フランスの学生、特に高校生にとっては、高校生活の最後に受験するバカロレア(高等学校修了認証のための国家試験)は、なかなかの大きなハードルで、このバカロレアの資格は、その後の進学先を始め、就職の際にも最低限?の資格として、一生ついてまわる重大な試験です。
バカロレアの試験は、教科数も多く、主要科目に関しては、一科目のテストに要する時間も3時間程度と長時間にわたるために、バカロレアの試験には、一週間もかかり、その準備も大変で、その間の集中力を保つのも、緊張状態の続く一週間だけでも、大変なことです。
フランスには、日本のような受験戦争はありませんが、娘の通っていた高校では、このバカロレアの長時間の試験に慣れるために、実際のバカロレアの試験の一年前ほどから、3時間テスト、4時間テストが定期的に行われ、バカロレアの試験に備えていました。
そんなバカロレアの試験がこのパンデミックの影響で、衛生対策から、昨年も中止され、日常の成績を参考にバカロレアの点数がつけられることになり、苦しい試験から解放された受験生からは、発表とともに、「試験なしにバカロレア取得!」と喜ぶ受験生のツイートがフランスのトレンドに急上昇したのも、まだ遠くない記憶に残っています。
そして今年も奇しくも、昨年と同じ時期にフランスでは、感染が再拡大し、3回目のロックダウンを迎え、2年連続でバカロレアの試験は、哲学や一部の口頭試験を除いて、中止されることになりました。
最後の最後まで、「学校は閉鎖しない」と、教育現場をかなりの重要な場として、死守し続けようとしていたフランス政府もコロナウィルスのために、ついに陥落、学校を閉鎖する(と言っても、通常のバカンス時期プラス2週間のリモート授業の導入ではありますが・・)ことになってしまいました。
ただでさえ、ここ数年、フランスの学生の学力低下は問題になっており、昨年末に発表されたTIMMS(Trends in International Mathematics and Science Study)の調査結果によれば、フランスの学生は、以前と比較しても、特に理数系(数学、理科)の科目のレベルが著しく低下していることがわかり、ヨーロッパ諸国の中でも最低ランクに位置しており、フランスの教育関係者に衝撃を与えていました。
そこへ来て、このパンデミックによる不安定な教育現場と昨年の約2ヶ月にわたる学校閉鎖(1回目のロックダウン)と今回の学校閉鎖。
そのうえ、バカロレアが2年連続中止されるという現実は、フランスの学力低下問題に拍車をかけそうです。
日常からの勉強はもちろんのことですが、やる気のある子供は、どんな状況においてもきっちりと積み重ねて勉強をしていきますが、そうではない場合は、試験があるから集中的に勉強するという機会が失われる上にさらに、学校閉鎖というダブルチョップ。
このパンデミックは、間違いなく歴史上に残る大惨劇であり、コロナウィルスによる影響で、思い描いていた教育が受けられなかったり、就職の場が奪われてしまったりする人は、数え切れず、後世に渡り、「あの時は、・・」と語り継がれる出来事であると思いますが、日本で今もことあるごとに言われる「バブル世代」とか、「ゆとり世代」とかいう言葉のように、フランスでは、のちのち、この試験なしのバカロレアを通過した世代を「コロナ世代」「あ〜試験なしにバック(バカロレアのことをフランスではバックと呼びます)を取れた世代ね・・」などと言われるような気がしています。
例年であれば、フランスでは、ほぼ、全ての高校生が受験するバカロレアという国家試験。
一生ついて回るだけでなく、その点数によっては、(トレビアン、ビアン、アッセビアン(秀・優・良)と成績が表示される)思わぬ特典があったりもします。
例えば、トレビアン(秀)を取った学生には、その年に銀行口座を新しく開く場合にボーナスとして、250ユーロもらえるという、一種の青田買いのようなサービスを提供している銀行もあったりして、広く活用されています。
一部の学生を除いて、受験らしい受験のないフランスで、唯一、集中的に勉強する機会であるバカロレア、来年は、復活できますように・・。
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「学校選びは人生の岐路 娘の通ったフランスの学校はなかなか厳しい学校だった」
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