感染の急激な悪化により、イル・ド・フランス(パリを中心とする地域)を始めとする16の地域でのロックダウン(実際には、ゆるゆるのロックダウンとなりましたが・・)が発表されたのが、3月18日のことでした。
結果的には、外出許可証が複雑でわかりにくいなどの混乱を生んで、外出許可証は廃止になり、ロックダウン・ライトなどという呼ばれ方をしながら、それでも数種類の店舗が営業停止になり、10㎞以上の外出には、特別な理由がいるなどの規制が敷かれて、はや、2週間が経ちました。
イギリス変異種が拡大する中、本当にこんなゆるゆるな規制で大丈夫なのだろうか?と心配していましたが、やはり、その心配は杞憂に終わることはなく、感染状況は、日々、確実に悪化し、1日の新規感染者数は、コンスタンスに3万5千人、多い日には、4万5千人を超える日もあり、感染者数の増加とともに、特に集中治療室の占拠状態が深刻になってきました。
特にイル・ド・フランスの集中治療室の占拠率は、133%にまで達し、フランス全体でも100%超えの状態です。
これまでは、ニュース番組でコメントしていた医療関係者なども、「政治的な観点から考えると一概に厳しいロックダウンは、適当であるかどうかは、わからないが、科学的、医学的な観点からは、充分に危険な状況で、何らかの手段を取るべきである・・」と、比較的、抑えた言い方をしていたものの、ここ1週間ほどの、日に日に追い詰められている状況には、政治的には・・などという前置きも取っ払われて、「もう、このままの状況が続けば、2週間以内には、取り返しがつかない状況に陥る」とハッキリ発言するようになり、追い詰められている医療現場の危機感がより伝わってくるようになりました。
特に「クラスに一人でも感染者が出た場合は、学級閉鎖」を決定した直後に、実際に学級閉鎖を余儀なくされたクラスが激増し、学校内での学級閉鎖の割合は広がっています。
これらの事態を受けて、水曜日には、科学評議会が開催され、今週中には、マクロン大統領は、さらなる規制の強化を決定するであろうと言われていますが、どのような決断をするにしても、選択しなければならないのは、いずれも厳しい選択だけで、まさに、ババだけでババ抜きをするような状況です。
今や「もうすぐ、ワクチンが大量に届く」とか、「ワクチン接種を拡大する」などと、いくら力説しても、感染のスピードには、間に合わないのは、明白で、病院でのトリアージュ(患者の選別)が、もうすでに始まってしまっている状態で、これ以上、何もしないわけにはいきません。
かといって、規制が続く生活にウンザリしている国民にこれ以上の規制を強いることや、学校閉鎖にしても、これまで、「学校の閉鎖は、最終手段」と言い続けてきた政府にとって、学校の閉鎖を決定することは、「もう最悪の危機的な状況である」と宣言するのと同じことです。
そして、一度、厳しいロックダウンに突入すれば、容易にロックダウンを解除することも難しく、また、イースターのバカンスを目前にして、また家族で集まる機会を迎えるタイミング。かといって、現在の状況を続ければ、感染拡大は止まることはありません。
この深刻な状況をよそに、マルセイユで大規模なカーニバルが行われたり、昨日は、リヨンで、マスクもしないで、300人以上の屋外パーティーが行われたりしているフランスです。
「あくまでロックダウンは最終手段」という方針をとり続けてきた政府にとって、ワクチンが予定どおりに届かなくなってしまったことは、予想外の大きな誤算の一つでもありましたが、感染のスピードの速さ、重症化の多さ、そして、重症患者の治療の長期化も予想以上であったはずです。
まったく、マクロン大統領が就任して以来、マクロン大統領の政策に対する反発から起こった大規模な黄色いベスト運動のデモに始まり、大惨事を生んだテロの発生、そして一年以上にもわたるコロナウィルスとの戦いで、次から次へとフランスには、これでもかというくらい、困難が続きます。
以前、日本で、村山首相の政権の時に、阪神大震災に続いて、オウム真理教の地下鉄サリン事件などが続いた時に、なんと災難ばかりが起こる政権なんだろうと思ったことを思い出しました。
しかしながら、今回のコロナウィルスは、フランスだけに起こっていることではなく、世界的なパンデミックで、それぞれの国の対応によって、大きく、その結果に差が出ています。
今週、マクロン大統領が下す決断は、フランスの今後を左右する重大なものになることは、確実です。
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「ロックダウンは最終手段という姿勢は崩さないフランス カステックス首相の記者会見」
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