2021年4月29日木曜日

モンペリエ近くの高齢者施設でクラスター ワクチンは完全無欠ではない

   


 もはや、フランスでの唯一の救いと思われるワクチン接種は、接種の権利を得られる範囲をどんどん拡大してはいるものの、現在のところ、フランスのワクチン接種状況は、1回でもワクチンを接種した人は、まだ20%程度、5人に一人の割合と、まだまだ、感染拡大を止めるには、ほど遠い状態です。

 ワクチンが思うように届かないという問題もありますが、保存方法の問題から、一番、色々な場所での接種が可能なアストラゼネカワクチンを拒否する一定の割合の人が存在し、せっかく届いているワクチンを開封してから、接種しきれずに廃棄せざるを得ないことを嘆く医者がその現状をSNSで公開して訴えたりしています。

 かと思えば、少しでも早くワクチンを受けたい人が廃棄するぐらいだったら、ワクチンを接種してほしいと、予約なしでも行列を作っていたり、どうにも、まんべんなく、ワクチンを供給することができていないようです。

 マクロン大統領は、思い余って、24時間、年中無休でワクチンを!などとまで、口をすべらしていますが、もともと、効率よく、急いでさっさと事を進めるのが苦手なフランスです。この状況においても、フランスは、急速に事を進めることができません。

 そんな中、唯一の希望であるはずのワクチン接種に危うい状況が浮上してきました。

 85%の居住者がワクチン接種を済ませている状況のモンペリエ(フランス南部・オクシタニー地域圏)近くの高齢者施設 エパッド(Ehpad)で、19人(居住者11人、職員8人)のクラスターが発生したことが報告されています。

 感染者19人のうち14人はワクチン接種済みの人で、ワクチンが完全無欠のものではないことが明らかになった事例となってしまいました。

 ここ数ヶ月の間に、最優先とされていた高齢者のワクチン接種拡大の効果により、高齢者の感染が劇的に減少したことから、ワクチンの効果が期待され、高齢者施設内でも、厳しく敷かれていた面会や、衛生管理の制限を少しずつ緩和していく動きが始まった矢先のクラスター発生にショックは大きく、この高齢者施設では、再びロックダウン状態に逆戻りを余儀なくされています。

 しかし、唯一の救いは、ワクチン接種を受けている人は、症状が出ても、比較的、症状が緩やかで現在のところ重症化はしていないということです。

 とはいえ、フランス領ギアナでは、ワクチン接種済み(ファイザー)の2名が感染、重症化して死亡したという事例もあり、ワクチンのタイミングや間隔などにも問題があったのではないかと調査が続いています。

 3回目のロックダウンにより、若干、感染減少の兆しが見えてきたフランスですが、未だ1日の新規感染者数は、3万人超え、毎日、コンスタントに300人以上の死者がで続けている状態です。

 今は、盛んにこれからのロックダウン解除の日程や、どのように、どこから解除していくかばかりが話題になっていますが、今週から学校も再開し、これ以上に制限を解除して、ワクチンでも完全に防ぎきれないとなれば、まことに不安材料ばかりです。

 また、オリヴィエ・ヴェラン保健相は、ここ1〜2週間で、パリ近郊3県での南アフリカ変異種が6%から10%に上昇してきていることを発表しています。

 この高齢者施設のクラスターの発生から、ワクチンをしても、当分、マスクなしの生活には、戻れそうもないことを思い知らされたのでした。


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