2021年4月1日木曜日

ついに最終手段の学校閉鎖を決行 これでフランスは、危機を脱することができるか? フランスの3回目の全国的なロックダウン

 

  Emmanuel Macron


 昨年の11月末の第2波のロックダウン解除の会見から実に、3ヶ月ぶりのマクロン大統領のスピーチでした。マクロン大統領が夜8時にスピーチをするために登場するということは、それなりに大きな決定の発表です。

 果たして、マクロン大統領の発表は、これまで、「あくまでも学校の閉鎖は最終手段」としてきたフランスにとって、苦渋の決断である4月3日からの学校閉鎖の発表でした。

 フランスでは、4月には、通常バカンスの混雑を避けるために、子供のバカンスは一週間ずつ、地域ごとに、ずらして設定されていますが(2週間)、そのバカンスの2週間を前後した1週間ずつをリモート授業に切り替えることで、約1ヶ月間、学校を閉鎖することを発表しました。

 子供が学校へ行かないことで、リモートワークに切り替えざるを得ない人口も見込まれています。リモートワークができない職種の人に関しては、子供を置き去りにできないために、その間の一時的な失業手当が支給されます。

 4月のイースターのバカンス時期に臨む前のタイミングということで、これに合わせて、これまで特に感染状態の深刻な19の地域で行われていた規制がフランス全土に渡ることになり、一定の種類の店舗の閉鎖に加えて、10㎞以上の移動禁止(特別な理由以外)の制限が敷かれ、地域を超える移動は、不可能になるため、イースターのバカンス中の国内旅行は、事実上、不可能になりました。

 また、この危機を乗り越えるために、現在すでに満床状態の集中治療室を1万床まで増加させる計画です。しかし、元来のフランスの集中治療室は5,000床のところ、現在はコロナウィルス以外の患者も含めて7,700床まで拡張されており、(そのうちコロナウィルスによる患者のために現在5,072床)、これをさらに2,300床拡大するのは、そのための人員確保も含めて、容易なことではありません。

 しかし、昨年の同時期の第1波の感染拡大に比べての、大きな違いは、なんと言っても、ワクチンがあることで、この現在、感染拡大のスピードに間に合っていないワクチン接種も3月末には、70歳以上、4月半ばには、60歳以上、5月半ばには、50歳以上、6月半ばには、全国民対象にワクチン接種が可能になると発表しました。

 とはいえ、「ロックダウンしない」「学校閉鎖はしない」というフランス政府の方針は、ガタガタと崩れ始めました。この方針を変更しなければならない、最終手段を取らなくてはならないのは、苦渋の決断であったに違いありません。

 しかし、今回の学校閉鎖の発表も、「これまで、フランスは、他のヨーロッパの多くの国が学校閉鎖をしても、フランスは閉鎖せずに、また、規制もロックダウンという厳しい形を取らずにできるだけ、自由な生活を続けてきました。しかし、今は、我慢しなければならない時なのです」とマクロン大統領は語っています。

 とはいえ、国民の側は、少しでも自由な生活を続けて来れたとは、おそらくちっとも、思っていないでしょう。むしろ、これまで少しでも自由を与え続けてきたと恩着せがましく言われる筋合いはなく、きっちりとロックダウンせずにズルズルと感染拡大が続き、感染拡大がどうしようもない状態になって、さらに厳しい制限下の生活を余儀なくさせられることに憤りを感じている人は少なくありません。

 また、ワクチン接種に関しても、実際には、現在は、ワクチンの到着を全国の開業医が予約だけ受け付けて待ち続けている状態で、政府の予定どおりにこれが進むとは、信じ難い状態なのです。

 そして、学校は閉鎖されるものの、相変わらず10㎞以内の移動には、制限はなく、学校の授業のない学生も、仕事をリモートに切り替えている大人も週末には、一日中、出かけ放題の状態が続くわけで、6人以上の集まりが禁じられているとはいえ、これが守られるとは、どうにも思えず、今の病院の満床状態が、具体的には、学校閉鎖だけで、充分に減少するものかどうかは、甚だ疑問です。

 また、約1ヶ月の予定の学校閉鎖ですが、1ヶ月後、病床占拠率、感染率がどの程度まで下がったら、再開するという目安もなく、現在の集中治療室の44%が65歳以下の年齢層で占められていることを考えれば、一ヶ月後には、まだ、その年齢層のワクチン接種は、5月の段階では、ほとんど行われていない状況で、その年齢層のワクチンの効果を期待することもできないのです。

 そして、今回のマクロン大統領の発表の中には、「5月の中旬から、文化施設やスポーツ、レジャー、イベント、カフェ、レストラン(テラス席から)の段階的な再開のカレンダーを作成する」という内容も含まれていました。

 しかし、今回の学校閉鎖による効果の不確実さに加えて、5月中旬からのあらゆる施設の再開というあまりに楽観的な発表は、ますます、現実味を感じられない腑に落ちないものでした。

 実際に学校での感染は深刻化はしているものの、最終手段としていた学校を閉鎖することで、感染がおさまりきるものでもなく、逆に学校を閉鎖する前に、例えば、学校は閉鎖せずにキャンティーン(学校の食堂)だけを閉めて、週末だけロックダウンするとか、まだ、別の方法があったのではないか?と思ってしまうのでした。

 ちなみにマクロン大統領のこの発表直後、来週からの長距離移動規制の前に逃げ出したい人が殺到し、いつもどおりにTGVなどの列車の予約は、急増しましたが、急増したのは、列車の予約だけではなく、1日の新規感染者数も59,038人と6万人に迫る勢いで急増・・。

 あまりの急増ぶりに絶句です。

  



<関連>

「学校閉鎖に踏み切る基準 フランスの年少者の感染増加」 

「コロナウィルス対策のためのフランスの学校閉鎖」

「ロックダウンの19地域では、クラスに一人でも感染者が出たら、学級閉鎖」

「フランスは完全に第3波の波に乗った」

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