2021年3月6日土曜日

フランスの深刻な医療従事者へのワクチン接種の遅れ

   


 「ロックダウン回避のためにできるあらゆることをする」「ロックダウンは、あくまでも最終手段」という姿勢を取り続けているフランス政府は、取り締まりを強化したり、人気ユーチューバーにソーシャルディスタンスを呼びかける動画作成を依頼したり、様々な試みをしていますが、これ以上の感染拡大を止めるためには、なんと言ってもワクチン接種です。

 ヨーロッパ各国では、昨年12月からワクチン接種が開始していますが、フランスは、第一波で最も多くの死亡者を出した「高齢者施設の住民」を最優先としたことで、スタートから、大きく、つまずき、年明けに周囲のヨーロッパ諸国からフランスが桁外れにワクチン接種で遅れをとっていることが発覚してからというもの、急激にワクチン接種の対象者を拡大し、躍起になってワクチン接種を進めてきました。

 アクセルがかかり始めてまもなく、今度は、ワクチン製造会社側の問題から、ワクチン供給が間に合わなくなり始め、再び、二の足を踏むことになりましたが、問題は、それだけではなく、ワクチンを接種するにあたっての予約の問題やワクチンの保管や輸送の問題、ワクチン接種場所の問題など、次から次へと問題が取り上げられてきました。

 それでも、2月に入って以来、少しずつワクチン接種は拡大していく気配が見え始め、昨日は、1日で25万人のワクチン接種を行い、ワクチン接種開始以来の最多接種数を記録しました。

 実に政府は、このワクチン接種が進んでいることをアピールすることにも必死なのです。

 そもそも、昨年、ワクチン接種が始まる段階で、マクロン大統領は、国民に対して「ワクチン接種は義務化はしない」と発表しており、フランスでは、ワクチン接種は義務ではありません。 フランスには、アンチワクチン論者も少なくないのです。

 それが、昨日のコロナウィルス感染対策に関するカステックス首相の会見の中で、「医療従事者(介護者も含めて)の3人に1人しかワクチン接種が行われていないこと」が明らかになり、この事実が波紋を呼んでいます。

 年明けからの2カ月間、医療従事者を優先にしてきたにも関わらず、その30%しか、ワクチン接種が行われていないことは、パンデミック以来、フランスで起こってきたコロナウィルスの院内感染が医療従事者が原因でもあることを見ても、見過ごせない事実です。

 これまでにフランスでは、院内感染は27,000人、院内感染による死亡者は186人、確認されています。

 これには、ワクチン供給の問題以前に、医療従事者の中に、単なる段取りの悪さだけではなく、一定数のアンチワクチン論者がいるということにも起因しています。

 首相がこの事実を発表したことから、マスコミもこの問題に注目し始めたのを機に、オリヴィエ・ヴェラン保健相は、医療従事者向けに手紙を送っています。

「もし、あなたがまだワクチン接種を受けていないのならば、1日も早く医療従事者はワクチン接種を受けてほしい。私たちの集団安全保障が危機に瀕しているのです。感染の更なる拡大が懸念されている中、医療従事者のワクチン接種が進まないのでは、私たちはウィルスと効果的に戦うことができません。私たちの医療制度が持ち堪えるために、何よりも必要なことなのです。」

 この呼びかけでも効果がない場合に、「医療従事者に対するワクチン接種の義務化」も検討され始めています。

 実際に、医療従事者向けにストックされているワクチンが消費されずに、在庫として、残されているのです。

  現在のフランスのワクチン接種強化キャンペーンの中での医療従事者のワクチン接種率の低さは衝撃的です。一般(高齢者やリスクの高い人)向けへのワクチン接種は、加速しており、ワクチン接種センターでは、日曜日も休まず接種を行うように通達がなされています。

 フランス人に日曜日も休まずに・・という通達が出されるというだけでも、政府の必死さが伝わってきます。

 もう一度、原点に戻って肝に命じなければならないことは、感染するということは、周囲を感染させることに直結することなのです。

 現在のフランスの状況では、残念ながら、ワクチンによるリスクよりもコロナウィルスに感染するリスクの方が遥かに高いのです。

 しかしながら、ワクチン接種の速度が上がってきたことで、少しずつ明るい見通しのニュースも聞こえ始めました。

 昨年から、営業停止が続いているレストランやカフェなども夏前には、2段階に分けて、まずは昼の営業から再開できるのではないかとオリヴィエ・ヴェラン首相は発言しています。

 それもこれもワクチンの進捗状況にかかっており、恐らく彼の夏前には・・という発言は、夏前までには、ある程度のワクチン接種進行のスケジュールに基づいているのでしょう。

 ある程度、ウィルスが気候の影響も受けることが昨年の経過からわかっていますが、昨年、2ヶ月間のロックダウンをして、気温が上昇してもなお、ウィルスがなくなることはなく、終いには、変異種まで登場してしまったのですから、ワクチンだけに頼って安心することはできないかもしれませんが、少なくとも、現在、できることは、まず、ワクチン接種を拡大していくこと、そして、少なくとも医療従事者には、ワクチン接種をしてほしい・・と切に思います。

 ちなみに私のかかりつけのお医者さんは、とっくにワクチンは受けたそうで、「ワクチン接種しないで、こんなことやってられないわよ・・」と言っていました。

 普通、そうだよね・・。


<関連>

「フランスでコロナウィルスワクチンが浸透しにくい理由」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_12.html

「フランス・コロナウィルスワクチン接種開始」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/12/blog-post_28.html

「フランスのワクチン接種が大幅に遅れをとっている理由」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_5.html

「ワクチン問題、さらに混乱状態のフランス」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_6.html

「今年のフランスのコロナウィルス対策は、ワクチン接種が最優先事項」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_8.html


 






  



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