今や定例会見となっている木曜日の夜の会見は、誰が記者会見に登場するかで、その発表内容の深刻度が測れるようになってきました。
今回の会見には、マクロン大統領でも、カステックス首相でもなく、オリヴィエ・ヴェラン保健相一人の会見だと知らされていたので、大きな動きはないものと予想されていましたが、事実、そのとおりで、大きな発表はありませんでした。
前日から、ニエーヴル県(ブルゴーニュ・フランシュ・コンテ地域圏)、オーブ県(グラン・テスト地域圏)、ローヌ県(フランス南東部の地域・リヨンなど)など3地域の急激な感染状況の悪化が問題視され始め、この3地域が先週発表された16地域のロックダウン(10㎞以上の外出制限や一部店舗の営業停止)と同様の措置が取られることが発表されたのみ、ロックダウンとはいえ、ゆるゆるのロックダウンで大した規制にはならないことがわかっているため、定例会見にしては、全くインパクトもありませんでした。
折しも、この会見の当日に、これまで3万人台(平均3万5千人程度)にとどまっていたフランスの1日の新規感染者数が、一気に4万5千人を突破し、感染状態が急激に悪化したことが、はっきりと数字に表れたこともあって、この状態に新たな対策を取らないことに不安の声が大きく上がり始めました。
オリヴィエ・ヴェラン保健相は、現在の段階では、特に感染が悪化しているイル・ド・フランスに対しても、更なる規制を加えることや、学校のイースターのバカンス時期の前倒し等の対策を決定するのは時期尚早と発表し、今回の発表は、「何も発表することがないこと」を発表したに過ぎない、「時期尚早とは、一体、何をどこまで待てばよいのか?」と辛口の意見が出ています。
たしかに、1日の新規感染者が4万5千人もいる状態で、「時期尚早」というのは、ちょっと納得し辛い説明です。
今回のオリヴィエ・ヴェランの会見では、フランスにしては、珍しく、原稿を手元に置いて、それをチラチラと見ながら、下を向きがちな会見で、説得力にかける感が否めないものでした。
「とにかく、ワクチン接種を拡大する・・3月末までには、これだけの数、4月末までには、これだけのワクチンが届き、これだけのワクチン接種が可能になる」という発表は、もはや、これまでも、ちっとも発表された数字どおりに事が運んでいないために、ほぼ、蕎麦屋の出前状態で、信憑性がありません。
その上、大した対策の強化はないままに、ワクチン接種だけに頼っている状況では、この感染の勢いを抑えることはできないのは、明白なのです。
でも、フランスでは、本当は、陽性者の隔離ができていないのが現状なので、ロックダウン云々よりも、陽性者の隔離を徹底すれば、かなり感染の広がりも抑えることができると思うのですが、なぜ、その肝心なところをきっちりやらないのか?不思議でなりません。
何よりも、イギリス変異種による感染が全感染者の85%を超え、急速な感染拡大が進む中、1日の新規感染者数が4万5千人超の状況の中、これまで間違った対応でさえも、自信満々に発表していた政府が、まるで自分の意思とは違うことを言わされているような、政府内の不協和音を感じさせるような発表に、実際の感染状況とは別の、フランス政府の迷走状態、コントロール不能の恐怖を感じさせられたのでした。
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