内容が注目されていました。

 なぜ、マクロン大統領が出てこないのか? なぜ、カステックス首相が会見するのか? それだけでも、ほんの短い時間にざわつきました。

 しかし、カステックス首相の会見で、今回は、マクロン大統領が出てこなかった理由がすぐにわかりました。つまり、ロックダウンではなかったのです。

 カステックス首相の会見内容は、夜間外出禁止の効果は出てはいるものの、充分ではない。しかし、今しばらく、さらに衛生管理を強化し、状況を見守る猶予期間を取るものとする。

・EU圏外からの入国禁止

・リモートワークの強化

・20,000㎡以上のスーパーマーケット、ショッピングセンターの食料品以外の店舗、コーナーの閉鎖

・夜間外出禁止、営業禁止店舗(レストランなど)の取り締まり強化

・検査・隔離の徹底

 海外からの入国禁止とコマーシャルセンター・スーパーマーケット内の一部閉鎖以外は、これまでと大して変わらない内容の発表は、ほんの5分ほどで終わりました。

 なんだか、肩透かしを食った内容でしたが、この内容の制限のみで、感染が減少するとは考えづらく、「もっと、気をつけろよ! できなければ、ロックダウンだぞ!」という、ロックダウンを決行する過程の精神的なショックや政府に対する反抗回避への1クッションであったような気がします。

 感染症専門家の多くは、今の段階で、これだけの制限に留めることには、かなりの疑問を抱いている人が多く、特に変異種の拡大は深刻であることから、特にパリの医療体制は、かなりの逼迫状態にあり、患者の移送さえも始まっている状態であるといいます。

 1週間後には、フランスでは、冬休みのバカンスに突入するので、その期間にロックダウンを重ねれば、学校を閉鎖する期間をそれに重ねることもできるのですが、その時期に制限がない場合は、逆にまた、多くの人が国内を大移動し、感染を拡大させることになります。

 賛否両論はあるにせよ、多くの人がロックダウンを信じて疑わなかった状態での今回のカステックス首相の発表内容には、やはり、内心は、一瞬、少々ホッとしたものの、しかし、依然として、いずれロックダウンになるであろうという思いには、なんの変わりもありません。

 ただ宙ぶらりんだった状況の中、現在の段階ではロックダウンしないにせよ、動揺する国民の気持ちになんらかの新しい発表が必要なタイミングであったのかもしれません。

 本来ならば、衛生管理は、まだまだ努力の余地が大いにあると思えるフランスではありますが、それができないから現在の状況に至っているわけであり、より具体的な制限や対策がない限り、ロックダウンする以外に道はないのです。

 検査と隔離の問題だけを見ても、検査は、かなり可能な状態ではありながら、肝心の隔離ができていない状態がフランスではずっと続いているのです。

 経済的なダメージや国民の精神的なダメージのために、なんとかロックダウンを回避、あるいは、先送りしようとしているのもわかりますが、危機的状況を迎えれば、結局は、ロックダウンもさらに厳しいものになり、より長いものになることは避けようもありません。

 結局は、感染が爆発的な上昇を見せない限り、ロックダウンには、踏み切れないことに憤りを感じるのです。


<関連>「なかなかロックダウンを決断できないフランス政府と国民感情の動き」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_28.html


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