2021年3月16日火曜日

アストラゼネカのワクチン使用停止が招く混乱と不信感

 

  Le vaccin AstraZeneca a été suspendu au Danemark, en Islande et en Norvège. (ARTUR WIDAK / NURPHOTO / AFP)


 アストラゼネカ社のワクチンについては、先週、すでにその安全性が確認できるまで使用を中断することをデンマーク、ノルウェー、アイスランド、ブルガリア、アイルランド、オランダ、スペインが発表していました。

 いずれの国も同社ワクチンによる副反応(血栓症)への懸念によるものです。

 今週になって、ドイツが血栓ができるリスクは低いものの、リスクを排除することはできないとして、ポール・エーリッヒ研究所(PEI)の助言に従い、アストラゼネカのワクチン接種を中止することを発表しました。

 このドイツの発表から雪崩式に、フランス・マクロン大統領が欧州医薬品庁(EMA)によるアストラゼネカ製ワクチンの精査が16日に完了するまで、予防措置として、同ワクチンの接種を停止することを発表しました。

 イタリアも同様の決断を下しています。

 フランスでは、つい数日前に、オリヴィエ・ヴェラン保健相が「アストラゼネカのワクチンについては、リスクは大きいものではなく、ワクチン接種を中断する理由はない」と記者会見で発表したばかりです。

 多くの医療従事者は、副反応のリスクについてはゼロではないものの、特に事例が急増したわけでもなく、今回のマクロン大統領のワクチン接種中断の発表は大いに政治的な発言であると遺憾の意を示しています。

 あくまで「予防措置」として中断するという発表ではあったものの、この急なアストラゼネカワクチン接種中断の発表は、その中断という内容だけでなく、数日前まで、かなり強い調子で言っていたことを否定するもので、政府の発表、決定に対する不信感と混乱を招いています。

 タイミングも悪く、先週の保健相の発表の舌の根も乾かないうちのこの発表は、ただでさえ、感染状況も深刻に悪化しているフランスの現在の状況には、さらなる混乱を招き、かなりのマイナスポイントです。

 ドイツのように、血栓ができるリスクは低いものの、リスクを排除することはできない以上、使用は中止するというはっきりした決定ならば、いざ知らず、数日前まであれだけ勧めておいて、精査ができるまで一応、中断するというどっちつかずの発表は、不安と不信感を募らせます。

 すでにワクチン接種をしてしまった人も微妙な気持ちでしょうし、していない人も動揺します。

 開発されたばかりのワクチンが急激に広まるのですから、この種のトラブルが起こることは、充分に考えられることです。政府は、これに対するもう少し慎重な対応が必要でした。

 ただでさえ、ロックダウンを回避し続けながら、感染はすごい勢いで拡大し続ける中、アストラゼネカのワクチン接種を中断することで、頼みの綱であるワクチン接種が大幅に遅れていくのは、大きな痛手であるに違いありません。

 特にフランスで現在、最も出回っていたアストラゼネカのワクチンです。

 フランスでは、曖昧な態度でお茶を濁すような発表や対応では国民は納得しません。中断するにしても、それなりの明解な説明が必要です。

 ただでさえ、感染拡大、感染悪化は、政府のせいだ!と言い張る人が多いフランスです。明瞭な説明がなされない限り、政府に対する反発はさらに大きくなります。

 すでに一回目のワクチン接種を済ませている人(アストラゼネカワクチンで)は、二回目の接種に足止めを食い、この混乱から宙ぶらりんな状況に置かれ、不安な状況に陥っています。

 ただでさえ、今にも再びロックダウンかもしれない・・すでに多くの制限下で不安な状態に置かれているフランス人にとって、このアストラゼネカワクチンの可否、是非についての混乱は、不安をさらに募らせることになってしまいました。

 マクロン大統領は、このワクチン接種の中断とともに、欧州医薬品庁(EMA)の再審査の結果、許可がおり次第、ワクチン接種は再開すると発表していますが、このバタバタでさらに募った国民の不信感を回復するのは、大変です。

 早くも一晩にして、アストラゼネカのワクチンに対する国民の不信感は激増し、世論調査によれば、アストラゼネカのワクチンを信頼していると答えた人は、20%のみ、52%がアストラゼネカのワクチンを拒否し始めました。

 これでは、たとえEMAのOKが出て、政府がワクチン接種を再開させても、スムーズにワクチン接種が進むとは思えない状況です。このワクチン再開には、まずこのワクチンの安全性に対する信頼を取り戻すことから始めなければなりません。

 ちなみにフランスでこれまで接種されたアストラゼネカワクチンは、1,344,118件、ヨーロッパ全体では500万件中、血栓症が報告されているのは、30件だそうです。

 私もワクチン接種の予約をしていましたが、今週あたり、もう一度、お医者さんに電話して聞いてみようと思っていたのですが、これでは、当分、無理そうです。


<関連>

「フランスはアストラゼネカのワクチン接種は続行 アストラゼネカのワクチンの安全性への波紋」

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