2021年4月19日月曜日

母親による8歳の少女の誘拐事件


Le procureur de la République d'Epinal Nicolas Heitz tient un portrait de Mia, une fillette de 8 ans enlevée  dans les Vosges, lors d'une conférence de presse le 14 avril 2021 à Epinal
母親に誘拐された少女 どこか小さい頃の娘に似ているのでドッキリ・・

   


 13日(火)フランス北東部のヴォージュで8歳の少女が3人の男に連れ去られる誘拐事件が発生したというニュースがフランス中を駆け巡りました。また、恐ろしい事件が起こってしまった・・と思っていましたが、報道ではすぐに、誘拐された少女の写真とともに、彼女との単独での面会を禁止されているという母親の写真を併せて報道していましたので、恐らくこの誘拐は、その少女の母親であると見られていることは、わかっていました。

 数日後には、この誘拐を手伝ったとされる5人の男性がイル・ド・フランスで逮捕され、すぐに事件は解決するものと思われていましたが、事件発生後5日が経過して、ようやく、その母娘がスイスで見つかりました。

 少女は健康な状態で、保護され、母親は逮捕されました。

 この母親は、子供を学校に行かせないように仕向けるなどの問題を指摘され、ASE(児童福祉)から子供を養育する権利を剥奪され、子供は、祖母に育てられていました。この児童福祉の措置を不満に思っていた母親が子供を取り戻そうと、今回の誘拐を計画、実行したという、ちょっと単なる誘拐事件とは、異なる事件でした。

 この子供の誘拐計画は、母親(28歳)が仲介者を介して募集した5人の男性とともに綿密に練られたもので、このASE(児童福祉)に反抗、抗議するというある種の使命感によって、連帯して集まったグループで行われたもので、先にイル・ド・フランスで逮捕された男の一人は、「私は、これまでの人生で、一番良いことをしたと思っている。」などと話していたことがわかっています。

 この誘拐計画は、彼らの中で、軍事作戦のように「リマ作戦」と名付けられ、犯行には3,000ユーロの資金が用意され、車の手配から、犯行に必要なトランシーバーや携帯電話、変装に使うためのヘアピースなどの細かいものまでもが揃えられ、子供を誘拐して、スイスに逃亡させるシナリオが綿密に練られ、シナリオに沿った職務が分担されていました。

 13日、祖母の家にいた8歳の少女を連れ出した3人の男と、母親と少女を会わせて、スイスに逃亡させた男、国境を渡ったのは、母娘ともに徒歩で渡ったとされていますが、その後、スイスでの逃亡先の手配をする者、スイスのホテルまでの輸送など、誘拐に関わったのは、5人だけではないと見られています。

 この誘拐事件の計画はSNSによって招集されたグループではありますが、「サバイバリスト運動」と呼ばれる活動に賛同している人々で、子供の養育権をASE(児童福祉)から剥奪された母親を助けるという使命感に基づいているだけに、複雑な問題でもあります。

 一方では、これは、国家権力に対する一種のテロ行為であると言う人もいます。

 しかし、この誘拐事件の捜索には、200人以上の憲兵隊が動員された大事件に発展し、子供の母親が子供を取り戻して、そのまま娘と生活することが可能だと考えていたのかと思うと疑問が残ります。

 この母親が娘の養育権を剥奪された細かい事情や本当のところは不明なのですが、母親を失い、祖母に育てられ、そして、その母親により誘拐されるという体験は、8歳の子供を深く傷つけてしまったに違いありません。

 この少女の父親が、この母親について証言したりしているので、父親がいないというわけでもないにも関わらず、母親と引き離されたこの少女を育てているのが祖母であるということからも、まだ8年しか生きていない少女の境遇の複雑さが感じられます。

 以前、娘の学校の送り迎えの際に、娘の学校はとても厳しくて、迎えに行く人をあらかじめ、学校側に届け出をしなければならなくて、「たとえ、親であっても、送り迎えと指定された人でなければ、子供を渡すことはできない」と言われており、「親なのにダメなの?」と驚いたことがありました。

 フランスは、離婚して、夫婦が別居していることも多く、親権をめぐって、「送り迎えの際に子供を誘拐」なる事件も起こるため・・と説明されていて、今回のケースは、また別ではありますが、そんな話をこの事件を通じて、思い出したのでした。

 また、知り合いの日本人の男性が、(妻は、フランス人)妻の病気を理由にASE(児童福祉)から目をつけられて、子供を児童福祉機関に取りあげられそうになり、(彼自身は、育児も積極的に行う極めてまともな人)あまりに執拗な彼らの攻撃に、弁護士に相談し、挙句の果てに治外法権である日本へ子供を連れて逃げ帰ったという話を聞いたりしていたので、この絶体的な権力を持ったASEという機関が、必ずしも正当に機動している場合ばかりではない実例を身近にしてしまったために、懐疑的な気持ちも私の中にはあるのです。

 いずれにしても、この渦中にいる8歳の少女がどれだけ辛い想いをして、傷ついているかと思うと、やるせない思いになります。


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